韓国の英語オープン・アクセス・ジャーナル

2022年2月18日大韓鍼灸学会の雑誌 『ジャーナル・オブ・アキュパンクチャー・リサーチ』
「下部尿路症状への仙骨鍼:ランダム化比較試験のシステマティックレビュー」
Sacral Acupuncture for Lower Urinary Tract Symptoms: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials
Jiwon Park et al.
Journal of Acupuncture Research Volume 39(1); 2022 


韓国の圓光大學校の韓医師の先生方による論文です。

以下、引用。

このレビューの結果は、上リョウ(BL31)から会陽(BL35)、特に中リョウ(BL33)と会陽(BL35)を治療ポイントとして選択し、ツボで5〜8 cmの深さまでニードリングすると、治療効果が得られる可能性があることを示唆している。従来のツボに加えて、仙尾骨関節または尾骨の先端の両側1 cmで8〜11 cmの深さまで針を刺すことが深部神経刺激に適している場合がある。

韓国の大韓鍼灸学会の学会誌ですが、英文が充実していてレベルが高いです。

わたしは2013年に以下のような発言をしました。

中国やロシアは西側諸国のインターネットと切り離したスプリンターネット(分割ネット)の世界を目指していると予測しています。だから、これからは中国とロシアの鍼灸に関する情報を意識的に分析します。いま、オープンアクセスできる環境のうちに情報を収集・分析しないと、将来的には中国とロシアを中心としたユーラシア世界と日本の情報環境は隔絶される可能性があります。これから数年は中国とロシアの東洋医学情報の収集と分析に集中します。

当時は、中国の中医学鍼灸の論文はほとんどが無料でインターネット上で読めました。

しかし、2010年にグーグルが中国から撤退し、中国の検索エンジン、百度や中国のSNS、ウィーチャットが急速に発達しました。 

ロシアも検索エンジン、ヤンデックスやヤンデックス・メール、カスペルスキーのアンチ・ワクチンソフト、ロシアSNS、ヴェーカーを急速に発達させていました。現在はロシア発のSNS、テレグラムが急速に発達しています。

2013年から2018年頃までは中国の論文データベースCNKIが日本でも検索可能で、CNKIと他のグーグルなどの検索エンジンを組み合わせると、ほとんどの中医学鍼灸の論文が無料でPDFファイルで手に入れることができました。 

しかし、ロシアは2013年から2015年あたりから急速にインターネット世界を閉ざしていきました。

中国も米中新冷戦がいわれ始めたあたりからCNKIが極端に検索しにくくなり、いまではほとんど情報が手に入らないと実感しています。

2013年から続けてきたユーラシア大陸の旧共産圏(ロシア+中国)のOSINT(オープン・ソース・インテリジェンス)活動は、9年後の2022年についに終了のようです。

今後は、2020年代に急速に鍼灸の科学化をすすめた他の国の情報収集・分析に方針を切り替えようと思います。

中国の中医学は習近平政権と一体化し、EBМ路線に完全に舵をきっています。

今後、世界の鍼灸のEBМの中心地の一つになることは予測されており、この方面の情報はフォローし続ける必要性を感じます。

しかし、鍼麻酔は1970年代に世界的ブームを起こしましたが、実質的に欧米と日本の研究者が中心でした。中国本土では、鍼麻酔はつい最近まで下火でした。

弁証論治の鍼は、日本の専門誌『中医臨床』で「現代中国は、ホントに弁証論治で鍼灸治療をしているのか」と特集を組まれるほどです。

中国式耳鍼や頭皮鍼などのマイクロ鍼は、1970年代からの開発時・日本への導入時は盛り上がりましたし、わたしは個人的に評価しているのですが、例えば頭皮鍼は開発者の焦順発先生がやると効くが、他の人がやってもそれほど効かないという問題があります。

マイクロ鍼灸の生物学的ホログラフィー理論を創った張穎清先生は、1995年4月3日の『中国科学報』に疑似科学と批判されてレッテルを貼られ、『人民日報』や『新華社通信』に攻撃され、政府系の機関や大学から追放という形になりました。

フランスのノジェの耳鍼や日本の山元先生のYNSA頭皮鍼、韓国の高麗手指鍼は生き残っていますが、中国発のマイクロ鍼灸に現在、勢いはありません。

筋膜の癒着など瘢痕組織を切るような操作をする小針刀はかなり面白く、日本では浅野周先生が考え方を導入されています。

しかし、小針刀は新しい治療法にみえますが、1976年に文化大革命期のはだしの医者だった朱漢章先生が開発されたものなのです。中国は1970年代から実質的には新しい鍼灸のアイディアを提出していません。

個人的には、中国で爆発的に人気が出てきている西洋医学のドライニードリングとトリガーポイント、朱漢章先生の小針刀、符仲華先生の浮鍼療法、香港大学の中医師の劉農虞先生が開発した筋針療法などの、中国の西洋医学系の新しい鍼法には期待していますし、今後も情報収集を続けます。

今後の中国での情報収集の要はEBМと西洋医学系の新しい鍼法です。

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