2018/07/20 CareNet.com
「アロマターゼ阻害薬関連関節痛、鍼治療で軽減か?/JAMA」
以下、引用。
アロマターゼ阻害薬関連関節痛を有する閉経後早期乳がん患者において、鍼治療は、偽治療または待機リスト入りとした対照と比較して、6週時の関節痛を有意に改善した。ただし、観察された改善が臨床的に意義のあるものかは確実ではないという。米国・コロンビア大学医療センターのDawn L. Hershman氏らがアロマターゼ阻害薬関連関節痛に対する鍼治療の有効性を検証した無作為化試験の結果を報告した。筋骨格系症状は、アロマターゼ阻害薬の有害事象で最も多く、治療中断に至ることが少なくない。これまで複数の小規模研究で、鍼治療がアロマターゼ阻害薬関連関節症状を改善する可能性があることが示唆されていたが、いずれも単一施設で実施され症例数が少なく盲検化されていなかった。JAMA誌2018年7月10日号掲載の報告。
【米国の11施設で約230例を対象に鍼治療、偽治療、無治療の3群を比較】
研究グループは2012年3月~2017年2月に、米国の大学病院および臨床病院11施設で、閉経後早期乳がんと診断されアロマターゼ阻害薬を内服中で、簡易疼痛調査票(Brief Pain Inventory Worst Pain[BPI-WP]:0~10点、点数が高いほど疼痛が強い)で3点以上の疼痛を有する患者226例を登録し、鍼治療群(110例)、偽治療群(59例)および待機リスト対照群(57例)に、無作為に2対1対1の割合で割り付けた(待機リスト対照群は盲検化されていない)。鍼治療群および偽治療群では、最初の6週間は週2回計12回、次の6週間は週1回、鍼治療または偽治療を行った。待機リスト対照群では、無作為化後24週間は介入しなかった。24週時に全例に対し、52週目の診察までに使用できる鍼治療10回分の無料券を提供した。最終追跡期間は2017年9月5日。
主要評価項目は6週時のBPI-WPスコアで、線形回帰を用いてベースラインでの疼痛と層別因子で補正し両群を比較した。
【疼痛スコアは鍼治療群で有意に減少するも、他群と臨床的に意義のある差はなし】
226例の患者背景は、平均年齢60.7歳(SD 8.6)、白人が88%、ベースラインのBPI-WPスコアは6.6点(SD 1.5)で、206例(91.1%)が試験を完遂した。6週時の平均BPI-WPスコアは、鍼治療群で2.05点、偽治療群で1.07点、待機リスト対照群で0.99点減少した。補正後群間差は、鍼治療群と偽治療群で0.92点(95%信頼区間[CI]:0.20~1.65、p=0.01)、鍼治療群と待機リスト対照群で0.96点(95%CI:0.24~1.67、p=0.01)であり、いずれも鍼治療群の有意な減少が認められた。ただし、いずれも規定された臨床的に意義のある差(偽治療群および待機リスト対照群との群間差2点[SD 3.0])には達しなかった。また、事後解析の結果、臨床的に意義のある疼痛の改善(BPI-WPスコア2点以上減少)について6週時に同スコアを達成していた患者の割合は、鍼治療群58%、偽治療群33%、待機リスト対照群31%であった。
【ガン関連疼痛の鍼灸EBMの歴史】
タキサン系抗がん剤のパクリタキセル、白金プラチナ系抗がん剤のオキサリプラチン などの神経因性疼痛の鍼治療について、日本では多くの論文が発表されています。
また、乳がん患者に関してはアロマターゼ阻害薬の副作用による関節痛への鍼の効果や多発性骨髄腫の抗がん剤ボルテゾミブの副作用の末梢性神経障害への鍼の効果の研究も発表されています。
2007年にドイツのハイデルベルク中医学院の鍼師ザビーネ・シュレーダーさんが最初の論文を『ヨーロッパ神経学雑誌』に発表し、『がん化学療法の末梢性ニューロパシー(CIPN)』の鍼治療の研究は急激に学問的に発展した分野です。
2007年から2018年にかけてかなり多くの論文が出版されており、ついていくのがけっこう大変になってきました。
2007年
「鍼治療は、末梢性ニューロパシーの神経コンディションを改善する」
Acupuncture treatment improves nerve conduction in peripheral neuropathy.
Schröder S et al.
Eur J Neurol. 2007 Mar;14(3):276-81.
2008年
「がん化学療法による末梢神経障害に対する鍼通電療法の効果」
福田文彦et al, 『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 58(2008) No.3 531-531
※下肢の経穴5カ所、左右10カ所に鍼通電療法。
2009年
「がん化学療法による末梢神経障害に対する鍼通電療法の効果(第2報)—パクリタキセルによる末梢神経障害に対して」
福田文彦et al, 『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 59(2009) No.3 413-413
※下肢の経穴5カ所、左右10カ所に鍼通電療法。
2010年
「がん化学療法による末梢神経障害に対する鍼通電療法の効果(第3報)—白金製剤による末梢神経障害に対する1症例—」
久保春子、福田文彦et al,
『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 60(2010) No.3 572-572
※陽陵泉(GB34)ー懸鍾(GB39)、陰陵泉(SP9)ー三陰交(SP6)に鍼通電、太衝(LR3)に置針。
「がん化学療法による末梢神経障害に対する鍼通電療法の効果(第4報)臨床試験終了後のアンケート調査を含めた検討」
久保春子、福田文彦et al,
『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 60(2010) No.3 573-573
「パクリタキセルに伴う末梢神経障害に対する鍼刺激効果の検討」
久保春子、福田文彦et al,
『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 60(2010) No.3 573-573
※末梢血流増加+内因性鎮痛機構。
「多発性骨髄腫の化学療法による末梢神経障害に対する頭皮鍼治療及び耳介療法の効果」
西山比呂史, 黒木佳奈子, 南部隆, 福田悟, 森田茂穂, 高橋秀則
『慢性疼痛』 29(1): 139-143, 2010.
