中医学の「絡病学」と 世界的大富豪の呉以嶺教授

 

 

 
2020年10月25日『中国新聞網』
「中医絡病学は海外の中医薬の協力を推進する」
 
 
日本の『中医臨床』が2008年に早くも「難治性疾患と絡病学」を特集していたのは慧眼だと思います。『中医臨床』が2008年にインタビューしていた河北医科大学医薬研究院の呉以嶺教授は、2008年に中国人民政治協商会議の委員となり、開発された活血通絡による不整脈の中成薬「参松养心胶囊」は国家基本薬物に収載され、2020年4月に呉以嶺教授は世界の富豪1415位、中国のフォーブス富豪リストの32位にランクされた大富豪となりました。資産は25億ドルといわれています。
 
他の記事でも、中国共産党と習近平の新経済政策「双循環」において、絡病学と不整脈の中成薬「参松养心胶囊」が重視されていることがとりあげられています。
 
 
2020年10月26日『中国経済時報』
「国内と国際の『双循環』は中医薬発展の新局面をきりひらく」
 
 
米中新冷戦の激化から、中国共産党政府と習近平は14億人の内需を開発する双循環政策を発表しています。ウイグル人やチベット人の弾圧、香港の民主化運動から米中新冷戦が激化しました。中国の吉林省には120万人の朝鮮族が住んでいます。延辺朝鮮族自治区にある延辺大学は中国の朝鮮族の教育のために建てられた大学で、中国国内で朝鮮伝統医学が教えられていました。しかし、2020年9月から朝鮮族の学校ではハングルが使われなくなり、中国語のみが使われるようになりました。
 
 
内モンゴル自治区でモンゴル語が教えられなくなり、吉林省で朝鮮語・ハングルが禁止されるのはウイグル人に中国語を強制したり、香港で広東語ではなく北京語を使わせる政策とリンクしているようです。新経済政策、双循環を成功させることでチベット人やウイグル人を弾圧し、内蒙古のモンゴル人や吉林省の朝鮮族の言葉と文化を奪い、香港の民主化運動を弾圧し、西側世界から批判されても無視することができます。
 
中国人民政治協商委員の呉以嶺教授は中国政府の一員であり、その経済的成功は現代中医学の象徴です。学問は政治とは関係なく、呉以嶺先生の絡病理論は「糖尿病イコール消渇」という中医学理論を過去のものにしたという意味でも革新的でした。
 
 
2008年「中国の糖尿病に関する中国医学研究の現状と未来」 
仝 小林 (中国中医科学院広安門医院副院長)
 
 
以下、引用。
 
現在の糖尿病は昔の消渇という語で概括しているものとは違うし、多くの医師が現代の2型糖尿病は古代の消渇と完全に同等ではなく、陰虚燥熱理論で現代の2型糖尿病を総括するのは偏っているようだ。 そこで「消渇≠糖尿病」であることを提起し、「消渇」「消渇病」と糖尿病の病名の範疇に境界を定めた。
 
伝統的な陰虚燥熱理論、およびそれに関連する三消理論はもはや現代の糖尿病には完全に適用されなくなっている。
 
オ血からの治療 
唐容川がかつてオ血致渇を提起したが、現代の医師はオ血致病理論と血流変学、毛細血管学理論を関連付けて、オ血内生が糖尿病の重要な病機であることを肯定し、ここに毛細血管性血管腫学説などオ血致病理論が基本的に提起された。
 
3.絡病理論の形成および発展
実験研究が糖尿病初期の血管合併症がまだはっきりとは現れない段階では、活血通絡(血流をよくして出血などを早く吸収して体外に排出すること)にすることで腎臓および網膜の病変の発生、進行を明らかに遅らせることができることを示している[46-47]。そこで絡の早期治療、全程通絡 (経絡の気の流れ全体をよくすること)を基本思想とする絡病理論が次第に形成され、完成に向かって絶えず発展してきた。絡病理論の重要性に基づいて、糖尿病は糖絡病と改称されるかもしれない。
 
 
 
 
2008年頃には絡病理論が「糖尿病イコール消渇」という中医学理論を過去のものとしました。12年も前の話です。持論ですが、「糖尿病イコール消渇」の「糖尿病の上消・中消・下消の三消理論」は現実にまったく合いません。絡病から考えて、オ血として分析しなおすべきだと思います。絡病オ血という分析なら、糖尿病患者の三大合併症である糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症を説明しやすくなると思います。
 
 
 

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