ドライアイのエビデンス

 

2018年6月28日シンガポールの新聞『ストレイツタイムズ』
「鍼の新しいテクニックのおかげで家ではほとんど目は乾かない」
Hardly a dry eye in the house thanks to new acupuncture technique

 

以下、引用。

40歳から85歳の150人のドライアイ患者を50人ずつの3グループにわけて、第1グループは点眼と鍼、第2グループは点眼と漢方のみ、第3グルーゥは点眼のみに割り付けた。

30日に8回、20分の治療で点眼と鍼を受けたグループは最大の改善を示し、88パーセントの改善率だった。

鍼は足と手と顔に施術された。

結果はハイテク・デバイス・カメラと客観的に患者の角膜を測定できる診断器具が用いられて、さらにインタビューと質問用紙が使われ、副作用は観察されなかった。

この研究はシンガポール眼研究所(SERI)とシンガポール・チャンフア医学研究所の3年間にわたる共同研究であり、このプロジェクトは政府の健康省の3年間の中医学研究予算から29万ドルを受け取って資金調達された。

 

2000年にシンガポールで「中医学法2000」が出来て、2001年からは登録すれば中医師による鍼灸臨床が可能になりました。

2011年には中国政府とシンガポール政府が共同出資でシンガポールに中医学を専門とする福建シンガポール友好総合病院を設立しました。

2012年以降、毎年3百万シンガポールドルをシンガポール政府は中国伝統医学の研究に費やしています。

2013年にはシンガポール保健省、国立依存症マネージメント・サービスに鍼クリニックができました。

2017年にはシンガポール保健省は500万シンガポールドルを中国伝統医学の研究助成金として拠出することを決定しました。

 

ドライアイに関しては、2018年5月に韓国が肯定的なシステマティックレビューを発表しています。

2018年「ドライアイ・シンドロームに対する最適な鍼治療:システマティックレビュー」
Optimizing acupuncture treatment for dry eye syndrome: a systematic review.
Kim BH et al.
BMC Complement Altern Med. 2018 May 3;18(1):145. doi: 10.1186/s12906-018-2202-0.

結論:
鍼はドライアイ・シンドロームを治療するのに人工涙液よりも効果的であるが、高い異質性を示した。

このシステマティックレビューでは、攅竹(BL2)と承泣(ST1)を含む研究のほうが含まない研究よりも効果的であったことを指摘しています。
他の研究では、睛明(BL1)を推奨しています。
個人的にはドライアイには睛明(BL1)をよく使います。

 

2015年4月16日に中国北京の航空宇宙センター病院が発表したメタ・アナリシスも肯定的でした。

「鍼治療は、人工涙液よりもドライアイに効果的である:エビデンス・ベースド・オン・メタアナリシス」
Acupuncture therapy is more effective than artificial tears for dry eye syndrome: evidence based on a meta-analysis.
Yang L et al.
Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:143858.

 

2012年の韓国・東洋医学研究院のランダム化比較試験も肯定的です。

「ドライ・アイの鍼治療:アクティブ比較介入(人工涙液)とマルチセンター・ランダム化比較試験」
Acupuncture for the treatment of dry eye: a multicenter randomised controlled trial with active comparison intervention (artificial teardrops).
Kim TH et al.
PLoS One. 2012;7(5):e36638.

結論:鍼は中期的に人工涙液と比較してもドライアイ症候群に対して効果があるかもしれない。

 

中国語で「ドライアイ症候群」は「干眼症であり、中医学古典の明代、傅仁宇著、『審視瑶函』、別名『眼科大全』に収録されている「白涩」の範疇に入ります。

『審視瑶函』は和訳も出ています。

『審視瑶函』巻三、白痛
「不肿不赤,爽快不得,沙涩昏朦,名曰白涩,气分伏隐,脾肺湿热。此症南人俗呼白眼,其病不肿不赤,只是涩痛。乃气分隐伏之火,脾肺络湿热,秋天多患此,欲称稻芒赤目者,非也。桑白皮汤」

 

ドライアイ(干眼症)は中医学の白涩症のカテゴリーに入り、邪熱留恋、肺陰不足、脾胃湿熱が肝腎虚損におよび、陰血不足のため邪熱が阻絡し血気不通となるか、湿邪が阻滞し清気が昇らず陰血不足から陰虚で津液不足となり目が潤いをうしなって目がゴロゴロするというのが2017年の現代中医学鍼灸の分析です。

「针灸治疗干眼症研究进展」
薛研 赵耀东 元永金 马雪娇
《新中医》2017年 第8期 | 165-167页

干眼症属于中医学“白涩症”范畴。中医认为是由于邪热留恋,肺阴不足,脾胃湿热以及肝肾亏损、阴血不足引起邪热阻络、血气不通,或者湿邪阻遏、清气不升,或者阴血不足,最终导致阴虚津亏、目失濡养,以患者自觉眼内干涩不舒、瞬目频频为主要表现。针灸治疗除眼周局部取穴,以疏通经络气血、促进泪液分泌以外,应配合循经远端取穴,以滋阴生津、行气清热。
局部腧穴中以睛明为首选,睛明为手足太阳和足阳明之会,有明目功效,擅治目疾。
配穴中百会可提升阳气,神庭可安神定志,风池可清利头目,曲池清热降火,外关解表熄风,合谷通经活络,中脘补中益气,天枢理气通腑,气海培补元气,足三里扶正祛邪,三阴交健脾滋阴,太溪补肾益精,太冲疏肝明目。无烟雷火灸可行气通络、活血养血[3];扩张眼周血管,促进血液循环,从而缓解干眼症状。

 

 

 

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