【BOOK】『知性の罠 なぜインテリが愚行を犯すのか』

『知性の罠 なぜインテリが愚行を犯すのか』
デビッド・ロブソン
日本経済新聞出版

この本のテーマは、「なぜ、知能の高い賢いヒトが愚かなことをするのか」「天才ばかりのチームは生産性が下がる」「優秀な人材を集めた組織が、なぜ逆に愚かになるのか」です。認知バイアスに関する最新の行動科学の知見を集めています。

賢く、社会的にも成功していて、正義感も強い「良いヒト」が、成功した後にトンデモ理論にハマるのをみるたびに、「なぜ、あれほどバカげた説を信じ込むのか」と、ずっと不思議に感じていました。そして本書は、彼らは賢く、成功してきたからこそ失敗するということを心理学の実験や実例から説明していきます。賢いからこそ間違える知性のワナが人間の認知のクセとして存在するということです。

第3章「専門家が判断ミスを犯す根本理由」では、FBIの指紋の専門家がとんでもないミスを犯した実例を分析しています。FBIの専門家は、ヨーロッパで起こった爆弾テロの犯人として、米国外に出たことがない男性を指紋だけを証拠に逮捕しました。スペイン警察によって冤罪であることがわかりましたが、有罪なら極刑の可能性もありました。

第3者委員会が、科学的な立場から「専門家も感情や差別により間違えることがある」という報告書を提出したところ、逆に指紋の専門家団体から「専門家は感情や差別に影響されない」と激怒した内容の抗議を受けました。「専門家であっても感情や差別により間違える」というファクトは心理学実験で何度も再現されているのですが。

集団的知能に関する第9章と第10章も興味深い内容でした。スポーツ分野で、天才や優秀な人を集めても「チーム内に才能がありすぎると、かえってパフォーマンスが下がる」「集団に優秀だが傲慢なメンバーがいると、集団的知能と繊細なメンバーの個人的知能の両方が悪影響を受ける」そうです。

知性のワナを避けるには無知の知や謙虚さ、オープンマインドなど伝統の知恵がカギになります。

第1部 知能の落とし穴――高IQ、教育、専門知識がバカを増幅する
第1章 IQ190以上の神童の平凡なる人生――知能の真実
第2章 天才はなぜエセ科学を信じるのか――「合理性障害」の危険性
第3章 専門家が判断ミスを犯す根本理由
第2部 賢いあなたが気をつけるべきこと
第4章 優れた判断力、知的謙虚さ、心の広さ
第5章 なぜ外国語で考えると合理的判断が下せるか――内省的思考
第6章 真実と噓とフェイクニュース
第3部 実りある学習法――「根拠に基づく知恵」が記憶の質を高める
第7章 なぜ賢い人は学ぶのが下手なのか――硬直マインドセット
第8章 努力に勝る天才なし――賢明な思考力を育む方法
第4部 知性ある組織の作り方
第9章 天才ばかりのチームは生産性が下がる
第10章 バカは野火のように広がる――組織が陥る「機能的愚鈍」

Thanks to grimlock for a beautiful featured image!

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