2026年5月19日『ディスカバー』
「氷河期のネアンデルタール人は、初期の薬として『白樺タール(Birch Tar)』を使用していた可能性がある」
Ice Age Neanderthals May Have Used Birch Tar as Early Medicine
タールとは黒褐色のネバネバです。お灸をすると、お灸した皮膚にネバネバしたヤニがつき、これはモグサ・タールです。
以下、引用。
PLOS One誌に掲載された新たな研究によると、ネアンデルタール人の遺跡で頻繁に発見される白樺タールは、有害な細菌の増殖を抑制する効果があり、傷の治療における潜在的な役割が示唆されている。
その効果を検証するため、研究者たちは白樺タールを、感染症の原因となることが多い細菌に曝露させた。複数のサンプルにおいて、この物質は細菌の増殖を遅らせ、明確な抗菌作用を示した。
その生成過程を理解するため、研究者たちは数万年前から用いられていた方法を用いて、この物質を再現した。ある方法では、白樺の樹皮を穴の中で加熱してタールを抽出した。別の方法では、蒸気を近くの石の表面に凝縮させ、利用可能な残留物を残した。どちらの方法も、シンプルな材料と制御された熱に依存している。
この効果は、北欧やカナダの一部の先住民コミュニティで記録されている使用法と一致する。これらの地域では、白樺タールが古くから切り傷や皮膚疾患の治療に用いられてきた。この物質の特性は接着性にとどまらず、感染のリスクが常態化していた状況下で保護効果を発揮する。
2026年3月18日
「実験的に製造された白樺タールの抗菌特性と更新世におけるその薬効」
Antibacterial properties of experimentally produced birch tar and its medicinal affordances in the Pleistocene
Tjaark Siemssen
PLOS One
Published: March 18, 2026
白樺タール(バーチ・タール)はロシアの外科医ヴィシェネフスキーがヴィシェネフスキー外用薬として皮膚潰瘍や火傷に使っていた記録がありますが、20万年前のネアンデルタール人も白樺タールを皮膚病や切り傷に使っていたようです。
石炭からとれるコールタールは発がん性がありますが、植物を加熱してとれる植物タールは抗菌作用や抗ウイルス作用があります。
松からとれる松ヤニ(パイン・タール)からは、蒸留してテレピン油がとれ、昔の小説などを読むと、薬用に使われていました。いまでも大正製薬のヴィックス ヴェポラッブにはテレピン油が配合されています。
松ヤニは、現在は野球のバットを振るときのすべり止めに使われていますが、昔は皮膚科などの薬用で使われていました。
2016年 オーストラリア皮膚科雑誌
「松ヤニ:歴史、特性、および一般的な皮膚疾患の治療薬としての使用法」
Topical pine tar: History, properties and use as a treatment for common skin conditions
Tanya M Barnes
Australas J Dermatol. 2016 Jan 20;58(2):80–85.
お灸をすると、皮膚につくお灸のヤニ、モグサ・タールには抗菌作用や抗ウイルス作用、抗腫瘍作用があります。
イボはパピローマウイルスが感染して、皮膚の表皮のケラチノサイトを増殖させる過形成によって起こります。帝京大学医学部の西谷郁子先生は1983年に灸の研究で博士号を取得し、灸のヤニを皮膚に塗布するだけでもイボに効果があることを報告されています。イボへの焦灼灸のメカニズムの一つであり重要研究だと思います。
先日、研究熱心な看護師であり鍼灸師でもある方から焦灼灸の質問を受け、1980年代の西谷郁子博士の灸研究に言及したところ、知らなかったことが分かり、驚きました。1990年代に教育を受けた私にとっては重要な研究だったからです。今の『はりきゅう理論』の教科書は、教育に使うには問題があると改めて感じました。
1987年
「灸およびモグサ燃焼生成物による疣贅治験2症例報告」
西谷 郁子
『全日本鍼灸学会雑誌』1987 年 37 巻 3 号 p. 188-193
1983年西谷郁子
「灸の抗腫瘍作用の検討」
『帝京医学雑誌』巻 6, 号 1, p. 95-99, 発行日 1983-03
1983年西谷郁子
「灸の過酸化脂質低下作用(1)」
『帝京医学雑誌』巻 6, 号 1, p. 79-87, 発行日 1983-03
1983年西谷郁子
「灸の過酸化脂質低下作用(2) その機構についての実験的考察」
『帝京医学雑誌』巻 6, 号 1, p. 89-94, 発行日 1983-03
1984年西谷郁子
「きゅうの過酸化脂質低下作用 III モグサ・タール成分による皮膚過酸化物の低下」
『帝京医学雑誌』巻 7, 号 3, p. 263-267, 発行日 1984-09
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