【BOOK】『パリ病院―1794~1848』

『パリ病院―1794~1848』
エルヴィン・ハインツ・アッカークネヒト (著),
館野之男 (著)
新思索社 (1978/5/1)


以下、227ページより引用。

中国の伝統的な二つの両方、鍼と灸が大流行した。
焼灼法の一種である灸は、カスパーによれば、ルー、ペルシによってくる病、結核、癌に推奨された。
鍼治療は1830年代に特にジュール・クロケが精力的に宣伝したこともあって、広く行われた。彼がこの技術に注目したのは友人ブレトノの示唆によるものである。他にはベルリオーズ、ペクラ、ハイム・ド・トゥール、ペレタン、モラン、サランディエル、ダンテク、ファブレ・パラプラートが鍼の推進者であった。


1816年に音楽家ベルリオーズの父、ルイ・ベルリオーズが頭痛の患者に鍼を行い、さらに電気鍼のアイディアを出しました。

1826年に外科医ジュール・クロケが『鍼の理論(Traité de l’Acupuncture)』を、1825年にクロケの弟子モランが『鍼のメモワール(Mémoire sur l’acupuncture)』を、1825年にジャン・バティスト・サルランディエールが『電気鍼、痛風、リウマチ、神経疾患の治療に関する回想録(Mémoires Sur l’Électro-Puncture, Traiter La Goutte, Les Rhumatismes Et Les Affections Nerveuses』を出版しました。

サルランディエールの文献には、日本の木村元真著 『鍼灸極秘抄』が図法師の絵とともにツボが図示されています。オランダから日本の長崎に来ていたオランダ人医師、イサーク・ティチングが持ち帰った文献を、友人であったドイツ人東洋学者、ユリウス・ハインリヒ・クラプロートから譲り受けました。クラプロートはロシアの依頼でモンゴルや満州を探検して、モンゴル語やウイグル語、満州語を研究し、1815年からフランスのパリに定住して教授をしていました。

電気鍼のアイディアは、音楽家ベルリオーズの父、ルイ・ベルリオーズが異種金属2本を使って最初に行いました。間中喜雄先生のイオンパンピング療法の先駆者です。イタリアのガルバーニの動物電気のアイディアを鍼に試したのです。

イタリアのルイジ・ガルバーニは、ボローニャ大学医学部の教授として、解剖したカエルを真鍮のフックで壁に固定してたまたま鉄のメスで触れたところ、カエルの脚が動いたところから動物電気、生物電気を発見しました。アレッサンドロ・ボルタがガルバーニ電気は異種金属の接触であることを証明して、亜鉛と銅という異種金属から人類最初の電池であるボルタ電池をつくりました。

ベルリオーズはこの知識で異種金属の鍼を2種類刺したのですが、おそらく「筋肉がピクッと動く」と思い込んでいたのだと思います。しかし筋肉は動かず、ボルタ電池によって鍼に通電するアイディアを本で書きました。このアイディアを使ったのがサルランディエールの電気鍼です。この1920年代のサルランディエールの電気鍼がデュシェンヌに受け継がれて、モーターポイントと電気生理学になっていきます。

さらに、フランスの偉大な生理学者、デュ・ボア・レイモンが1848年に動物電気を研究し、デンキウオの研究で博士号を取得します。動物の死体の筋肉に電気を流す実験を続けていたデュ・ボア・レイモンは、筋肉を動かす電気の強さを測定していました。生体に電気を流して電気の強さを測定して生体の損傷部位に流れる負傷電流を発見しました。わたしが愛用している間中喜雄先生のイオン・パンピング療法は、この負傷電流を除去するために開発されました。200年前のフランス医学を調べたら宝の山でした。


2022年
「何が起こっているのかを解明する:2つの電気生理学的現象の発見」
Figuring out what is happening: the discovery of two electrophysiological phenomena
William Bechtel
Hist Philos Life Sci. 2022 May 17;44(2):20.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9114097/

Many thanks to yeTis(Pixabay) for a beautiful featured image!

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