石器時代・銅器時代・青銅器時代

コンラート シュピンドラー著
文藝春秋 (1994/5/1)
 

 
 
エッツイが純度99.7%の純銅の斧をもっていたことには衝撃を受けました。
銅の融点は1085度とかなりの高温で、銅鉱石や孔雀石を溶かし、土器などの鋳型に流し込む必要があります。
エッツイの髪の毛は高濃度の砒素で汚染されており、エッツイは銅の冶金に関わっていたという説があります。
 
 
また、エッツイはフリントのナイフを持っていました。
1994年のハリウッド映画『フリントストーン/モダン石器時代 』で使われているように、フリントは固く、石器、しかも火打石として使われました。
 

 
 
最初に提案された「石器時代」「青銅器時代」「鉄器時代」の3時代区分の石器時代と青銅器時代の間に来るのが「銅器時代」です。エッツイは、まさに石器のナイフと銅器のオノをもっていたわけです。
 
 
エッツイの背中の入れ墨はしばしば英語圏で「最初の鍼の証拠」と言われますが、当時は鉄はありません。「最初の灸の証拠」ではないでしょうか。
 
ユーラシアのモンゴル医学やチベット伝統医学では、熱く熱した金の棒をツボに押し当てる「金灸」があります。
馬には焼烙(しょうらく)という熱した鉄棒を押し当てる治療が、競走馬にされています。
 
 
传统金灸术治疗骨骼疾病的研究
霍道尔加拉
中国民族医药杂志. 2011,17(03)
 
 
以下は、わたしが先祖代々、中国伝統医学の医師である邵輝先生に教わった灸の定義です。
 
灸とは、ツボから生薬の気をしみこませることです。
燻製の「燻」みたいな意味です。
肉の燻製は、煙を肉にしみ込ませて保存食にします。
文化は辺境に残ります。
モンゴルやチベットでは金灸で熱した金のエネルギーをツボからしみ込ませます。
日本では、紅灸や水灸は、生薬をツボに塗ることでツボから生薬のエネルギーをしみこませます。
これが本来の「灸」の意味です。
古代中国人は「モグサをツボの上で燃やすのが灸」とは思っていません。
現代では失われてしまった「灸」の漢字の本来の意味は、日本やチベット、モンゴルに残っています。
 
 
アイスマン、エッツイは火打石の黄鉄鉱と炭と金属のオノをもっていました。
もし、ツボを使っていたとしたら、熱した金属をツボに押し当てるという治療法が推測できます。
 
 
【青銅器時代】
銅とスズの合金が青銅です。スズの融点は231℃と低いです。
紀元前3000年のメソポタミア文明のシュメールで、人類初の合金である青銅が発明されました。
中国では、殷の甲骨文字は青銅器に刻まれました。また、秦の戦士たちは青銅の剣を使っていました。
 
 
【鉄器時代】
人類の歴史で、鉄の発明は証拠から、ただ一度だけヒッタイトが行ったと信じられています。
鉄の融点は1538℃と非常に高く、最初は宇宙からの隕石である隕鉄が用いられ、次に炉内で鉄を加工できるようになり、鉄鉱石が利用されるようになりました。
中国では、殷から周の春秋時代までは青銅器時代であり、戦国時代に製鉄ができるようになりました。
 
鉄器時代の漢代の河北省、満城漢墓の遺跡から金鍼が出土しています。金は古代エジプトからツタンカーメン・マスクのように装飾品として加工され、中国の三星堆遺跡からも黄金マスクが出土しています。
 
金や銀は加工がしやすく、装飾品としての歴史は古いですが、古代ではどのような人が、どのように加工していたかが気になります。少なくとも、エッツイは銅のオノはもっていましたが、金銀の鍼とはあまり関係がないという印象があります。
 
 
 

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