彭静山(ほうせいざん)先生の『眼鍼療法』遼寧科学技術出版社1990年11月です。
彭静山先生の経歴を調べると、15歳で父親を亡くし、貧しさのため中医に弟子入りしてもお金を払えないので70個しか師から経穴を学べなかったそうです。42歳から再び針灸を研究し、名医となりましたが文化大革命で紅衛兵に殴られて右耳が聞こえなくなり、左耳も難聴になり、問診ができなくなります。それでも獄中で古典を読み、問診に頼らずに診断できる眼診を開発します。
『眼鍼療法』には1974年に胆道回虫症の患者の胆兪に刺して鎮痛した時に患者の胆区に鮮紅色の血管を発見し、右眼の胆区に刺鍼して著効を得たことから研究に入ったエピソードが書かれています(注意!この右胆区は、現在の眼鍼の右胆区と場所が違います)。1987年10月と1988年6月には来日されています。
邵輝先生が北京中医学院の学生だったころ、遼寧省から彭静山先生がいらして学生に実技を見せていたとき、突然、一人の女性が「わたしの苦しみを救って欲しい」と教室に入ってこられたそうです。学生たちは驚きました。その女性は子供を白血病で失い、それ以来、正気を失って病院の待合室に住みつき、物乞いをして暮らしてきたことを学生全員が知っていたからです。しかし、 彭静山先生は長い間、お風呂も入っていないその女性に非常に優しく、落ち着いて対応されたそうです。学生たちは「こんな難しい患者が突然、入ってきて、治療できるんだろうか」と半信半疑で見ていたそうです。しかし、 彭静山先生が刺鍼した次の日には、病院に住みついていた女性は正気を取り戻し、故郷に帰って行ったそうです。彭静山先生が75歳くらいの時の話です。おそらく苦難に満ちた人生が彭静山先生の人格を磨いたのです。これこそ、わたしが昔、心から憧れて、尊敬した老中医のはなしです。彭静山著、『鍼灸秘験』(1985年)も素晴らしい文献です。
『眼鍼療法』には『銀海精微』や明代、傅仁宇著、『審視揺函』、明代、王肯堂著、1602年の『証治准縄』などの五輪八廓学説が研究されています。これを基礎に眼鍼の八区十三穴が解説されているのです。
ようやく、自分がきちんと『眼鍼療法』や『鍼灸秘験』を読めるかと思うと感無量です。眼鍼は邵輝先生から教えていただいたエピソードによる彭静山先生への個人的尊敬の念がなければ、全く研究する気になれなかったと思います。
眼针疗法病案选
彭静山
《辽宁中医杂志》 1977年02期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-LNZY197702020.htm
眼针疗法
彭静山 《中国针灸》 1988年06期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE198806015.htm
眼针治疗疾病种类及疗效的文献分析
《光明中医》2017年20期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-GMZY201720063.htm
※眼针治疗疾病文献报道数量排序为中风、痛症、眩晕、面瘫、失眠等。占文献总数的74.23%。
中国のデータベースでひたすら眼鍼の論文を調べました。1番得意なのは中風(脳卒中)と痛症のようです。
眼针治疗急性腰扭伤的临床应用
符文彬
《北京中医药大学学报》 1996年01期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-JZYB601.012.htm
※取穴:选用眼针双膀胱区为主。腰部正中痛者加肾区,腰部转侧受限或腰部及下肢外侧牵涉痛加双胆区,腰痛不能俯仰者加双肝区。
眼针疗法治疗腰痛120例
韩育斌 高娅伟
《陕西中医》 1989年04期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-SXZY198904040.htm
※针刺与配穴方法以双眼下焦区为主穴,急性腰痛配双眼肝胆区穴;慢性腰痛配双眼上焦区和肾区穴。施术时,可用特制眼针在眼球周围,眼眶边缘0.66厘米处沿皮下按辨证先后取穴,
眼针疗法治疗外伤性腰痛35例
于喜安 姜丽波
《中国针灸》 1996年01期
http://www.cnki.com.cn/Article/CJFDTOTAL-ZGZE601.020.htm
※眼针以中、下焦区为主,配合肾、膀胱区,
眼鍼の腰痛の論文を調べたら、全てが違う配穴なのでビックリしました。彭静山先生は左右の下焦を使われていました。これは一筋縄ではいかないので自己治療から検証します。
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