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【BOOK】『いのちのレジリエンス 漢方とブリーフセラピーを精神科治療に活かす』

 

いのちのレジリエンス 漢方とブリーフセラピーを精神科治療に活かす
 
 
日本の精神病院の歴史として、愛知県岡崎市の現在の羽栗病院である、室町時代の羽栗の灸寺のことを知りませんでした。
 
1394年、光明山順因寺(羽栗の灸寺)で灸と加味帰脾湯による精神病の治療がはじまりました。
 
 
「灸寺・羽栗病院訪問記」
岡田 靖雄(精神科医)
『日本医史学雑誌』 36 (4), p401-411, 1990-10
 
 
灸は大抒、心兪、胃兪、三焦兪、地五会などのようです。
EMDR、TFT(思考場療法)、臨床動作法、マインドフルネス、オープンダイアローグなど、最新の精神療法がキーワードとして頻出し、『神々の沈黙: 意識の誕生と文明の興亡』のジュリアン・ジェインズや健康生成論のアーロン・アントノフスキーも出てきます。
 
神々の沈黙意識の誕生と文明の興亡[ジュリアン・ジェインズ]
 
 
全般性不安障害の患者さんに対して、苓桂朮甘湯とTFT(思考場療法)の処方など、症例は非常にクリエイティブです。
特に勉強になったのは、239ページの磯貝希久子先生の提唱したセラピーの3ステージです。
 
 
1 訪問段階:
不本意ながらセラピーに来ている段階
 
2 準備段階:
クライエントは自らセラピーに来ているが自分から変化を起こそうという意識はない
 
3 創造段階:
クライエントが自ら変化を起こそうという意志を持ち、セラピーに積極的である段階のクライエントと治療者の関係性
 
 
精神科医の臨床では、1の「訪問段階」のビジターという「いやいや来ている状態」はけっこうあるようです。鍼灸でも親や友人に強く勧められて「鍼灸なんて信じていないけれど、親や友人にいわれて来た」というステージの方はたしかにおられます。
 
 
2の「準備段階」でいきなり本質的な問題解決を提案すると、不機嫌になることがあり、来院しなくなることもありました。わたしは、このステージの患者さんには慰安レベルでも来院・施術を継続していただけることだけで感謝を伝え、気持ちの良い施術で施術中に眠ってもらったりしながらチャンスを待つようになりました。患者本人に解決の意志がないのに、空回りすると自分が消耗します。
 
3の「創造段階」にいたってはじめて、患者さん本人が主人公として本質的な問題解決のステージに進めると思います。
 
 
この3ステージの理論は、自分がうまく伝え切れていなかったことを明確に言語化するものでした。この理論を知っただけでも、この本を読んで良かったと思いました。この本は臨床経験を積んだ方にこそ参考になる部分が多いと思います。
 
 
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