子宮脱=陰挺
軽度の子宮脱の患者さんについて相談を受けたので備忘録です。
西洋医学の子宮脱は中国語では「子宫脱垂」であり、中国伝統医学の「陰挺(いんてい)」です。以下の2007年の『英国医師会雑誌』の論文は総合的でエビデンスに基づいています。
2007年「子宮脱」
Uterine prolapse
Anjum Doshani,
BMJ. 2007 Oct 20; 335(7624): 819–823.
女性の生涯有病率は11パーセントで閉経後の女性におこりやすいです。子宮脱の治療はケーゲル体操 、ペッサリー、外科手術ですが、コクランレビューでいずれもエビデンスが無いのに驚きました。
中医学古典には『諸病源候論』や『景岳全書』に記述があります。
《诸病源候论》妇人杂病诸候四(凡五十论)
百十七、阴挺出下脱候
胞络伤损,子脏虚冷,气下冲,则令阴挺出,谓之下脱。亦有因产而用力偃气,而阴下脱者。
诊其少阴脉浮动,浮则为虚,动则为悸,故令下脱也。
『諸病源候論』 の陰挺は子宮の虚寒です。
《景岳全书》阴挺(七七)妇人阴中突出如菌如芝,或挺出数寸,谓之阴挺。此或因胞络伤损,或因分娩过劳,或因郁热下坠,或因气虚下脱,大都此证当以升补元气、固涩真阴为主。如阴虚滑脱者,宜固阴煎、秘元煎。气虚陷下者,补中益气汤、十全大补汤。因分娩过劳气陷者,寿脾煎、归脾汤。郁热下坠者,龙胆泻肝汤、加味逍遥散。
気虚下陥に補中益気湯です。同時に気虚だけでなく、欝熱を子宮脱の病因として指摘しているのが『景岳全書』です。以下は現代中医学の弁証分類です。
辨证分型6.3.1 阴挺·脾虚气陷证是指脾气素弱,或劳产损伤,中气下陷,以子宫脱垂,或阴道前后壁膨出,劳则加剧,卧则消失,小腹坠胀,面白少华,四肢乏力,少气懒言,带下色白,量多质稀,舌淡,苔薄,脉细弱为常见症的阴挺证候[6.3.2 阴挺·肾气不固证是指肾气亏虚,固摄失职,以子宫脱垂,或阴道前后壁膨出,少腹下坠,腰脊酸楚,头晕目眩,耳鸣,神疲乏力,小便频数,舌淡,苔薄,脉沉细为常见症的阴挺证候。6.3.3 阴挺·湿热下注证是指肝经湿热,下注胞宫,以子宫脱出日久,或阴道前后壁膨出,表面溃烂,黄水淋漓或小便灼热,或口干口苦,舌红,苔黄或黄腻,脉滑数为常见症的阴挺证候。
他には帯脈失約や衝任虚損が挙げられます。
3.1 病因病机多由气虚下陷,带脉失约,冲任虚损,或多产、难产、产时用力过度,产后过早参加重体力劳动等,损伤胞络及肾气,而使胞宫失于维系所致。2017年「最近20年の子宮脱の鍼灸治療の研究進展」近20年子宫脱垂针灸治疗的研究进展毛越 江花《内蒙古中医药》 2017年04期https://www.ixueshu.com/…/be6c862ae782c141142043079e6a7…
上記の論文が最もまとまっていました。
西洋医学からの子宮脱をまず理解します。古典の中国伝統医学の理論における陰挺の理論を理解します。現代中医学における鍼灸治療の研究の現況を理解します。これらの知識は、臨床の参考にはなります。
経外奇穴の「子宮(EX-CA1)」は『備急千金要方』に初出した奇穴で、中極(CV3)穴の外3寸です。経外奇穴の「提託」は1970年の『常用新医疗法手册』に初出した新穴であり、関元(CV4)穴の外4寸です。子宮と神経支配です。交感神経のT10-L2の下腹神経は子宮体部と子宮頚部に分布します。副交感神経S2-S4の骨盤内臓神経は腟部と子宮頚部に分布します。
佐藤昭夫著
『体性-自律神経反射の生理学 (物理療法,鍼灸,手技療法の理論)』
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