大気汚染と子どもの知能

2022年7月14日『Futurity』
「大気汚染は子どもの脳を傷つける」
AIR POLLUTION CAN HARM KIDS’ BRAINS

以下、引用。

大気汚染は肺の問題だけではなく、子どもの行動や知能の問題となることを新研究は示唆している。

学術誌『エンバイロメンタル・ヘルス・パースペクティブ』に掲載された論文によると、妊娠中に高い二酸化窒素にさらされた子ども、妊娠3カ月や妊娠6カ月でさらされた子どもは行動上の問題をもつ傾向がある。

大気汚染の微粒子、PМ2.5にさらされた2歳から4歳の子どもたちは、行動機能や認知パフォーマンスが貧弱であることも研究者たちは報告している。

アメリカ国立衛生研究所がワシントン大学などに資金提供した研究です。

2022年6月23日ワシントン大学
「出生前後の大気汚染にさらされることと子どもの行動問題と認知パフォーマンス」
Associations of Pre- and Postnatal Air Pollution Exposures with Child Behavioral Problems and Cognitive Performance: A U.S. Multi-Cohort Study
Environ Health Perspect. 2022 Jun;130(6):67008.

2010年代に大気汚染が子どもや成人の脳に影響するという研究が相次いで発表されています。
わたしは9年以上、この問題を追いかけ続けています。

多くの科学的証拠が極小の微粒子様物質が脳に入り、炎症を起こすことを示唆しています。成人の認知機能やうつ病、精神病などにも影響します。

現在のわたしの一つの疑問に、PМ2.5によって悪化する脳の炎症によるうつ病などの精神症状は認知行動療法などの心理療法で緩和するのかということがあります。

2013年 アメリカ小児科アカデミー小児科学 
コロンビア大学
「出生前の大気汚染への暴露と母親の精神的悩みと子どもの行動」
Prenatal Exposure to Air Pollution, Maternal Psychological Distress, and Child BehaviorPerera FP, et al. Pediatrics. 2013.

大気汚染にさらされると子どものADHDが増えます。

2015年5月28日 『MEDLEYニュース』
『PM2.5は自閉症の子どもを増加させるかもしれない 』

以下、引用。

妊娠中に大気汚染に曝露すると、その後生まれてくる子どもの脳の発達が損なわれる可能性が報告されている。今回の研究では、看護師の健康調査によって得られたデータをもとにPMによる大気汚染と自閉症スペクトラムの関連性を検証した。その結果、調べたデータには「自閉症スペクトラムになった子どもの母親は、妊娠中、特に妊娠7-9ヶ月時にPM2.5に触れていることが多い」という関係が見られた。

2015年ハーバード大学
「妊娠中または妊娠前後の大気汚染パーティクル問題と自閉症スペクトラム障害」
Autism Spectrum Disorder and Particulate Matter Air Pollution before, during, and after Pregnancy: A Nested Case–Control Analysis within the Nurses’ Health Study II Cohort
Raanan Raz,et al.
Enviromental Health Perspective
MARCH 2015 | VOLUME 123 | ISSUE 3

2016年10月『WIRED』
『大気汚染は脳に「金属ナノ粒子」を蓄積しアルツハイマー病を引き起こしうる:研究結果』

以下、引用。

人間の脳は汚染大気から磁性のある有毒なナノ粒子を取り込んで蓄積しているとする研究結果が、今年9月の『米国科学アカデミー紀要』で発表されている。

強磁性の酸化鉄化合物である磁鉄鉱からなるこのナノ粒子は、以前から人間の脳に存在していることがわかっていたが、これまでは生物体内で生成される無害な副産物だと考えられていた。

しかし、37個の人間の脳検体で発見されたナノ粒子を詳細に調べた今回の研究によると、これらはガソリンの燃焼やクルマがブレーキを踏むときに生じるスモッグから取り込まれたものであることがわかったという。

英国ランカスター大学のバーバラ・マーハーが率いる研究チームは、高分解能イメージング技術を使用して死後に提供された脳検体37個の前頭葉に存在するナノ構造磁性体を分析した。

脳検体の多くはメキシコシティの住人から提供されたものだが、英マンチェスターから提供された検体も数個含まれていた。

これらの極小金属球にはプラチナやニッケル、コバルトといったほかの遷移金属ナノ粒子も付着していた。こうした粒子は通常は脳内には存在しない。

研究チームは、こうしたマグネタイト粒子は呼吸によって脳内に取り込まれたものだと推測している。粒子の直径は約150ナノメートル以下と非常に小さいため、嗅球の隙間から脳内に入り込めるという。

