2017年6月「アレルギー性鼻炎への熱敏灸治療の効果と腧穴熱敏化の法則の研究」
热敏灸治疗变应性鼻炎的临床疗效及其腧穴热敏化规律研究
林煜芬 卢健敏 苏燕娜 钟泽斌 张作丹
《针刺研究》 2017年06期
アレルギー性鼻炎の患者でもっとも熱敏穴が出現したのは、迎香、印堂、鼻通、上印堂、肺兪、神闕、上星、風池、蝶腭、大椎です。
蝶腭は李新吾教授が発見した翼口蓋神経節刺鍼の奇穴です。鼻通は上迎香という別名もあり、眼科専門の中医古典『銀海精微』に初出しています。鼻唇溝の上端で睛明の下になります。
熱敏化腧穴が最も出現した経絡は、督脈、手陽明大腸経、足太陽膀胱経です。
2016年の山西中医学院や2017年の浙江中医薬大学の研究でも督督脈、手陽明大腸経、足太陽膀胱経の頻度が高かったです。
2016年「鍼灸治療によるアレルギー性鼻炎の選穴の法則の検討」
针灸治疗变应性鼻炎的选穴规律探讨
虞旻珍 宣丽华 《山西中医学院学报》 2016年02期
※主要なツボは、経脈では手陽明大腸経・督脈・足太陽膀胱経が最も多かった。
2017年「アレルギー性鼻炎の鍼灸治療の経穴使用の法則の探求」
针灸治疗变应性鼻炎的用穴规律探析
赵丽娇 尹靖颖 孙慧芳 时晨 王盼盼 刘颖
《浙江中医药大学学报》 2017年07期
※アレルギー性鼻炎の針灸治療では、十二経脈でツボを選べたのは足太陽膀胱経、督脈、手陽明大腸経が高い頻度であった。
2016年の広西中医薬大学の研究はユニークで六経弁証を用いています。
2016年「111例のアレルギー性鼻炎の六経弁証による研究」
111例变应性鼻炎的六经辨证研究
李芸 《广西中医药大学》 2016年
※太阴病49例(44.14%)、
少阴病19例(17.12%)、
太阴少阴合病13例(11.71%)、
太阳病8例(7.21%)、
少阳病5例(4.50%)、
厥阴病3例(2.70%)、
阳明病1例(0.90%)、
太阳少阴病4例(3.60%)、
太阳阳明病2例(1.80%)、
太阳太阴病3例(2.70%)、
太阳少阴病4例(3.60%)
太陰病が最も多いというのは意外ですが、「脾陽虚=胃寒」が多いのではないでしょうか。少陰病は、日本漢方でも少陰病の方剤である麻黄附子細辛湯が使われています。アレルギー性鼻炎の臨床では複数の経絡が損傷している印象があります。
中国の論文で最もユニークだったのは広西中医薬大学です。
2016年「アレルギー性鼻炎と臓腑経脈の虚実の相関関係の調査研究」
过敏性鼻炎相关脏腑经脉及其虚实调查研究
邓凯 《广西中医药大学》 2016年
根結標本気街理論に基づき、「根、溜、注、入」の上入穴と寸口脈診で経絡の虚実を判定していきます。
【根、溜、注、入】
足太陽:至陰(BL67)・京骨(BL64)・崑崙(BL60)・天柱(BL10)
足少陽:足竅陰(GB44)、丘墟(GB40)、陽輔(GB38)、天容(SI17)
足陽明:厲兌(ST45)、衝陽(ST42)、足三里(ST36)、人迎(ST9)
手太陽:少沢(SI1)、陽谷(SI5)、小海(SI8)、天窓(SI16)、
手少陽:関衝(TE1)、陽池(TE4)、支溝(TE6)、天ゆう(TE16)
手陽明:商陽(LI1)、合谷(LI4)、陽溪(LI5)、扶突(LI18)
寸口脈診と経穴の触診の結果、
胆経虚が35例で70%、
胆経実が15例で30%を占めて、
肝経実が5例で10%、
膀胱経虚が38例で72%、
腎経虚が34例で68%、
大腸経虚が29例で58%、
肺経虚が31例で62%、
胃経虚が24例で48%、
脾経虚が17例で34%、
三焦経虚が32例で64%、
でした。
結論として、アレルギー性鼻炎は鼻の胃経や大腸経だけに限局されず、少陽胆経・太陽膀胱経・少陽三焦経なども関係しています。伝統的な中医学理論では臓腑の肺・脾・腎が関連していると考えられていますが、さらに肝臓にも関連しています。特に肝経の実証もあります。この切診・触診による経絡の分析は、わたしの実感と最も近いです。
2016年の北京中医薬大学の研究者は、アレルギー性鼻炎の主要な治療経脈として手陽明大腸経・足陽明胃経・足太陽膀胱経・足少陽胆経を挙げています。
2016年「アレルギー性鼻炎の経絡診察の法則の研究」
过敏性鼻炎的经络诊察规律性研究
李在荣 《北京中医药大学》 2016年
この論文は北京中医薬大学の王居易教授の経絡診察の影響を受けているようです。
王居易先生は経絡経穴を「審(=詳しく調べる)」「接(=触れる)」「循(=沿う)」「捫(=なでる)」「按(=押す)」して、「察経」「弁経」「選経」「択穴」します。
触診では、
1.滑動=皮膚をすべらせる、皮膚温をみる。
2.按揉=皮下の陥凹、隆起、緊張、弛緩をみる。
3.点圧=穴下の圧痛をみる。
4.推圧=体重をかけて酸・脹・鈍・麻の感覚や深部の反応を診る。
などを使い分けます。
『霊枢』の刺節真邪に「鍼を用いるものは先ず経絡の虚実を診察し、経絡を切し、循し、按じてこれを弾し、その応動するものをみて、その後でこれを治療する」とあります。
経絡弁証の際に、切、循、捫、按により経絡診察するのは正しい方向性だと思います。
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