『薬草とともに生きる: インドネシアのジャムウ行商婦人と顧客 』
杉野好美 著
風響社 2024/4/10
杉野好美さんは2005年に高知大学医学部看護学科卒業、2011年からJICA(ジャイカ)で保健活動を行い、2015年にジャワ島の大学の伝統薬草療法に留学し、現在、京都大学大学院のアジア・アフリカ地域研究科の博士課程に在籍され、2026年に「第18回スミセイ女性研究者奨励賞」を受賞されました。
『ジャムゥ: インドネシアの伝統的治療薬 歴史と処法の解釈』(平河出版社1998)を書かれた東邦大学薬学部の高橋澄子教授が、残念ながら1996年に逝去され、以降、インドネシアのジャムウ研究者はいなかったと認識していますが、2024年に杉野さんが『薬草とともに生きる』を出版されて、日本では約30年ぶりに、この分野の情報がアップデートされたと感じています。
「ジャムウの歴史」では、ボロブドゥール遺跡の壁画からの歴史が詳しく書かれています。インドのヒンドゥー教、仏教、さらにイスラム教が混じりあって、現在のジャムウを形成しており、この混じり方は、日本の伝統医学に似ていると思います。
私は按摩マッサージ指圧師でもあり、インドネシアのバリ式マッサージや、ジャワ島などのジャワ式マッサージ、中国伝統医学由来のカッサ=ケロカンコイン・マッサージに興味があります。同書の59ページにインドネシア・カッサ、ケロカンの記述があります。ケロカンはマスッ・アンギンという風邪の引きかけの状態に使われます。
中国の刮痧(かっさ)は、ベトナムではカオヨーと呼ばれ、「風邪(Gio)」を「剃る(Cao)」という意味です。カンボジア語のコッ・クチョール (Koas Kjol)でも「風邪(Kjol)」を「剃る(Koas)」で同じです。
もともと中国の刮痧は小児の風邪の治療に銅貨が使われていました。東洋医学では、体表に衛気があり、衛気に邪気としての風邪が入って悪寒発熱となるので、カッサで邪気を追い出すという発想があります。先祖代々の中国伝統医学の先生によれば、中国では「銅貨・銅銭は邪気を払う」という文化があるそうです。
ジャワ式マッサージは、ジャワ島ジョグジャカルタの王宮が由来です。インドネシアは、もともとインド由来のヒンドゥ―教と、仏教の文化がありましたが、16世紀にイスラム化します。その際に、ヒンドゥー教徒たちはバリ島に移動し、バリ・ヒンドゥーとなりました。バリ島には、バリアンという呪医とバリアン・ウラットというマッサージ師がいます。バリアンはシャーマン・ヒーラーでもあり、黒魔術と白魔術があります。バリ式マッサージは、高級リゾートホテルがバリアン・ウラットを商業化したものです。
文化人類学者のグレゴリー・ベイトソンとマーガレット・ミード著の『バリ島人の性格: 写真による分析』や哲学者の中村雄二郎の『魔女ランダ考: 演劇的知とはなにか』でもわかるように、バリ島の文化は複雑です。多くの要素が入り混じったインドネシアにおけるインドネシア伝統医学の研究は長らく停滞していましたが、杉野さんの『薬草とともに生きる』によって再び動き出したと思いました。
Many thanks to サンティ for a beautiful featured image!






コメント