これまでの研究で、脳内に存在するナノ構造磁性体はアルツハイマー病と相関性があることがわかっている。このナノ構造磁性体はアルツハイマー病と関連のある異常な折り畳み構造のタンパク質と相互作用して活性酸素を生成し、これが細胞に重度の損傷を与える可能性があると考えられている。

2016年4月13日 『アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)』
「ヒト脳内のマグネタイト汚染ナノパーティクル」
Magnetite pollution nanoparticles in the human brainBarbara
A. Maher,et al.
PNASvol. 113 no. 39 10797–10801

2019年3月28日『ニューズウィーク』
「大気汚染は若者に精神病的症状を引き起こす?」

以下、引用。

米国医師会報(JAMA)の精神科専門誌に掲載された論文によれば、ディーゼル車が排出する窒素酸化物や微小粒子状物質(PM2.5)などの汚染物質にさらされた10代の若者は、高い確率で不眠や幻覚などの症状を経験していた。都市の生活環境と10代の精神症状の関連性の60%は汚染物質に恒常的にさらされたことで説明できると研究チームはみている。

論文の筆頭執筆者でロンドン大学キングズ・カレッジ精神医学・心理学・神経科学研究所のヘレン・フィッシャーが本誌に語ったところでは、チームは精神障害の発症に関連があると考えられる他の要因、たとえば喫煙、大麻の使用、アルコール依存、貧困、その他の精神疾患、貧困地域や犯罪多発地域に暮らしていること、社会的孤立などを考慮に入れ、統計学でいわゆる交絡因子の調整を行った上で大気汚染と精神障害の関連性を確認したという。

2019年3月27日『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』
「大気汚染曝露と青年期の精神病経験の関係」
Association of Air Pollution Exposure With Psychotic Experiences During Adolescence
Joanne B. Newbury,
JAMA Psychiatry. 2019;76(6):614-623.

2019年8月23日『ナショナルジオグラフィック』
「大気汚染で躁うつ病やうつ病に? 脳への影響は不明」
精神疾患と大気汚染の関連示される米国とデンマーク

以下、引用。

大気汚染がひどい地域では、躁うつ病(双極性障害)やうつ病(大うつ病性障害)が多かったという研究結果が8月20日付けの学術誌「PLOS BIOLOGY」に発表された。

2019年8月20日
「アメリカとデンマークの環境汚染に関連した精神病の増加」
Environmental pollution is associated with increased risk of psychiatric disorders in the US and Denmark
Atif Khan,
PLOS BIOLOGY  Published: August 20, 2019

2019年11月23日『フォーブス』
『研究が進む大気汚染と精神的疾患の悪化との相関関係』

以下、引用。

オハイオ州にあるシンシナティ小児病院医療センターとシンシナティ大学の研究者たちがこのほど、一連の研究を新たに実施。大気汚染と成人のあいだにある相関関係が子どもの場合にも見られることが明らかになった。

ひとつめの研究では、子どもたちの精神的疾患が短期的に大気汚染にさらされたあと、1日から2日後に悪化することが明らかになった。

そして脳機能イメージングの結果を分析したところ、こうした関連性が生まれる主な原因は、大気汚染がきっかけで起こる脳の炎症反応と見られることがわかった。

2019年11月25日 『ニューヨークタイムズ』
「大気汚染は脳にダメージを与えるかもしれない」
「極小の大気汚染物質は脳の構造にアルツハイマー病に似た構造変化を引きおこす」

以下、引用。

「PM2.5は脳の構造を変化させ、記憶障害を加速させる」と筆頭著者である南カルフォルニア大学のダイアナ・ヨウナンは言う。「大気汚染は健康、特に脳に影響を与えるということを知って欲しい」

2019年11月20日 『ブレイン』
「パーティクルと記憶障害は アルツハイマー病の神経解剖学的な初期のバイオマーカーを介したものである」
Particulate matter and episodic memory decline mediated by early neuroanatomic biomarkers of Alzheimer’s disease
Diana YounanBrain,
Brain
. 2020 Jan 1;143(1):289-302. Published: 20 November 2019

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