血管壁とACE2と沈黙ニューロン 新しい瘀血

2022年2月21日『メディカル・ニュース・トゥデイ』
「脳刺激は脳の霧を治療できるか」
Can brain stimulation treat long COVID ‘brain fog’?

ドイツで最も新しく創られた1994年創設の新設大学オットー・フォン・ゲーリケ大学マグデブルクの研究です。

ちなみに、数年前にドイツの大学ランキングを調べたことがあるのですが、ドイツ政府とドイツ人の共通の回答は「ドイツの大学のレベルはすべてが世界最高レベルであり、個性はあるが、大学ランキングや序列は意味がないから存在しない」そうです。ドイツの大学ランキングを調べた自分の教育観が恥ずかしくなりました。日本とドイツでは教育観が違いすぎます。

マグデブルグは旧東ドイツですが、神聖ローマ帝国の「自由都市マグデブルク法」で知られる自由都市であり、マグデブルク市長、オットー・フォン・ゲーリゲは、真空と静電気の研究で知られる哲学者・科学者・政治家です。1600年代に世界最初の摩擦静電気発電機、Elektrisiermaschine(エレクトリジェアマシィーネ)を発明して、同時代のライプニッツに贈呈しました。

以下、引用。

最新の出版された『神経修復とニューロサイエンス』の論文では、マイクロ電流を使って脳血流量を増やすことでロング・コビットの症状である認知症状・視野欠損・疲労の治療に有効だったかもしれないことを発見した。

研究著者たちによれば、コビット患者は血管が変性し、特に微少血管で血流量が減少し、酸素が不足することから、中枢神経の症状を引き起こしている。

2021年12月28日 ドイツ、オットー・フォン・ゲーリケ大学マルデブルク医学心理学研究所
「ロング・コビットの非侵襲的脳微小電流刺激療法は血管の調節不全を軽減し、視覚と認知障害を改善する」
Non-invasive brain microcurrent stimulation therapy of long-COVID-19 reduces vascular dysregulation and improves visual and cognitive impairment
Sabel, Bernhard et al.
Restorative Neurology and Neuroscience, vol. 39, no. 6, pp. 393-408, 2021
Published: 28 December 2021

以下、『メディカル・ニュース・トゥデイ』より引用。

研究者らは末梢動脈および末梢静脈の血管調節の改善に注目し、すべての静脈は113%の改善された最大血管拡張を示し、末梢静脈は非侵襲性脳刺激治療後の血管拡張で平均300%の変化を示した。

【それはどのように機能するか】

研究チームは、脳内のCOVID-19の影響を受けた血管は血管壁の腫れのために拡張できないと信じていた。これにより血流が減少し、ニューロンから酸素が奪われる。酸素が減少すると細胞の代謝が遅くなり、細胞の機能が停止する。細胞は健康すぎて死ぬことはないが、信号を発することができないため冬眠モードに入る。

電流による刺激を繰り返すと、血管壁の筋肉が弛緩し、血液が細胞に自由に流れるようになる。血液は酸素と栄養素を供給し、冬眠中または沈黙したニューロンを再活性化し、認知と視力の回復を可能にする。

著者らは、非侵襲性脳刺激がサイレントニューロンの再酸素化の結果として認知および視覚の合併症を改善したと結論付けた。これは血管調節の回復に起因する血流の増加によるものだった。

カリフォルニア大学のクーパー博士は、そのメカニズムについて、血管の血圧調節に関与するACE2のレセプターをターゲットにしてウイルスは破壊することかもしれないと示唆した。

ACE(アンジオテンシン転換酵素)は血管収縮剤であり、アンジオテンシン1をアンジオテンシン2に転換させる働きを阻害するACE阻害薬は降圧剤の代表です。

ACE2は細胞膜に存在する膜タンパクであり、血管収縮剤ACEと拮抗して血管壁を弛緩する働きがあります。レニン=アンジオテンシン=アルドステロン系でACEとACE2はバランスをとっています。

コロナウイルスの表面のスパイク・タンパクは、まさにACE2と結合して細胞に侵入します。ACE2が発現しているのは肺・小腸・心臓・血管です。

この理論は、いままで調査してきた「微少循環障害」「酸素不足」「血管障害に起因する自律神経障害・発汗異常」と矛盾しません。

以下、オットー・フォン・ゲーリケ大学マルデブルク医学心理学研究所の論文より引用。

4.3 COVID-19、血管調節および血流

最近の脳画像研究が証明しているように、COVID感染と神経機能障害の重要な特徴は血流の調節不全である。

Hosp(2021)らの研究によれば、前頭頭頂部の脳領域の代謝低下、Guedjら(2021)の研究では、両側のレクタル・ジャイラスとオービタル・ジャイラスと、右側頭葉、扁桃体および海馬から右視床の代謝の低下、血流の低下は嗅覚減退症、無嗅覚症、痛み、不眠症、記憶および他の認知障害などのさまざまな症状と関連していた。脳におけるこれらの全体的な代謝変化を考えると、視覚および認知障害の根本的なメカニズムは、ニューロンだけでなく、おそらく血管起源でもある可能性がある。

これは、まったく新しい瘀血概念になると思います。
脳への非侵襲性の反復性電気刺激を繰り返すことで血管壁の筋肉を弛緩させ、血流量を増やすことで沈黙ニューロンを再活性化するという治効機序です。

https://www.medicalnewstoday.com/…/can-brain-stimulation-tr…

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