陰陽家、鄒衍と五行説

 
 
中国、戦国時代の諸子百家のひとり、陰陽家の鄒衍(すうえん)は、日本の教科書的には「陰陽五行説を創った人」みたいに書かれていますが、これには昔から違和感がありました。
 
正確には、「五徳終始説と大九州説を創ったのは鄒衍と信じられている(伝聞)」というのが普通の学説だと思います。
 
 
鄒衍が書いたものは残っていません。
五徳終始説は、最初の黄帝が土徳、次の禹にはじまる夏王朝は青を好み木徳、殷王朝の湯王は白色を好み金徳、周王朝の文王は赤色を好み火徳という思想で、土→木→金→火と王朝が入れ替わるという学説です。
紀元前239年に書かれた『呂氏春秋』に書かれています。
 
 
《呂氏春秋》應同
黃帝之時,天先見大螾大螻,黃帝曰「土氣勝」,土氣勝,故其色尚黃,其事則土。
及禹之時,天先見草木秋冬不殺,禹曰「木氣勝」,木氣勝,故其色尚青,其事則木。
及湯之時,天先見金刃生於水,湯曰「金氣勝」,金氣勝,故其色尚白,其事則金。及文王之時,天先見火,赤烏銜丹書集於周社,文王曰「火氣勝」,火氣勝,故其色尚赤,其事則火。
代火者必將水,天且先見水氣勝,水氣勝,故其色尚黑,其事則水。水氣至而不知,數備,將徙于土。
 
 
 
五行学説は、『書経』洪範に最初に書かれています。
 
 
《尚書》 洪範
一、五行:一曰水,二曰火,三曰木,四曰金,五曰土。水曰潤下,火曰炎上,木曰曲直,金曰從革,土爰稼穡。潤下作鹹,炎上作苦,曲直作酸,從革作辛,稼穡作甘。
 
 
 
四書五経の一つ、『礼記』にも書かれています。
 
 
《禮記》月令
孟春之月,日在營室,昏參中,旦尾中。
其日甲乙。
其音角,・・・
其味酸,
其臭膻・・・祭先脾。
東風解凍,蟄蟲始振,魚上冰,獺祭魚,鴻雁來。
孟夏之月,日在畢,昏翼中,旦婺女中。
其日丙丁。
其帝炎帝,・・・
其音徵,・・・
其味苦,
其臭焦・・・祭先肺。
孟秋之月,日在翼,昏建星中,旦畢中。
其日庚辛。
其音商,
其味辛,
其臭腥。祭先肝。
孟冬之月,日在尾,昏危中,旦七星中。
其日壬癸。
其音羽,
其味咸,
其臭朽。祭先腎。
 
 
 
漢代の董仲舒(とうちゅうじょ)の『春秋繁露』で、以下のようになります。
 
 
《春秋繁露》五行之義
天有五行:一曰木,二曰火,三曰土,四曰金,五曰水。
木,五行之始也;水,五行之終也;土,五行之中也。
此其天次之序也。木生火,火生土,土生金,金生水,水生木,此其父子也。
 
 
 
五行学説も一度、出土文献から再検討すべきだと思います。
 
 
 

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