更年期女性への温熱療法

 
 
 
 
以下、引用。
全身を心地よく温めることで、慢性心不全を改善する「和温療法」。最近は心不全だけでなく、更年期症状など、様々な病気の症状緩和にも効果が期待できるとわかってきた。
 
和温療法は専用の乾式サウナで体をマイルドに温める温熱療法の一つ。鹿児島大学医学部の鄭忠和元教授が重症慢性心不全に対する治療法として、1989年に開発した。治療効果はすでに実証されており、「慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)」ではクラスI(有効)に位置付けられている。
 
近年は心不全に限らず、様々な病気や不調にも応用されている。静風荘病院女性内科・女性外来の天野惠子医師は、7年前から更年期障害や慢性疲労症候群、線維筋痛症、パーキンソン病などの患者に和温療法を活用し、手応えを感じている。「痛みや慢性疲労、食欲不振、不眠、抑うつなどの症状が改善する例が多い。不調の原因がわからない場合でも、症状の改善が期待できる」と天野医師。大脳皮質基底核変性症で歩くのもままならなかった人が、階段をすたすたと昇降できるまでに回復した例もあるという。
 
和温療法は専用の乾式サウナを用いて行う。高熱の蒸し風呂とは異なり、サウナの温度は60℃が基本。遠赤外線で全身をじんわり均等に温める。
 
「深部体温が上がると血流がよくなり、血管の内皮細胞から一酸化窒素(NO)が産生、それがさらに血流を促進させるとわかっている」と天野医師。ほかにも細胞を修復するヒートショックプロテインが増える、交感神経の緊張が和らぐ、リラックスできるなどの作用が報告されている。
 
 
 
ヒートショックプロテイン(HSP)と一酸化窒素(NO)は、まさに灸の治効機序です。
 
循環器の専門医、天野惠子医師は、更年期女性の胸痛が微少血管狭窄症であることを解明されました。
 
また、鹿児島大学で鄭忠和先生と一緒に日本初の女性外来をつくられました。
鄭忠和先生は日本オリジナルの温熱療法である「和温療法」の開発者です。
 
天野惠子先生は、ご自身の更年期障害を和温療法で克服された経験から、更年期女性に温熱療法である和温療法を使われています。
 
更年期女性のホットフラッシュは陰虚内熱、つまり熱症状であり、経験の浅い臨床家は灸などの補陽の治療は禁忌とみなすかもしれません。
 
しかし、実際には、更年期女性のホットフラッシュはヒート・ショック・プロテイン(HSP)や一酸化窒素(NO)を増やす灸療法や温熱療法、運動療法で改善するのです。
 
実際にフィンランド式サウナに入ると、更年期女性の症状は改善します。これはローマ時代のローマ風呂の知られてきた伝統の知識だそうです。
 
顕著なのは、運動すると更年期女性のホットフラッシュが減少することです。運動して、体温をあげ、脳血流を変化させて発汗すると、ホットフラッシュと発汗の症状がマシになります。
 
 
2016年
「エクササイズ・トレーニングは、更年期ホットフラッシュの急性の生理的な深刻度を減らす」
Exercise training reduces the acute physiological severity of post‐menopausal hot flushes
Tom G. Bailey et al.
J Physiol. 2016 Feb 1; 594(3): 657–667.
Published online 2015 Dec 30.
 
 
更年期女性のホットフラッシュは、まさに「一酸化窒素(NO)ーヒート・ショック・プロテイン軸」の病理学=生理学であり、その機序を考えることは、科学=医学の最前線です。
 
 
2017年ブラジル
「更年期ホットフラッシュにおける一酸化窒素ーヒート・ショック・プロテイン軸:熱ショック反応に伴う慢性炎症問題で見逃されてきたメタボリズム問題」
Nitric oxide-heat shock protein axis in menopausal hot flushes: neglected metabolic issues of chronic inflammatory diseases associated with deranged heat shock response
Antônio Azambuja Miragem, Paulo Ivo Homem de Bittencourt, Jr
Human Reproduction Update, Volume 23, Issue 5, September/October 2017, Pages 600–628,
 
 
 
ギリシャ・ローマ時代から温熱療法が用いられ、フィンランド式サウナから科学的研究が始まり、現代では世界中で更年期女性のホットフラッシュや心臓血管の問題、線維筋痛症の慢性疼痛に温熱療法が使われています。そして、その治療効果にはヒート・ショック・プロテイン、一酸化窒素・CGRPによる血管拡張が関連しています。
 
 
2012年
「ホットフラッシュの治療法としての鍼とCGRPカルシトニン遺伝子関連ペプチドの可能性」
Acupuncture as treatment of hot flashes and the possible role of calcitonin gene-related Peptide
Anna-Clara E Spetz Holm
Evid Based Complement Alternat Med
. 2012;2012:579321.
 
 
ここは「すべての答えを知っている」という権威主義的な「自称・専門家」がまったく役に立たなくなる領域です。答えよりも多くの疑問があり、未解明の「未知の世界」が広がっていて茫然とします。権威としての科学ではなく、サイエンスを楽しむヒトの領域だと思います。
 
 
 

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