【BOOK】『世界』2023年2月号 行政と専門家の構造的問題

「なぜ日本のコロナ対策は失敗を続けるのか――行政と専門家の構造的問題に目を向けよ」
米村滋人
『世界』2023年2月号189-198頁、岩波書店

今回の岩波書店の『世界』では、以下の日本のコロナ対策を総括する記事が掲載されていました。

「医療界と社会のあいだ」
高久玲音(たかく・れお:1984-)
※「日本の医療界に対する『なぜ?』という素朴な疑問を多くの国民が共有するに至った」
※「(医師や看護師の献身的な働きに対して)防護服を着て長時間働くICUの医師や看護師には一日数千円の危険手当を支払ってすます大病院がほとんど」
※「【平時から病院のホワイト化を】」

「なぜ日本のコロナ対策は失敗を続けるのか――行政と専門家の構造的問題に目を向けよ」
米村滋人(よねむら・しげと:1974-)
※「少なくとも2021年以降の日本の感染症対策は明らかに失敗だったと言わざるをえない」

『「不要不急」と指さされ――コロナ禍と飲食業界』
井川直子(※『シェフたちのコロナ禍』の著者)

『パンデミックが照らし出す「科学」と「政治」』
神里達博(かみさと・たつひろ:1967-)

中国のゼロ・コロナ政策が終了したことで、ようやく世界各国のコロナ対策の検証ができる状況ができてきました。

米村滋人先生が第一に指摘されているのは、2021年12月WHOやCDCがエアロゾル感染/空気感染が感染経路であると指摘したことです。

「(日本の専門家集団である)感染研の見解は世界的な学術的知見の伸展に反するもの」であり、「世界的なデータの蓄積により科学的知見が変化した後も感染研が従来の仮説に固執し、誤った科学的知見を公表し続けたことは、きわめて問題だった」と指摘されています。

また、専門家の偏りも指摘されています。

専門家が感染症専門家に偏り、法学者、経済学者、社会心理学やリスクコミュニケーションなどの専門家の関与がなく、社会的な考慮のものとに行うべき政策決定が一部の専門家によってゆがめられたことは疑いがないと記述されています。

また、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキング(EBPМ)を指摘されています。

実は、神戸東洋医学研究会のHPに2020年4月14日に投稿した『【新型コロナウイルス】複眼のレンズによるエビデンス統合』という記事で書いたことがそのまま書かれていました。

異なる価値観を持つ複数の専門家による検討と議論が必要なのです。
4つの原則とは包括的、厳格さ、透明性、アクセスしやすさです。

日本は「(権威主義傾向を持つ)専門家の偏り」「専門家が世界レベルの最新情報にアップデートできていないこと」「複眼の視点から多様な立場の専門家によるエビデンス統合ができていないこと」が問題であることが明らかになりました。

個々の専門家は超一流レベルであっても、専門知を統合し、管理できていないというのが日本の現状です。

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