NADAプロトコル研究の歴史

2016年12月7日『薬物中毒とリハビリテーション』
「NADAプロトコル耳介鍼は薬物中毒と行動健康障害の患者をサポートする:現在の展望」
The National Acupuncture Detoxification Association protocol, auricular acupuncture to support patients with substance abuse and behavioral health disorders: current perspectives
Elizabeth B Stuyt et al.
Subst Abuse Rehabil. 2016; 7: 169–180.
Published online 2016 Dec 7.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5153313/

以下、引用。

香港の神経外科医、温祥来は1972年に偶然、鍼麻酔のために耳に挿入された鍼からアヘンの薬物離脱症状に効くことを発見した。

3つから5つの耳穴がニューヨーク・サウスブロンクスのリンカーン病院での薬物アルコール中毒の治療で鍼のプロトコルとして標準化された。

貧しいコミュニティー支援に刺激されてヤングローズ(プエルトリコ系)とブラックパンサーズの活動家の組織が、初期のリンカーン病院でのヘロイン中毒へのメサドン解毒プログラムとしてプログラムを作成した。

非薬物療法や自然療法への待望により、リンカーン病院は温祥来の方法である「肺」穴への電気刺激を使った。耳穴鍼プロトコルはマイケル・スミスの数年の試行錯誤により、神門・交感・腎・肝・肺と拡張された。

1985年にNADAが行動健康臨床家をトレーニングするためにマイケル・スミスによって創設された。

【NADA研究の歴史:初期のランダム化比較試験】

NADAプロトコルの最初の調査研究のいくつかには、1987年のパイロット研究と、それに続く1989年の重度のアルコール依存症のプラセボ対照ランダム化比較試験が含まれ、NADA治療ポイントを受けた40人の被験者のうち21人が治療プログラムを完了した。

1987年
「アルコール依存症の鍼:パイロット研究」
Acupuncture treatment of alcoholic recidivism: a pilot study
M L Bullock, A J Umen, P D Culliton, R T Olander
Alcohol Clin Exp Res. 1987 Jun;11(3):292-5.

1989年『ランセット』
「重度のアルコール依存症に対する鍼の比較試験」
CONTROLLED TRIAL OF ACUPUNCTURE FOR SEVERE RECIDIVIST ALCOHOLISM
MiltonL. Bullock PatriciaD. Culliton RobertT. Olander
Lancet. 1989 Jun 24;1(8652):1435-9.

以下、引用。

ウオッシュバーンは、最初にNADAプロトコルの効果を1993年に報告した。

1993年カルフォルニア大学サンフランシスコ校
「ヘロイン中毒への鍼:シングルブラインド臨床試験」
Acupuncture heroin detoxification: a single-blind clinical trial
A M Washburn et al.J Subst Abuse Treat. Jul-Aug 1993;10(4):345-51.

1996年にNIHの薬物中毒センター(CSAT)が鍼のアヘン中毒への作用をサポートし、1997年にNIHによる鍼の声明が出ます。

以下、引用。

1999年に8,011人のボストンの公的資金を入れた研究では、普通の外来プログラムを受けた人は36パーセントが6カ月以内に再入院したのに対して、耳介鍼を受けた場合は18パーセントだった。

2000年にアヴァントがよくデザインされた82人のコカイン依存症患者へのNADAプロトコル研究を偽鍼とリラクゼーションと比較して、8週間で週3回の尿スクリーニングを受けた結果を発表した。

この研究はNADAプロトコルにものすごく関心をもたせた。そしてアメリカで6カ所620人の大規模試験とつながった。

2000年8月
「コカイン依存症への耳鍼のランダム化比較試験」
A randomized controlled trial of auricular acupuncture for cocaine dependence
S K Avants 1, A Margolin, T R Holford, T R Kosten
Arch Intern Med. 2000 Aug 14-28;160(15):2305-12.

この実験が、大きく報道されたことを覚えています。

以下、引用。

論文著者らはカウンセリング・セッションの状況が貧弱であったことを認めた。彼らは、実験結果が鍼単独ではコカイン中毒での使用を支持しないと認めた。

2002年は鍼と薬物依存症の研究にとっての分水嶺だった。薬物依存症への鍼研究は『JAMA(アメリカ医師会雑誌)』の論文から激減した。

この2002年のマーゴリン博士による『JAMA』の論文はいまだに覚えています。1997年のNIH声明のあとで、鍼についてのネガティブな報道で、『メディカルトリビューン』などにも記事が載り、アメリカでは鍼の研究が下火になった印象がありました。イェール大学医学部の研究が『JAMA』に載ったので影響力が大きかったと思います。

2002年『JAMA』
アーサー・マーゴリン
「コカイン依存症への鍼治療:ランダム化比較試験」Acupuncture for the treatment of cocaine addiction: a randomized controlled trial.
Margolin A,et al.
JAMA. 2002 Jan 2;287(1):55-63.

以下、引用。

同じ頃、ビヤーが素晴らしいランダム化比較試験を使って、NADAプロトコルの禁煙への効果がスタンドアロンでないことを示した。

NADAプロトコルと教育とカウンセリングの組み合わせは40パーセントの禁煙であり、偽鍼と教育とカウンセリングは22パーセント禁煙、NADAプロトコル単独では10パーセントの禁煙だった。

この結論は、非常に重要だと思います。

2002年8月
「耳介鍼、教育、禁煙:ランダム化比較試験」
Auricular acupuncture, education, and smoking cessation: a randomized, sham-controlled trial
Ian D Bier et al.
Am J Public Health. 2002 Oct;92(10):1642-7.

以下、引用。

【NADAプロトコル研究の拡大】
2002年にスウェーデンの心理学者アン・バーマンとルンドベルクはスウェーデンの医療刑務所の精神医学ユニットでの小さなパイロット探索実験でのNADAプロトコルを発表した。

2002年
「医療刑務所精神ユニットでの耳介鍼:パイロット研究」
Auricular acupuncture in prison psychiatric units: a pilot study
A H Berman 1, U Lundberg
Acta Psychiatr Scand Suppl. 2002;(412):152-7.

内面の調和や落ち着きなどです。

以下、引用。

【2011年ー2016年:現在のNADA研究のレビュー】

2014年の『医療従事者のバーンアウト燃え尽き症候群』は面白かったです。
2015年のNADAプロトコルの論文の記述は興味深いです。
薬物依存症、双極性障害、境界性人格障害、反社会性人格障害、間欠性爆発障害、ギャンブル中毒、盗癖、買い物依存、インターネット依存症はいずれも衝動性の問題です。

トリガーポイント分野では、ジャン・ドマーホルツ先生が定期的に最新研究をレビューして評論してくれているので、それを追いかけているだけで最新研究についていけます。

歴史学の分野では『史学雑誌』で毎年「回顧と展望」が特集され、その年度の重要研究がすべて網羅されているので、発展が手にとるようにわかります。

このNADAプロトコル論文は1985年から2016年の31年の歴史を簡潔にまとめており、読んで良かったです。

特に1999年くらいから2002年までの流れは、読んでいて当時のことを思い出しました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする