心臓内伏鍼による心膜炎

 
 
2021年12月1日『アメリカ循環器学会雑誌』
「頸静脈経由で抽出した鍼灸鍼による二次性心膜炎」
Pericarditis Secondary to an Acupuncture Needle Extracted Via a Transjugular Approach
Case Report: Clinical Case
Wassim Bedrouni
JACC Journals Vol. 3 No. 17
 
 
カナダ、ケベック州、マギル大学医学部の症例報告です。
 
24歳の男性が胸膜炎の胸痛を訴えて救急外来を受診し、横臥すると悪化しました。
血圧は125/86 mm Hg、脈拍は90拍/分。
心電図は右脚ブロックです。
心エコーは心嚢液貯留を示しています。
 
イブプロフェンを与えて帰宅させたところ、胸痛、嘔吐、呼吸困難で12時間後に再受診しました。
血圧101/75 mm Hg、脈拍は122拍/分です。
頸静脈拡張があります。頸静脈拡張は右心不全や心タンポナーデの可能性があります。心電図ではPR低下とST波上昇があります。心エコーではさらに心嚢液が貯留しています。
 
CTで右心室に突き出ている2本の金属片がみつかりました。
患者に問診すると、3か月前に韓国で慢性消化不良の治療で、前胸部と上腹部に鍼治療を受けたことが判明しました。
 
経頸静脈から鍼を回収し、9ミリメートルと7ミリメートルの金属片が回収されました(リンク先に写真あり)。
 
 
日本でも、以下の症例が報告されています。
 
 
1994年「症例 鍼灸針による右室心内伏針に合併した心タンポナーデの1症例」
片岡 一, 宮本 伸二, 重光 修, 森 義顕, 葉玉 哲生
『心臓』1994 年 26 巻 12 号 p. 1261-1266
 
 
著者らは、鍼灸針による心内伏針に合併した外傷性心タンポナーデの症例を経験した。
症例は69歳、女性で、胸痛と血圧低下にて入院.収縮期血圧90~80mmHgで10mmHgの奇脈を呈し、心エコーにて中等量の心膜液,右室の拡張早期虚脱が見られた.穿刺にて約200mlの血液成分を排液の後,症状は軽減.X線写真にて,頸部,腰部を中心に多数の鍼灸針留置の所見を認め,一部,肺野,心陰影に及んだ.心内伏針の検出に,経胸-経食道エコー法は不成功に終わったが,造影CTは,右室を穿通して横隔膜へ刺入した針を明瞭に検出しえた.他に,肺動脈内に3本,肝臓,腎臓,膵臓にも迷入した針を数本認めた.1週間後,体外循環を使用することなく心拍動下に抜針した.心内伏針の原因が治療目的に体内に留置された鍼灸針であった,との指摘はまれで,本邦第2例目にあたり,また心タンポナーデを合併したとの報告も極めて少ない.針の進入経路としては経静脈路が考えられ,その存在診断には,造影CTが有用であった。
 
 
 

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