『頭痛の診療ガイドライン2021年』

 
 
以下、引用。
 
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とした新規薬剤の片頭痛予防薬としての相次ぐ承認、2018年の「国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)」の発表等、頭痛診療における重要な変化を反映する形で、8年ぶりの改訂となった「頭痛の診療ガイドライン 2021」1)が10月に刊行された。
 
荒木氏は「CGRP関連薬剤の慢性片頭痛への有効性が明らかになり、この診断はとても重要」と話す。
 
また、薬物の使用過多による頭痛(MOH)との鑑別において、今版では慢性片頭痛と両方の診断基準を満たす場合は両方の診断名を与えることが可能とされた。MOHについては、旧版では薬物乱用頭痛とされていたが、今版では訳語が変更され、そのサブタイプや診断時の基準となる服薬日数などが一部変更されている。
 
今回の改訂において、片頭痛の急性期治療におけるトリプタンとNSAIDsを文献から比較・分析した結果、トリプタンで有意に投与2時間後の頭痛消失率が高く、24時間以内の再発率が低いことが示された。
 
片頭痛予防薬:CGRP関連薬剤を強く推奨、開始1週間で効果がみられるケースも
 
2021年、本邦では抗CGRP抗体ガルカネズマブ、フレマネズマブ、および抗CGRP受容体抗体エレヌマブが片頭痛予防薬として相次いで承認された。
本ガイドラインでも予防薬としてGroup 1(有効)に位置付けられ(CQII-3-2)、強い推奨/エビデンスの確実性Aとされている(CQII-3-14)。
 
「月に一度の投与で、1週間ほどで改善がみられる患者さんが多い。片頭痛治療においてはトリプタン登場以来のインパクトといえるのではないか」と荒木氏。
 
「また、ニューロモデュレーションについても新たにCQが設けられ、弱い推奨/エビデンスの確実性Aとされた(CQII-3-18)。
 
荒木氏は「日本では治験も行われていない状況だが、海外ではエビデンスが蓄積してきており、電気刺激療法についても将来の治療法の選択肢の1つといえるだろう」と期待感を示した。
 
 
 
2013年の「慢性頭痛ガイドライン」で鍼は推奨度C1でした。ニューロモデュレーション、電気刺激療法についても、どのような評価となるかは気にはなります。
 
 
2009年コクランレビュー「緊張型頭痛の鍼」では「著者は鍼が頻繁な慢性の緊張型頭痛に対して非薬理的手段として価値があると結論している」と述べていました。
 
2009年コクランレビュー「片頭痛予防のための鍼」では「少なくとも鍼は薬物による予防よりも効果があり、副作用はほとんど無い」と結論されています。
 
2016年コクランレビュー「緊張型頭痛の予防における鍼治療」では「鍼は慢性緊張型頭痛の治療に効果があることが示唆された」とされています。
 
2016年コクランレビュー「鍼による反復性片頭痛の予防」では「利用可能なエビデンスは、付加的な鍼治療が頭痛の頻度を減らすことを示唆している」と述べています。
 
 
2021年の日本の『頭痛の診療ガイドライン2021』は5-HT1F受容体作動薬のダイタンやCGRP拮抗薬であるウブロゲパント、リメゲパントが推奨されています。これらは改めてランダム化比較試験などを調べていきたいと思います。
 

 
 
2021年4月に日本政府が承認したイーライ・リリーの片頭痛治療薬、ガルカネズマブ(商品名エムガルティ)は173億円の売上が見込まれています。CGRPに付着して血管の拡張をおさえるという機序です。
 
 
2021年6月に日本政府が承認した片頭痛治療薬、フレマネズマブ(商品名アジョビ)は137億円の売上が見込まれています。
 
2021年6月に日本政府が承認したアムジェン製薬の片頭痛治療薬、エレマヌブは153億円の売上が見込まれています。
 
そして、2021年10月18日に『頭痛の診療ガイドライン2021』が出版されるという、素晴らしいタイミングには、まるで製薬会社と著者である日本神経学会、日本頭痛学会、日本神経治療学会が連携プレイをしているかのようにシロウト目には見えてしまいますが、もちろんただの偶然です。
 
個人的には、1990年代にグラクソスミスクラインが開発したスマトリプタン(商品名イミグラン)などのトリプタン製剤の頃の報道を思い出します。
 
1991年に最初のトリプタン製剤がオランダで発売されたときは『ニューズウィーク日本版』などで「片頭痛を治療できる夢の薬」として紹介され、1993年にアメリカFDAが認可し、日本では2000年に皮下注射、2001年に経口剤が認可されました。
 
その前後に、日本中にそれまでなかった頭痛外来がたくさん出来たのを覚えています。トリプタンが「片頭痛を治療できる夢の薬」であったのかという問題にすでに答えは出ています。片頭痛の患者さんに聞いたら答えを教えてくれると思います。
 
1991年にゴードン・ガイアットがエビデンス・ベースド・メディスンを提唱し、ランダム化比較試験(RCT)による証拠採用という新しいパラダイムが採用され、1992年にイギリスでコクラン共同計画が立ち上げられ『臨床ガイドライン』が次々と作成され、その影響が日本にようやく入ってきたころ、わたしは医学を学び始めました。1995年にウィンドウズ95が発売され、インターネットが急速に発達しはじめた頃の話です。
 
トリプタン製剤が発売された1991年はEBМ革命がはじまった年でもあり、それから30年がたって、今となっては「西洋医学も東洋医学も本当に進歩したのか」という苦い思いしかありません。これも患者さんに聞いたら答えは明白だと思います。
 
 

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