2024年12月12日 韓国のメディア『エコノタイムス』
「2025年のドナルド・トランプ大統領の代替医療研究に関する政策は何か?」
What are Donald Trump’s policies on alternative medicine research in 2025?
2024年の前半にヨーロッパの選挙で極右勢力が勝利した際に、フランスのマリーヌ・ル・ペンの国民連合やドイツのドイツのための選択肢などの医療政策をホームページで調べて驚愕したことがあります。医療政策に関する記述はどの政党ホームページにも存在するのですが、代替医療に関する政策は一行も書かれていませんでした。「移民・難民に医療を提供しない」という驚愕の政策のみが書かれていました。医療に関わる人間としては容認しがたい差別的で非人道的な価値観です。
第1次トランプ政権の代替医療政策は「悪くはなかった」印象です。例えば、H.R.6というオピオイド対策法案に署名しています。
2018年10月24日『ホワイトハウス・トランプ政権アーカイブ』
「トランプ大統領は、法律のH.R.6に署名した」
President Donald J. Trump Signed H.R. 6 into Law
この法案は、オピオイド対策として鍼、メディカルマッサージ、そして他の代替治療を評価しようとするものです。
以下、『エコノタイムス』から引用。
次期大統領ドナルド・トランプ氏は代替医療の研究を優先する物議を醸す政策アジェンダを発表し、政治と科学の分野で白熱した議論を巻き起こしている。ワシントンDCでの政策説明会で発表された2025年の取り組みはホメオパシー、鍼治療、ハーブ医療などの代替・補完療法の研究に多額の連邦資金を割り当てることを目指している。トランプ大統領は医療における選択の自由の必要性を強調し、アメリカ人は従来の医療以外の治療法も受けられるべきだと主張した。
トランプ大統領の提案では、アメリカ国立衛生研究所が代替医療と補完医療に特化した新しい部門を設立する。この構想はカイロプラクティック、中国伝統医学、ナチュロパシーなどの治療法の有効性を試験する臨床試験に資金を提供することを目的としている。トランプ大統領はまた民間部門による代替療法の研究に対する税制優遇措置も提案している。
アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)が既に存在して1998年から26年間も上記の補完代替医療の科学的検証という業務を行っているというのがファクトです。
1991年、アメリカ国立衛生研究所(NIH)に代替医療局(OAM)が設立されます。
1997年、NIHが鍼の効果には科学的根拠があると公式に声明を出しました。
1998年、OAMは国立補完代替医療センター(NCCAM)と改称されました。
2014年、アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)と改称されました。
第1次トランプ政権の2018年8月、ハーバード大学の鍼とファシャの研究者であるヘレン・ランジュバン教授がNCCIHの所長となりました。
2024年11月、トランプ次期大統領はNIH所長にスタンフォード大学の医師、ジェイ・バッタチャリアを指名しました。バッタチャリアは集団免疫の考え方からロックダウンとマスク着用に反対し、低リスクグループの制限解除を主張してWHOのテドロス事務局長と論争した人物ですが、ロックダウンについて私はバッタチャリアと同意見でした。そしてFDA長官にジョン・ホプキンス大学の外科医、マーティー・マカリーを指名しました。マーティー・マカリーはマスク着用賛成、成人へはワクチン接種賛成、ワクチン接種の義務化には反対という立場です。
トランプ政権の次期閣僚の医師たちの間でも、感染症対策についての見解は多様性があります。米国疾病予防管理センター(CDC)長官にはデイブ・ウェルドン下院議員を指名しました。NIHやFDA、CDCを統括する米国保健福祉省(HHS)の長官に指名されたロバート・ケネディ・ジュニアは、反ワクチンの立場のためメディアで議論を巻き起こしており、「メイク・アメリカ・ヘルシー・アゲイン(MAHA:Make America Healthy Again)」政策を掲げています。
2024年12月12日 CBSニュース
「アメリカを再び健康に(MAHA)とは何か。トランプとケネディ・ジュニアの幅広い政策について知っておくべきこと」
What is “Make America Healthy Again”? What to know about Trump and RFK Jr.’s wide-ranging platform
ケネディ氏は各省庁が大手食品・医薬品企業に同情的すぎると批判しており、省庁全体で多くの職員を入れ替えることでこの問題に対処しようとしている。
ケネディ氏は、保健福祉省と農務省の栄養学者全員を就任初日に解雇することを望んでいると述べた。
ケネディ氏は、トランプ大統領は米国の食糧供給から化学物質を排除するという同氏の計画に賛同しており、その計画には米国の農家による一般的な殺虫剤や除草剤の使用を全面的に廃止することも含まれていると述べた。
ケネディ氏は、ラウンドアップ・ブランドの除草剤に使用されているグリホサートが原因ではないかと疑っている。イタリアは2016年にグリホサートの使用制限を開始した。イタリアの決定はグリホサートががんリスクをもたらす可能性があるとの懸念からのものだったが、米国の一部の擁護団体も同様の懸念を表明している。
ケネディ氏はまた、加工食品を学校給食から直ちに排除すると約束し、低所得のアメリカ人に対する連邦政府の食糧支援金のうち、砂糖入り飲料や加工食品に充てられている額に不満を表明した。
米国の企業寄りの栄養学者たちは、ミシェル・オバマ夫人が「子どもの給食からジャンクフードをやめてヘルシーにしよう」という法律制定の運動を起こした際に「給食のピザはトマトケチャップがかかっているから野菜に分類される」という「ピザは野菜である」という詭弁を弄したことが記憶に新しいです。
ロバート・ケネディ・ジュニアが推奨しているのは「食は薬政策」だそうです。アメリカの子どもたちが食べる給食から加工食品と砂糖入り飲料を排除し、除草剤を禁止し、有権者にアピールする政策だと感じました。
以下、『CBSニュース』より引用。
この約束は、より健康的な生活習慣に対して医療制度がより多くの財政支援を提供することを求めてきた「食は薬」運動と重なる。「患者が糖尿病や肥満症を患っている場合、医師はジムの会員になることを勧め、良い食事を勧めるべきであり、公的医療保険は抗糖尿病薬や抗肥満薬同様にそれらの費用を負担できるべきだ」とケネディ氏は9月30日に語った。
ロバート・ケネディ・ジュニアのHHS長官の指名は議会で揉める可能性が高そうですし、政策が実行されるかどうかは不透明です。しかし、ワクチン政策はともかく、「食は薬政策」を含む多くの政策は、もし実行されたらアメリカの医療制度はかなり変化する可能性があります。次期トランプ政権が現時点で鍼など代替医療を重視する政策を掲げている以上、米国の医療政策が今後どのように推移していくかは注目だと思います。
Many thanks to 白つばき for a beautiful featured image!
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