パーキンソン病の中西医結合ガイドライン

 
2022年1月11日
「神経ガイドライン:バーキンソン病の『すくみ足歩行』の中西医結合診療の専門家の共通認識(2021年)」
神经指南:帕金森病冻结步态中西医诊治专家共识(2021)
 
 
3.2.1.1 肝肾不足型
推荐治法:补益肝肾,熄风通络。
(1)基本方药:大定风珠合地黄饮子;
(2)对症加减:“开”或者“关”期下肢震颤配以全蝎、蜈蚣、僵蚕等虫类药物熄风止痉、解毒通络;
(3)针灸治疗。
①体针:三阴交、复溜、太溪、肝俞、肾俞;
②耳针:皮质下、交感、心、肝、肾;
③艾灸:三阴交、气海、关元、肝俞、肾俞。
3.2.1.2 气血亏虚型
推荐治法:益气扶正,养血熄风。
(1)基本方药:归脾汤合天麻钩藤饮;
(2)对症加减:开步困难重用党参、黄芪、川芎、路路通以补充元气以通络,拖步曳行配以熟地、丹参、黄精、伸筋草、木瓜;
(3)针灸治疗。
①体针:足三里、血海、三阴交、肝俞、肾俞;
②耳针:皮质下、交感、胃、肝、肾;
③艾灸:足三里、血海、三阴交、肝俞、肾俞。
3.2.1.3 痰瘀阻络型
推荐治法:豁痰祛瘀,调护脾胃。
(1)基本方药:温胆汤合人参养荣汤;
(2)对症加减:行走拖曳伴有情志不舒或便秘加用小陷胸汤豁痰开窍,开步完全冻结甚至完全运动不能可重用黄芪补气,并予陈皮、佛手以防滋腻碍胃,同时加用全蝎、蜈蚣打粉冲服加强搜风剔络之功效;
(3)针灸治疗。
①体针:百汇、四神聪、凤池、丰隆、中脘、阴陵泉、阳陵泉;
②耳针:皮质下、交感、胃、心、脾、三焦;
③艾灸:中脘、阴陵泉、阳陵泉、肝俞、肾俞。
 
 
 
個人的には、頭皮鍼などが含まれていないのが疑問です。
パーキンソン病の鍼灸治療には、非常に論点が多いと思います。論点整理が必要と思われます。
 
 
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2020年8月25日広州中医薬大学
「パーキンソン病の鍼治療の効果:システマティックレビューの概要」
Effectiveness of Acupuncture in the Treatment of Parkinson’s Disease: An Overview of Systematic Reviews
Jinke Huang,et al.
Front Neurol. 2020; 11: 917.
Published online 2020 Aug 25.
 
 
以下、引用。
 
鍼治療は、パーキンソン病やアルツハイマー病のような神経変性疾患において神経保護的であることが示されている。
 
鍼治療は、脳由来の神経栄養因子(NTFs )、およびグリア細胞由来神経栄養因子を含む脳の神経栄養因子の発現を活性化および増加させることにより、その治療効果を発揮する。
 
鍼治療は神経栄養因子の増殖と分化を刺激し、それが次に成人の神経新生を活性化、および促進する可能性がある。
 
従って、鍼治療の治療効果について考えられる神経生理学的メカニズムの1つは、脳の可塑性を調節することである。
 
パーキンソン病の治療における鍼治療の作用機序は広く研究されており、PDの治療効果の考えられるメカニズムは次のとおりである。
 
(a)ニューロンの生存。さらなるメカニズム研究により、黒質領域におけるAKtシグナル経路、および脳由来神経栄養因子の生存経路の活性化を介した鍼治療の神経保護効果が確認されている。
 
 
 
2019年
「パーキンソン病げっ歯類モデルのドーパミン・ニューロンを鍼が保護するのか。システマティックレビューとメタアナリシス」
Does Acupuncture Protect Dopamine Neurons in Parkinson’s Disease Rodent Model?: A Systematic Review and Meta-Analysis
Jade Heejae Ko,et al.
Front Aging Neurosci. 2019; 11: 102.
Published online 2019 May 8.
 
例えば、鍼治療は脳由来神経栄養因子(BDNF)レベルを増加させ、続いてTrkB関連細胞増殖カスケードを活性化することが見出された。
 
 
 
『中医雑誌』2015年12月号掲載
「パーキンソン病の鍼:臨床実験と動物実験とfMRI研究のレビュー」
Acupuncture for Parkinson’s Disease: a review of clinical, animal, and functional Magnetic Resonance Imaging studies
Xiao Danqing
Journal of Traditional Chinese Medicine(中医雑誌)
Volume 35, Issue 6, December 2015, Pages 709–717
 
 
これは、中医学の有名な雑誌『中医雑誌』のパーキンソン病の鍼治療に関する総説論文となっています。著者はfMRI研究者のようです。
 
 
【EBM臨床研究】
 
EBM臨床研究において、パーキンソン病の鍼治療のシステマティック・レビューは多数あります。
 
2008年にはエッアート・エルンストらが「パーキンソン病における鍼の効果:システマティックレビュー」(※1)において、研究の質の低さを指摘しています。
 
2012年には浜松医科大学の浅川哲也が「パーキンソン病の鍼治療」(※2)において、やはり研究の質の低さを指摘しています。
 
2013年には韓国の釜山大学の「パーキンソン病の頭皮針治療:システマティックレビューとランダム化比較試験」(※3)で、焦氏頭皮針によるパーキンソン病治療について証拠が不十分であるとしています。
 
