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【BOOK】『第4の水の相』


2012年 レオン・チャイトー
「2012年3月バンクーバーでの第3回国際ファッシャ学術研究会議(FRC3)」
Selected reflections of the third Fascia Research Conference (FRC3), Vancouver BC, March 2012
Leon Chaitow
J Bodyw Mov Ther. 2012 Jul;16(3):271-274.

以下、引用。


個人的にもっとも興味深かった基調講演はジェラルド・ポラックによる『水のシークレット・ライフE=H2O』です。


これは、シビれました・・・。

国際ファッシャ学術会議の記録を読んでいて、わたしにとってのピークは、この第3回のジェラルド・ポラックの基調講演です。

ジェラルド・ポラックはワシントン大学の物理学・バイオエンジアリングの教授です。

水は
(1)固体(Solid)
(2)液体(Liquid)
(3)気体(Vapor)
の3相があります。

ジェラルド・ポラックは、2006年に水の、固体と液体の中間である「水の第4相」、物理学におけるエクスクルージョン・ゾーンを発見しました。これは「水滴は、なぜ水滴の形を保てるのか」という物理学の研究です。


2006年ジェラルド・ポラック
『コロイドとインターフェース・サイエンスの進歩』
「表面サーフェスと界面水: 親水性の表面が長距離に影響を与えるというエビデンス」
Surfaces and interfacial water: evidence that hydrophilic surfaces have long-range impact
Gerald H Pollack et al.
Advances in Colloid and Interface Science
Volume 127, Issue 1, 23 November 2006, Pages 19-27

水は第4相では液体と固体の中間の性質を持ち、フラクタル構造となり電気を帯びます。コロイド、粘性を持つゼリー状のゲルの研究です。
ジェラルド・ポラックのTEDにおける24分の講義は、本当にみることをお勧めします。



ジャン・クロード・キンバルトー博士の映画に出てくるファッシャのゼリー状のコラーゲン線維には、ネバネバした水が水滴となっていました。
ジェラルド・ポラックによれば人体の7割は水であり、その7割の水は電気を帯びた第4相の水なのだそうです。


2020年ジェラルド・ポラック著 東川恭子(翻訳)
『第4の水の相』
ナチュラルスピリット (2020/6/14)


2013年 Gerald H. Pollack
「第4の水の相:固体・液体・気体を超えて」
The Fourth Phase of Water: Beyond Solid, Liquid, and Vapor
Ebner & Sons (2013/5/1)

以下、引用。

ポラック博士の報告によれば、固体・液体・気体のスリー・フェーズを超えた「第4フェーズ」が確認された。
この第4相の水は電気充電され、反対側の水も充電され、バッテリーの電流をつくりだす。


これは個人的にも超重要情報です。わたしはファッシャの電気的側面にこそ注目しているからです。

物理学の世界に圧電効果があります。樹脂の化石である琥珀は静電気の特性があり、こすると静電気を生じるのでギリシャ語で琥珀はエレクトロンと呼ばれていました。これが電気(electricity)の英語の語源です。ギリシャ語の「ピエゾ」は、「押す(press)」という意味です。ピエゾ電流とは圧力で生じる電流です。

圧力は電気に転換されます。ライターは指での圧力が圧電効果で電気に転換されて火花が散ります。調理用ガスのツマミを回す圧力も圧電効果でピエゾ電気に転換されて火花が散ります。圧力は圧電効果をうみ、引っ張り力は逆圧電効果で電気をうみます。

そして人体内では骨のリモデリング形成に圧電効果が関連しています。これは1953年―1955年に日本の京都府立医科大学の保田岩夫先生と理化学研究所の深田 栄一先生が世界で最初に発見されました。宇宙空間で過ごすと、運動不足で骨がスカスカになり、逆に骨折しても動くことで骨が強くなるのは圧電効果による骨芽細胞への影響と骨のリモデリング形成のためです。

深田栄一先生は1964年にアキレス腱など腱のコラーゲンにも圧電効果があることを発見されます。圧電効果と関連するのはコラーゲンなのです。そして、骨芽細胞もコラーゲンも腱もファッシャなのです。


ジャン・クロード・キンバルトーの映画に出てくるゼリー状のコラーゲン線維についたネバネバした水は電気を帯びた第4相の水ですが、そのコラーゲンそのものも圧電効果を持ちます。筋肉や腱や骨など運動器を「押す」ことと「引っ張る」ことはともにピエゾ電流をうみ、それが骨や腱をリモデリング・再形成していくのです。

ちなみに理化学研究所は圧電効果を利用して歩行者が板の上を歩く圧力と振動で発電する圧電発電機を2022年に発明しています。この圧電発電機と同じように、人間は筋肉と骨を動かすことで発電しているのです。

では、手技療法の指圧とストレッチ、あるいは運動療法のときに、あるいは鍼の旋撚術をおこなっているとき、ファッシャでは電気的に何が起こっているのでしょうか。現時点では誰もわからないのです。

2021年にデビッド・ジュリアスはTRPV1の発見でノーベル医学賞を受賞しました。TRPV1は歪みや引っ張り、電気や温度を感受し、鍼と灸の刺激を神経に伝達するものです。

2021年デビッド・ジュリアスと同時にノーベル医学賞を受賞したのは、アーデム・パタプティアンであり、圧力を感知するメカノレセプター「ピエゾ1」「ピエゾ2」の発見でした。

メカノレセプター、ピエゾは皮膚の繊細な触覚の研究から皮膚の歪み・圧力を検知するレセプターとして2010年に最初に発見されました。

1953年 日本の保田岩夫が骨の圧電効果を発見。
1997年 デビッド・ジュリアスがTRPV1を発見。
2005年 ジェラルド・ポラックが水の第4相で体内の水が帯電してコロイドになっていることを発見。
2007年 ジャン・クロード・ギンバルトーが第1回国際ファッシャ会議でファッシャ映画を公開。
2010年 アーデム・バタプティアンが触覚の本体である圧力レセプター、PIEZOを発見。
2012年 ジェラルド・ポラックが第3回国際ファッシャ会議で水の第4相の基調講演をおこなう。
2021年 デビッド・ジュリアスとアーデム・バタプティアンがノーベル医学賞を受賞。


結合組織ファッシャで圧力や引っ張り力により電気的に何が起こっているのかの解明は始まったばかりで、誰も答えを知らないのです。

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