伊藤修先生のPIA奇経療法

1978年「坐骨神経痛に対するMP針による奇経療法」
伊藤 修
『日本東洋醫學會誌』1978 年 29 巻 3 号 p. 137-143


1950年代に間中喜雄先生はイオンパンピング奇経療法を開発します。

1964年に長友次男先生がマイナスの亜鉛とプラスの銅の素材を磁化したMP鍼を開発します(長友次男著『長友MP鍼灸講話第八十八輯』鍼灸振興会)。 

1966年、間中喜雄先生は磁気による経絡流注の研究も始めました。間中先生の「二金属接触法 (2-M-C) 」が「磁石接触法 (2-MAG-C) 」へと進化しました。

1966年
「二金属接触法 (2-M-C) の代用としての磁石接触法 (2-MAG-C) による経絡の方向性の研究」
間中喜雄
『日本東洋醫學會誌』1966 年 17 巻 1 号 p. 18-19

1971年に間中喜雄先生はゲルマニウム・ダイオードによるイオンパンピング・コードを開発します(旭物療器)。

1976年11月から1978年12月までは、わずか2年という短い期間ですが、中島直胤先生が『医道の日本』で間中式の奇経療法の症例を次々に発表します。

1978年に入江正先生がイオンパンピング・コードを用いた『経別・経筋・奇経療法』を発表されます(入江正先生は1972年鍼灸師免許取得 )。

1979年、『鍼灸トポロジー学武会』で1978年11月6日中島直胤先生の逝去が書かれ、中島直胤先生の遺構「2Мと奇経の設定」が掲載されます。

1979年の以下の論文で伊藤修先生(当時43歳)は中島直胤先生への謝辞を書かれています。

1979年「疼痛を伴う疾病への奇経八脈の臨床的応用の一考察」
伊藤 修
『日本鍼灸治療学会誌』1979 年 27 巻 3 号 p. 156-166

この論文の巻頭で、伊藤修先生は白銅の100円硬貨と銅の10円硬貨によるイオンパンピング療法が発表されています。これは調べた限り、刑部忠和先生の11円療法よりも早いです(1985年刑部忠和「たった11円で効く驚異のツボ療法 : 10円玉と1円玉を貼るだけで病気が治る」青山書房1985年12月)

1979年「腰痛症に対するMP針による奇経療法」
伊藤修『日本鍼灸良導絡医学会誌』 8(4): 61-61 1979

1980年「膝関節に対するPIA奇経療法」
伊藤修『日本鍼灸治療学会誌 』1980年 29 巻 2 号 62-68

1983年『目で見るPIA奇経療法入門』
伊藤修
日本PIA療法学会出版部

1986年『不思議によく効く11円療法』
伊藤修
マキノ出版

間中式イオンパンピング奇経療法の歴史から伊藤修先生の奇経療法の位置付けを分析すると、

(1)100円玉と10円玉の「110円療法」や10円玉と1円玉の「11円療法」を開発したこと、
(2)中島直胤先生の影響を受けたこと、
(3)奇経圧診点である「PIA(Pelvis subluxation and Ito’s Area)」を提案したこと、

の3点が特筆されます。

PIAはたまたま同時期に中国で発表された腕踝鍼と非常に似ており、伊藤修先生ご自身が追試されていることを『手根針・足根針』で、同じ研究会に所属されていた杉充胤先生が訳者後書きで書かれています(張心曙著『手根・足根針』医道の日本社)。

1988年から1990年代に伊藤修先生は、レーザー鍼の論文が増えます。

1988年「ソフトレーザーによる膝関節痛のためのPIA療法 (第1報)」
伊藤修
『日本レーザー医学会誌』1988 年 9 巻 3 号 p. 443-446

1997年「東洋医学的思考にもとづいたPIAレーザー療法の臨床」
伊藤修
東京・漢方健康センター
JaLTA (suppl): 52-52, 1997.

1997年
『目で見るPIAレーザー速効療法(腰痛編)』
伊藤修
エンタプライズ社1997年7月7日
※ハリを使わない無痛療法

2001年(平成13年)
「関節の痛みをとる緑の塩」
伊藤修
ブックマン社2001年9月1日

2003年(平成15年)
東京五反田の「漢方健康センター」は閉院。神奈川県三浦市「漢方健康センター」へ移転。
伊藤修先生は1935年生まれなので当時68歳。

2011年(平成24年)
「温故知新の思考をレーザー治療に活用し治療効果をより高める試みについて」
伊藤修
漢方健康センター
JaLTA 10(1): 65-65, 2011.

確認できる限り、2011年の論文が伊藤修先生(当時76歳)の最後に発表された論文になります。

竹内廣尚先生が伊藤修先生を「治療の天才」と呼ばれていますが、レーザー治療に軸を移されてから「私は完全に理解出来なくなりました」と述べられているのは1990年代の伊藤修先生が60代後半あたりだと年譜から推察します。

私も書店で1997年頃に伊藤修著『目で見るPIAレーザー速効療法(腰痛編)』を見た記憶があり、これは天才治療家が鍼からレーザーに軸を移した頃であり、少なくとも鍼灸治療家にとっては「理解し難い」内容になってます。

1978年から1986年頃の42歳から50歳頃の伊藤修先生の治療は、実際を見てみたかったと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする