マルチディシプリナリー・アプローチによるファッシャ研究

2022年4月29日 『アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)』公式ホームページ
ヘレン・ランジュバン博士
「マニピュレーション手技療法の神経メカニズムに焦点を当てた3つの新しい研究」
Three New Research Networks Will Focus on the Neural Mechanisms of Force-Based Manipulations
Director’s Page
Helene M. Langevin, M.D.

ヘレン・ランジュバン先生 はファッシャの鍼研究者であり、ハーバード大学医学部教授であり、2018年からアメリカ国立補完統合衛生センターの所長です。

以下、引用。

人体へのメカニカル・フォースの影響は、圧感覚メカノセンセーションに関与する神経系を研究する科学者とマッサージ、脊椎マニピュレーション(カイロプラクティック)、鍼などのメカニカル・フォースに基づく操作を使用して治療する臨床医の2つの専門家グループにとって非常に興味深いものである。

不幸なことに、関心が重複しているにもかかわらず、これらのグループは互いに話す機会があまりない。手技療法士と神経科学者は同じ会議に出席したり、同じジャーナルを読んだりすることはあまりない。

2019年に、われわれNCCIHはこの状況を変える試みへの最初のステップに踏み出した。

ヘレン・ランジュバン博士がアメリカ政府NCCIHの官僚として行ったのは、マッサージセラピストや鍼師などのファッシャ臨床家と神経学者やファッシャ筋膜学者などのサイエンティストがともに話し合うワークショップを開催したことです。
これこそがマネジメントです。

以下、引用。

この新たな分野を促進するための次のステップとして、国立補完統合衛生センターとアメリカ国立神経疾患・脳卒中研究所は、2021年3月にこの分野に役立つリソースを生み出すための研究ネットワークの開発を支援するための資金提供機会の発表を発表した。

3つの分野は、腰痛の研究やメカニカル・フォースの研究がありますが、最も注目されるのはカリフォルニア大学バークレー校のエレン・ランプキン先生の研究です。

このプロジェクトの目的は、マッサージなどの軟部組織操作が神経系、非神経細胞、および組織に生物学的影響を与えるメカニズムを特定するための優先度の高い研究ネットワークを確立することである。

エレン・ランプキン先生はメルケル細胞と触覚の研究者です。触覚・メルケル細胞におけるイオン・チャネルの関与を2020年に明らかにし、科学雑誌『セル』に発表しました。
 

2020年『セル』
「触覚と機械的圧力的メカニカル疼痛」
Touching Base with Mechanical Pain
Oscar M. Arenas Ellen A. Lumpkin
Cell. 2020 Mar 5;180(5):824-826.

この新しく発見されたイオン・チャネルはペルシャ語で「動き」を意味する“TACAN”と名付けられました。

2020年『セル』
「TACANは感覚メカニカル疼痛におけるイオンチャネルである」
TACAN Is an Ion Channel Involved in Sensing Mechanical Pain
LouBeaulieu-Laroche
Cell Volume 180, Issue 5, 5 March 2020, Pages 956-967.e17

2020年3月『ペイン・リサーチ・フォーラム』
「TACAN:新しいメカニカル疼痛センサー」
TACAN: A New Mechanical Pain Sensor

カナダのマギル大学のRezaSharif-Naeiniが率いる研究者は、新たに特定されたイオンチャネルをTACAN(ペルシア語で「動き」を意味する)と呼んでいる。

「著者は、点状の圧力誘発性の痛みに関与する新しいイオンチャネルを発見したため、この研究はこの分野のブレークスルーとなる」とハーバード大学の馬秋富先生は述べています。

馬秋富先生は、ハーバード大学の鍼と炎症システムの研究者です。

アメリカの政府機関であるアメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、ファッシャの解明に戦略的ターゲットを設定しており、この研究の影響は鍼・マッサージ・手技療法に波及すると予測されます。

アメリカは、この戦略思考が優れていると感じます。
2022年、中国政府の第14次中医学発展五カ年計画とまったく中身が違います。

おそらく、2020年代の鍼の分野のメイン・テーマは、この国立補完統合衛生センターが研究する領域と考えられます。

2020年代に起こることが予測される補完代替医療の領域の学術のイノベーションに、なんとかついていきたいと願っています。

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