韓医学と政策立案

 
2022年5月23日『韓医新聞』
「大韓韓医師協会 6月の地方選挙に向けて政策チェック」
 
 
6月の地方選挙に向けて、韓医師団体が「国民のために韓医学は何ができるのか?」を政策立案して、団体としてヴィジョンを共有する会議です。
大統領選挙や地方選挙前に、韓医協として政策資料集をまとめているそうです。
 
今回も2017年・2018年・2022年の韓医学業界の政策資料集をまず確認しています。韓医学の不妊治療への参入や鍼や韓方の保険適応拡大などは当然、盛り込まれています。
 
ユニークなのは、大使館などの在外公館に韓医学診療室を設置するという提案です。これは凄く良いアイディアだと思いました。
 
もっとも凄いアイディアは,
女性韓医師から提案された、「性暴力被害者へのトラウマ治療に韓医学治療を提供する」という政策立案です。
 
現在、韓国には302の性暴力被害者の指定医療機関があり、その中で韓医学医院は一つだけ対応しているそうです。それでは地方の性暴力被害者が韓医学トラウマ治療を受けることができないので、「地方の女医の韓医師をリストアップして、患者がアクセスできる名簿をつくる。韓医師に精神医学や人権教育、婦人科教育などのトレーニングを行うことで、韓医師のレベルアップも同時にできる」というものです。韓医学業界の全体のレベルを底上げして、韓医師の人間性を成長させようという提案になります。
 
ちょうどEFT(エモーション・フリーダム・テクニック)という心理的トラウマ治療が韓医学で保険支払いの適応になったタイミングでもあり、韓医学界は『災害トラウマ治療の韓医学診療マニュアル』を出版しており、耳鍼NADAプロトコルとEFTを心理トラウマの鍼治療としてマニュアルに掲載しています。
苦しんでいる患者さんの心身を助けることが第一ですが、同時に韓医師という職業の人間性や徳性・人権意識を高めつつ、「こころのケアには韓医学」という、もっとも伝えたい情報を国民に理解してもらうきっかけとなります。
 
「韓医学は女性の人権を絶対に守る」という強い意志表明にもなり、古臭く保守的なイメージをもつ伝統医学のイメージを刷新でき、同時に業界内での女性韓医師のパワーを強く出来ます。これは私には逆立ちしても、思いつかない提案です。たった一手で、局面をすべて引っ繰り返すチェス・マスターや軍師のような提案です。
 
何より、臨床と真剣に向き合っていない人間には絶対に思いつかない政策であり、提案した人物の尊敬すべき人間性さえ伝わってきます。
現在の韓医学業界には学ぶべきものや尊敬できるものがたくさんあります。今後も学んでいきたいです。
 
現在の韓国は、日本の経済雑誌『東洋経済』が「激震!韓国フェミニズム」という特集記事を組むほどの世界的フェミニズム先進国です。韓国の19歳から29歳に調査すると、「自分はフェミニストである」と答えた人は女性で42パーセント、男性で10パーセントで、2022年の大統領選挙では「フェミニズム」「反フェミニズム」「女性嫌悪」が大きな争点になったほどです。
 
韓医学業界は、ポストモダンの社会変化に対して、少なくとも正面から向き合い、変わろうという意志を強く感じました。
 

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