2011年
「抗癌剤の副作用(末梢神経障害)に対する鍼刺激の影響」
昭和大学医学部
『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 61(2011) No.3 261-261
※ラット。足三里30分1Hz。
「パクリタキセルによる末梢性ニューロパシーのラットに対して、電気鍼が産生する抗アロディニア・抗痛覚過敏(ハイパラルジージア)作用におけるオピオイド受容体拮抗薬の効果」
The effects of opioid receptor antagonists on electroacupuncture-produced anti-allodynia/hyperalgesia in rats with paclitaxel-evoked peripheral neuropathy.
Meng X,et al.
Brain Res. 2011 Sep 26;1414:58-65.
2012年
「Paclitaxel誘発性の末梢神経障害に対する鍼治療の有効性」
福田文彦et al,
『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 62(2012) No. S1 233-233
※陽陵泉(GB34)ー懸鍾(GB39)、陰陵泉(SP9)ー三陰交(SP6)に鍼通電、太衝(LR3)に置針。
「パクリタキセルによる末梢神経障害への温灸適応に関する研究-6名の事例分析から-」
梅岡京子、辻川真弓、大西和子
『三重看護学誌』 14. 55-66 (2012),
「パクリタキセルによる末梢神経障害に対する温灸の効果に関する検討」
『三重看護学誌』14(1), 67-79, 2012-03-15
2013年
「がん化学療法由来の末梢性神経障害に対する鍼の実験と臨床のシステマティック・レビュー」
A Systematic Review of Experimental and Clinical Acupuncture in Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy
Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:516916.
2013年7月の『エビデンス・ベースド・コンプリメンタリー・オルタナティブ・メディスン』に掲載された「がん化学療法由来の末梢性神経障害に対する鍼の実験と臨床のシステマティック・レビュー」は、この問題に関する総説論文となっています。
「がん化学療法による末梢神経障害に対する鍼治療 プレガバリンの併用が有効であった一症例」東京大学、小糸康治et al,粕谷大智
『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 63(2013) No. S1 123-123
※2Hz15分、陽陵泉(GB34)ー懸鍾(GB39)、陰陵泉(SP9)ー三陰交(SP6)、小海(SI8)ー合谷(LI4)。
「Oxaliplatin誘発性の末梢神経障害に対する鍼治療」
九州看護福祉大学、久保春子、
明治鍼灸大学、福田文彦、伊藤和憲
『全日本鍼灸学会雑誌』 Vol. 63(2013) No. S1 123-123
※陽陵泉(GB34)、懸鍾(GB39)、陰陵泉(SP9)、三陰交(SP6)に鍼通電療法。太衝(LR3)
「がんの化学療法の副作用による手のしびれの一例」
津田昌樹『医道の日本』 72(5): 141-143, 2013.
※接触鍼と温灸。
「がん患者に対する鍼治療(3)化学療法による末梢神経障害に対する鍼治療の実際」
小内愛、山口智
埼玉医科大学東洋医学センター
『医道の日本』Vol.82 No.11 2013 104-111
※置針術。
2014年
「アロマターゼ阻害薬使用に関連した関節痛への電気鍼のランダム化試験」
A randomised trial of electro-acupuncture for arthralgia related to aromatase inhibitor use
Jun J. Mao et al.
European Journal of Cancer
January 2014Volume 50, Issue 2, Pages 267–276
2015年
「マウスのパクリタキセルによる神経因性疼痛へのオピオイド・アドレナリン・メカニズムによる電気鍼の鎮痛効果」
Analgesic effect of electroacupuncture on paclitaxel-induced neuropathic pain via spinal opioidergic and adrenergic mechanisms in mice.
Choi JW et al.
Am J Chin Med. 2015;43(1):57-70.
2016年
「乳がんの早期ステージの女性のタキサンによる末梢性神経障害を予防する電気鍼の偽鍼対照パイロット・ランダム化比較試験」
Randomized sham-controlled pilot trial of weekly electro-acupuncture for the prevention of taxane-induced peripheral neuropathy in women with early stage breast cancer.
Greenlee H et al.
Breast Cancer Res Treat. 2016 Apr;156(3):453-64.
2017年3月26日『ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー・ケア』
「鍼は、ガン関連の痛みを減らすかについてのシステマティックレビューとメタ・アナリシス」
Systematic review and meta-analysis of acupuncture to reduce cancer-related pain.
Chiu HY,et al.
Eur J Cancer Care (Engl). 2017 Mar;26(2). doi: 10.1111/ecc.12457.
Epub 2016 Feb 7.
2018年7月4日「ガン化学療法による末梢神経ニューロパシーへの接触鍼の効果の光学試験:カラースペクトラムインフォメーションのよる日本伝統の漢方療法の統合検査」
Optical examination of the efficacy of contact needle therapy for chemotherapy-induced peripheral neuropathy: integration of inspection in Kampo therapy with color spectrum information
Artificial Life and Robotics pp 1–5
First Online: 04 July 2018
2018年7月10日『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』
「早期乳がんのアロマターゼ阻害薬関連関節痛への鍼と偽鍼とウェイトリストの効果比較:ランダム化比較試験」
Effect of Acupuncture vs Sham Acupuncture or Waitlist Control on Joint Pain Related to Aromatase Inhibitors Among Women With Early-Stage Breast Cancer: A Randomized Clinical Trial | Breast Cancer
JAMA. 2018;320(2):167-176. doi:10.1001/jama.2018.8907
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