魏晋南北朝と五胡十六国:漢字の魔力「言語はウイルス」

 
 
川本 芳昭
‎講談社 (2020/12/11)
 

 
 
これも名著です。
五胡十六国、魏晋南北朝こそが中国文化理解のポイントだと感じました。
「胡」と呼ばれる非漢民族たちは武力で上回り、支配者となり、四書五経に通じた教養人となり、北朝最後の王朝である「北周」は、古代の孔子が理想化した「周」の政治制度を採用し、それによって弱体化して滅びます。
 
非漢民族である胡の北朝は、漢民族である南朝を「儒教の礼から外れた蛮族」と呼び始め、鮮卑である皇帝は「朕は夷では無い」と主張して、異民族を「夷」と呼び始めます。
 
五胡十六国のスタート時は異民族だった胡は、漢民族に差別されながら中華意識に取り憑かれていきます。
 
匈奴、鮮卑、羯(けつ)、氐(てい)、姜(きょう)が五胡ですが、朝鮮半島には高句麗や百済、新羅などの東夷が存在し、さらに東海には倭という異民族が存在しました。
これらの東夷の全てが中華意識を持ち、倭は東の夷を討つための征夷大将軍という職までつくります。
 
 
南北朝の北朝を統一した北魏は鮮卑拓跋氏であり、拓跋とは黄帝の子孫であるという意味ですが、北魏の孝文帝は漢化政策を推し進めて、「北魏は黄帝の土徳を持つ」と言う先祖伝来の信念を捨てて、「中国の西晋の五行の金徳を継ぐ水徳の王朝である」と主張し始めました。
 
 
ウィリアム・バロウズは「言語はウイルス(ミーム)であり、我々の脳に取り憑いた」と述べています。
まさに漢字と漢語、中華思想、華夷思想はウイルスであり、中国を支配したはずの異民族のアタマの中に取り憑き、「中国化」させてしまったのです。これは歴史の皮肉です。
 
 

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