【新型コロナウイルス】複眼のレンズによるエビデンス統合

 

2018年『ネーチャー』
「エビデンス統合をより政策に役立たせるための4つの原則」
Four principles to make evidence synthesis more useful for policy.
Vallance P,et al.
Nature. 2018 Jun;558(7710):361-364. doi: 10.1038/d41586-018-05414-4.


科学雑誌『ネーチャー』にパトリック・ヴァランス卿が共同著者として投稿した「エビデンスに基づく政策形成」に関する論文です。

パトリック・ヴァランス先生はイギリスの新型コロナウイルス政策を発表したイギリス政府最高科学顧問であり、イギリス政府科学局を率いているリーダーです。鍼灸の治効機序と最も関係が深い「一酸化窒素による血管拡張メカニズムの解明」が主な業績の医学部教授であり、グラクソスミスクラインの創薬部長も務めました。

今回のイギリスの公衆衛生政策の特徴は、医学だけでなく、経済や社会、行動科学など多分野の200人以上の複数分野の専門家がエビデンスに基づく政策作成にかかわっているということです。

 

以下、引用。

政策開発は複雑で、何度もコンテストされるべきである。選択肢はいくつものレンズから検討されるべきだ。エビデンスは重要なレンズであるが一つではない。例えば利害関係者は異なる個人的・政治的価値観を持っているかもしれない。

異なる価値観を持つ複数の専門家による検討と議論が必要なのです。

4つの原則とは包括的、厳格さ、透明性、アクセスしやすさです。

 

以下、引用。

究極的にはエビデンス統合がエキサイティングな知的チャレンジングであり、ハイステータスで尊敬される活動として研究者に認識され、未来研究をアイデンティファイする土台を補強する作業であるという文化シフトが必要とされる。

 

今回の新型コロナウイルスの防疫では、ジョンホプキンス大学とビルゲイツ財団がおこなった公衆衛生学の演習の予測通り、各国政府は、渡航禁止、貿易禁止、国境封鎖、社会的距離政策をおこない、株式市場の暴落と世界金融危機をまねきました。シミュレーション演習で予測されたとおりの社会的大惨事となりました。医療崩壊を防ぐための善意が人権を制限し、差別を助長し、社会パニックを引き起こし、経済と社会を破壊しました。全国の学校閉鎖によって、子どもたちはハイリスクである祖母や祖父にあずけられて濃厚接触したり、学童保育でより密集度の高い状況で濃厚接触したり、北海道では看護師さんが子どもをみるためにクリニックが運営できなくなりクリニックの閉鎖を招くなど、善意で意図した目的と正反対の結果を招きました。

 

医療ヘルスケア・プロフェッショナルといっても、ウイルス学者と感染症の専門臨床医と公衆衛生学者ではものの見方や視点や価値観がまったく異なる可能性が高いです。だからこそ複数の専門家によるエビデンス統合が必要になります。

 

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