2020年3月17日『センター・フォー・エビデンス・ベースド・メディスン(CEBМ)』
「非接触おでこ体温計の正確さ」
Accuracy of strip-like forehead thermometers
以下、引用。
もし末梢体温計を使うなら10人中4人の発熱した子どもを検出できない。末梢体温計は臨床デシジョン・メーキング意思決定に用いるべきではない。もし代替手段がなければ最低でもプラスマイナス1.5度の誤差があるとみなし、反復して計測する。
非接触おでこ体温計は使いやすいが、直腸温度や腋窩温度ほどの正確性はない。
非接触おでこ体温計の感度は35-50パーセントといわれています。コインを投げて表裏で決めるのと同じ程度の正確さです。
2020年4月2日『チェックアップニュースルーム』
「7種類の異なるタイプの体温計と、どの体温を信じたら良いの?」
7 Types of Thermometers and to what Degree You Should Trust Them
非接触おでこ体温計:非接触体温計の研究は多くはないが正確さは35-50パーセントといわれている。どういう意味かというと、もし子どもが熱が出て触りたくないときはコインを投げて表なら発熱で裏なら発熱していないと決めたら良いのです(それくらい信用できない)。
実は、EBМ診断学を知れば知るほど体温の迷宮に入り込みます。以下は世界五大医学雑誌『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』のシステマティックレビューです。
2015年「末梢体温計の計測体温:システマティックレビューとメタ・アナリシス」
Accuracy of peripheral thermometers for estimating temperature: a systematic review and meta-analysis.
Niven DJ,et al.
Ann Intern Med. 2015 Nov 17;163(10):768-77. doi: 10.7326/M15-1150
【結論】末梢体温計は臨床的に許容できる範囲の正確さがないため臨床的な決定に影響するべきではない。
エビデンスを検討していくと、小児科分野のデジタル体温計の中で信頼できるのは鼓膜体温計のみのようです。
直腸温度は37.5-38.3℃です。口腔温度は37.2-37.7℃です。腋窩温度は難問です。ハリソン内科学には午前が37.2℃で、午後が37.7℃と書かれているそうです。歴史的には1851年にドイツのカール・ブンダーリッヒが2万5千人の腋窩体温を入手し、36.2-37.5℃が正常体温であると発表しました。一般的な医学の教科書には37.0℃と書かれていますが、既にEBМの観点から激論が続いています。
2020年1月24日『メディカルトリビューン』
『37℃は間違い?平均体温に新常識 米国では19世紀以降、低下傾向が続く』
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0124524007/
以下、引用。
19世紀に米国で確立された「平均体温は37℃」という常識が揺らいでいる。米・ Stanford UniversityのMyroslava Protsiv氏らが現代の米国人における平均体温は37℃よりも低く、1800年代以降低下し続けていることが明らかになったとElife(2020; 9: e49555)に報告した。ヒトの体温は多くの人が思っているほど高くなく、平均体温はおよそ37℃という説は誤りとしている。
東洋医学では『景岳全書』のいわゆる十問歌で「一に寒熱を問い、二に汗を問う」と歌われています。西洋医学の体温と東洋医学の寒熱はまったく異なる概念なのですが、探求すると面白い部分が多いです。
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