2012年『鍼灸臨床雑誌』
「上腕二頭筋長頭腱炎の針刺とリハビリ手法の組み合わせによる臨床効果の観察」
针刺配合康复手法治疗肱二头肌长头腱腱鞘炎疗效观察
孙永 《针灸临床杂志》 2012年04期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZJLC201204005.htm
西洋医学の上腕二頭筋長頭腱炎は「肱二头肌长头肌腱炎」です。この論文では労損、または風寒湿による痺証とみなし、結節間溝の圧痛と上腕二頭筋の抵抗試験(おそらくヤーガソンテストなど)陽性から診断しています。そして、患側の陰陵泉穴に捻転瀉法を結節間溝の圧痛が軽減するまで行います。次に局所の按摩を加えます。これは実際に使える治療法だと思います。
結節間溝のあたりは手太陰経筋に属し、同じ太陰経に属する足太陰経筋に関連する陰陵泉(SP9)の瀉法を用いるという理論が書かれています。これは中医学鍼灸の標準化には役立つ論文だと思われます。
西洋医学的には、以下の2009年論文は標準的です。
2009年
「上腕二頭筋長頭腱炎と腱障害の診断と治療」
Diagnosis and Treatment of Biceps Tendinitis and Tendinosis
CATHERINE A. CHURGAY, MD,
Am Fam Physician. 2009 Sep 1;80(5):470-476.
http://www.aafp.org/afp/2009/0901/p470.html
2010年『アメリカ整形外科アカデミー雑誌』
「上腕二頭筋長頭腱の腱障害:診断とマネージメント」
Long Head of the Biceps Tendinopathy: Diagnosis and Management
Nho, Shane J.et al.
Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons:
November 2010 – Volume 18 – Issue 11 – p 645–656
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21041799
以下、引用。
初期の単独の上腕二頭筋長頭腱炎は若く、オーバーヘッド動作のある野球・ソフトボール・バレーボールの選手に多い。
上腕二頭筋長頭腱炎の最も一般的な理学検査法は、結節間溝の腱の触診によって引き起こされる圧痛である。いくつかの『上腕二頭筋長頭腱炎』を病理学から同定するテストが行われてきた。しかしながら、特異的検査や検査の組み合わせで信頼性がポジティブで上腕二頭筋長頭腱炎を予測できるような試験の存在は報告されていない。
ヤーガソンテストは肘を90°屈曲して抵抗をかけて回内することで、上腕二頭筋長頭の前に圧痛や抵抗を感じる。スピードテストは上腕骨を前方に屈曲し肘を進展して、抵抗をかけて前方屈曲して結節間溝に痛みがあれば陽性である。
このヤーガソンテストとスピードテストは上腕二頭筋長頭腱炎に対して両方、特異度があるが感度は無い。
1931年にロバート・モースリー・ヤーガソンが骨関節外科ジャーナルに「回外サイン」として発表しました。
1931年ヤーガソン著『回外サイン』
SUPINATION SIGN
R. M. YERGASON
J Bone Joint Surg Am, 1931 Jan; 13 (1): 160 -160
https://journals.lww.com/…/19…/13010/SUPINATION_SIGN.23.aspx
2011年の研究では、ヤーガソンテストの感度は32パーセント、特異度は78パーセントになります。これは感度が低すぎます。
2011年「上腕二頭筋長頭腱炎の診断における筋骨格超音波と理学検査法の比較」
A comparison of physical examinations with musculoskeletal ultrasound in the diagnosis of biceps long head tendinitis.
Chen HS1, Ultrasound Med Biol. 2011 Sep;37(9):1392-8. doi: 10.1016/j.ultrasmedbio.2011.05.842. Epub 2011 Jul 20.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21767902
上記の論文では、スピードテストの感度は63パーセント、特異度は58パーセントになります。
これは特異度が低いです。臨床的には組み合わせて使い、身体診察で信頼できるのは結節間溝の圧痛だけだと思います。
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