2014年には韓国の建国大学校の「パーキンソン病の鍼治療は効果があるのか」(※4)という論文において、鍼治療の効果について否定的見解を述べています。
 
2015年には中国の武漢の華中科技大学の「パーキンソン病の付加的な治療としての中国伝統医学:システマティックレビューとメタ・アナリシス」(※5)では、「マドパー(レボドパ)と組み合わせた治療で、鍼はパーキンソン病患者におけるUPDRS(パーキンソン病統一スケール)のスコアを改善した」という結果が出ています。
 
《パーキンソン病動物モデルにおける鍼の神経保護の役割とそのメカニズム》
Neuroprotective Role of Acupuncture in Animal Models of PD and its Underlying Mechanisms
 
この分野では、2010年代の韓国、慶熙大学校、鍼灸経絡研究センターのキム・ソンナム先生によるパーキンソン病モデル・マウスの研究が画期的でした(※6.※7)。
 
「鍼はドーパミンの放出を増やさなかったが、シナプス間隙におけるドーパミン取り込みを強化した」「鍼はシナプス後、ドーパミン・ニューロトランスミッションを増加させ、大脳基底核の活動を正常化させた」というものです。
 
この韓国の研究を元にして、この論文ではパーキンソン病の鍼わの基礎研究を3つのレイヤーに分けています。
 
 
【レイヤー1:鍼による大脳基底核のシナプス前とシナプス後の調整は運動パフォーマンスを強化する】
 
電気鍼により、シナプスでのドーパミン取り込みとドーパミン・トランスポーターの発現がウエスタンブロッティング法で証明された。
 
 
【レイヤー2:パーキンソン病モデルにおける鍼の神経保護役割の分子・細胞メカニズム】
 
第一に100Hz電気鍼はBDNF(脳由来神経栄養因子)のRNAとGDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)のRNAの発現を増加させた。
 
第二に電気鍼はアポトーシスが引き金になった細胞死を減少させる。
 
第三に鍼はパーキンソン病モデルの炎症プロセスを減少させる。
最後に鍼は活性酸素ストレスを減少させる。
 
 
【レイヤー3:視床コネクティビティの観点からの鍼の効果のネットワークメカニズムのイメージング研究】
 
fMRIの観察によれば、パーキンソン病患者が鍼を受けている間、視床核は活性化されます。これが鍼による震戦などの運動機能の改善と、睡眠やうつ症状の改善を説明できる可能性があります。
 
この論文は、動物を使った基礎研究とfMRIを使った観察を組み合わせて、鍼によるパーキンソン病治療の基礎研究の全体像を描き出しています。
 
 
 
※1:「パーキンソン病における鍼の効果:システマティックレビュー」
Effectiveness of acupuncture for Parkinson’s disease: a systematic review.
Lee MS, Shin BC, Kong JC, Ernst E.
Mov Disord. 2008 Aug 15;23(11):1505-15. doi: 10.1002/mds.21993.
 
 
※2:「パーキンソン病の鍼治療」
Acupuncture Treatment for Parkinson’s Disease
Tetsuya Asakawa, Ying Xia
Current Research in Acupuncture 2013, pp 215-253
 
 
※3:「パーキンソン病の頭皮針治療:システマティックレビューとランダム化比較試験」
Scalp acupuncture for Parkinson’s disease: a systematic review of randomized controlled trials.
Lee HS, Park HL, Lee SJ, Shin BC, Choi JY, Lee MS.
Chin J Integr Med. 2013 Apr;19(4):297-306. doi: 10.1007/s11655-013-1431-9. Epub 2013 Apr 2.
 
 
※4:「パーキンソン病の鍼治療は効果があるの?」
Is acupuncture efficacious therapy in Parkinson’s disease?
Kim HJ, Jeon BS.
J Neurol Sci. 2014 Jun 15;341(1-2):1-7. doi: 10.1016/j.jns.2014.04.016. Epub 2014 Apr 24.
 
 
※5:「パーキンソン病の付加的な治療としての中国伝統医学:システマティックレビューとメタ・アナリシス」
Effectiveness of traditional Chinese medicine as an adjunct therapy for Parkinson’s disease: a systematic review and meta-analysis.
Zhang G,et al.
PLoS One. 2015 Mar 10;10(3):e0118498. doi: 10.1371/journal.pone.0118498. eCollection 2015.
 
 
※6:
Acupuncture Enhances the Synaptic Dopamine Availability to Improve Motor Function in a Mouse Model of Parkinson’s Disease
Kim SN, et al.
PLoS One. 2011.
 
 
※7:
Combined treatment with acupuncture reduces effective dose and alleviates adverse effect of l-dopa by normalizing Parkinson’s disease-induced neurochemical imbalance
Brain Res. 2014 Jan 28; 1544:
 
 
 

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