西洋医師と韓医師の職域争い

 
 
2022年1月20日 韓国の日刊新聞『朝鮮日報』
最高裁の判断「医師によるIМSも韓医学(IMS)の施術は韓医師資格なしにすれば違法」
 
 
 
この数年、韓医師と西洋医学の医師は、職域争いで法廷闘争中です。
 
2011年に韓国の西洋医学の医師が、腰痛の患者に西洋医学のドライニードリンク鍼であるイントラ・マスキュラー・スティミュレーション(IMS)の施術を行ったことを韓医学協会が訴え、10年間で何度も無罪と有罪の逆転判決が出て(6回!)、また、最高裁が逆転判決を下して、差戻になるそうです。ややこし過ぎて、経緯を説明できません。
 
 
論点を整理します。
 
イントラ・マスキュラー・スティミュレーション(IMS)という技術は、カナダの医師、チャン・ガン先生が1970年代に開発しました。1989年に最初の本が出版され、日本語にも訳され、わたしも1995年に読みました。
 
 
C.CHAN GUNN
克誠堂出版 (1995/7/1)
 
C.CHAN GUNN
Health Sciences Center for (1989/12/1)
 
 
トリガーポイントの創始者、ジャネット・トラベルは、1942年に「肩と腕の痛みと機能障害:プロカイン・ハイドロクロライドの筋肉注射による治療」を発表し、最初のトリガーポイント論文を書きました。
 
 
Pain and disability of the shoulder and arm: treatment by intramuscular infiltration with procaine hydrochloride.
Travell J, Rinzler S, Herman M.
J Am Med Assoc 1942;120:417–22
 
 
『トリガーポイント・マニュアル筋膜痛と機能障害』の共著者、デビット・サイモンズとは1960年にテキサス州ブルックス空軍基地航空宇宙医学部で出会います。
 1983年にジャネット・トラベルとデビット・サイモンズは『トリガーポイント・マニュアル筋膜痛と機能障害』(邦訳はエンタプライズ社)を出版しました。

 
Myofascial Pain and Dysfunction, Vol. 1: The Trigger Point Manual, The Upper Extremities Hardcover – June 1, 1983
Janet Travell , David Simons
Williams & Wilkins (June 1, 1983)
 
 
しかし、ジャネット・トラベルは鍼を使わずに、麻酔薬の注射をトリガーポイントに行っていました。
 
 
1979年にチェコの医師、カレル・レウィットがドライ・ニードリングを提唱します。
薬液を入れた注射針を使ったトラベルの方法をウェット・ニードリングとして、薬液を入れない注射針や鍼灸の鍼をドライ・ニードリングと呼びました。
 
チャン・ガン先生のIMSという技術は、このような歴史を考えると、個人的には西洋医学だと思うのですが、韓国の最高裁判所はまったく異なる判決をしたようです。
 
アメリカで3年間以上の教育を受けたライセンスド・アキュパンクチャリストと、20時間程度のトレーニングを受けた理学療法士のドライニードリングが訴訟合戦になっているのと少し似ています。
 
 
 
 

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