「針治療が著効した心臓神経症の1例」
岡 孝和, 松浦 達雄
『日本東洋医学雑誌』1988 年 39 巻 1 号 p. 29-32
以下、引用。
心臓神経症は心理的因子の関与が大きいとされる疾患であるが針治療が著効することが少なくない。9年間胸部不快感、胸痛を訴えた56歳の女性が2回の針治療で胸部不快感、胸痛が消失した。第5、6胸椎棘突起に過敏点を認め、X線撮影で同部位での椎関関節可動性が制限されていることが確められた。そこで第5、6胸椎夾脊穴に針治療を行ったところ、自覚症状、過敏点ともに消失。可動性も回復した。
この56歳女性は主訴は胸部圧迫感と胸痛。脈診は沈細脈。舌診は舌質淡紅、舌苔は白苔です。労作で悪化しないので心気虚とは言えないと思います。
第5、第6胸椎棘突起に過敏点・圧痛点があり、心兪(BL15)の高さにある第5・第6胸椎棘突起に鍼を刺鍼したところ9年間続いていた胸部圧迫感と胸痛が消失しました。これは弁証論治ではどのようになるのでしょうか。
一般的には、心臓神経症は心虚胆怯、心血不足,阴虚火旺、血瘀痰阻などに分類されるようです。しかし、わたしは単なる胸部の気滞、第5胸椎の高さのトリガーポイント関連症状とシンプルに考えています。心気虚や心血虚などの虚証なら、実際に補気補血には時間がかかります。1回で治らないと思います。
岡先生は1989年に心臓神経症の患者29例の背部圧痛点を調べます。厥陰兪(BL14)から督兪(BL16)や胸骨左縁の歩廊(KI22)や神封(KI23)、霊墟(KI24)にも圧痛点が出ていますが、やはり第5胸椎棘突起の心兪(BL15)の高さが一番多かったということです。
「いわゆる心臓神経症患者における胸背部過敏点の臨床的意義の検討 -特に診断的意義に関して-」
岡 孝和『日本東洋医学雑誌』1989 年 40 巻 2 号 p. 103-108
「いわゆる心臓神経症患者における胸背部過敏点の臨床的意義の検討 特に針治療の効果に関して」
岡 孝和,『日本東洋医学雑誌』1990 年 41 巻 1 号 p. 55-59
そして心臓神経症の胸背部圧痛点に鍼をすると心臓神経症の症状が消失します。これは十二刺の偶刺による心痺の鍼治療に相当すると思います。
《黄帝内经灵枢·官针》:“偶刺者,以手直心若背,直痛所,一刺前,一刺后,以治心痹,刺此者,傍针之也。”
以下の2016年の中国論文も経筋の圧痛点(トリガーポイント)に刺しています。
2016年「心臓神経症の鍼灸診療治療の構想」
心脏神经官能症针灸诊治思路
谢占清 王玉双 李晓磊
《中国中医药信息杂志》 2016年03期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTotal-XXYY201603033.htm
(オープンアクセスPDFファイルで全文が無料で読めます)
コメント