平均体温の低下傾向

 

2020年1月24日『メディカルトリビューン』
『37℃は間違い?平均体温に新常識 米国では19世紀以降、低下傾向が続く』

 

以下、引用。

19世紀に米国で確立された「平均体温は37℃」という常識が揺らいでいる。米・ Stanford UniversityのMyroslava Protsiv氏らが現代の米国人における平均体温は37℃よりも低く、1800年代以降低下し続けていることが明らかになったとElife(2020; 9: e49555)に報告した。ヒトの体温は多くの人が思っているほど高くなく、平均体温はおよそ37℃という説は誤りとしている。

Protsiv氏らによると、米国人における平均体温の低下は代謝率または消費エネルギー量の低下によるものと考えられるという。これらの低下は集団全体における炎症の減少が原因であると推定されており、共同研究者である同大学のJulie Parsonnet氏は「炎症は代謝の促進を通じて体温を上昇させるさまざまな種類の蛋白質とサイトカインを産生する」と述べている。

つまり、過去200年で達成された医学の進歩や衛生状態の改善、食糧供給および生活水準の向上などにより人が体内で炎症を起こす機会が減ったことが体温の低下につながっているという。

さらに冷暖房器具の開発により、一定の温度で快適な生活を送れるようになったことも代謝率の低下に関与していると考えられるとしている。

 

冷暖房器具の開発で代謝率が低下し、体温が低下しているというのは、まさに日本の東洋医学者が「冷え症」の説明に使ってきたロジックです。

 

2020年1月7日「産業革命以降のアメリカの体温の低下」
Decreasing human body temperature in the United States since the Industrial Revolution
Myroslava Protsiv,et al.
eLife. 2020; 9: e49555.
Published online 2020 Jan 7.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6946399/

 

上記の論文のディスカッションは非常に刺激的で、アスピリンなどの抗炎症剤の投与が関係しているのではないかと指摘しています。また、冷暖房を指摘しています。

 

日本でも農村医学の若月俊一先生が「冷えの研究」をされていて、非常に示唆的でした。

『 「冷え」の研究 (第1報)』
若月 俊一, et al.『日本農村医学雑誌』1958 年 6 巻 3 号 p. 31-46

 

1950年代の長野県の農家の室温は、屋外の温度と同じくらいだったそうです。

私がかつて神戸の大学で非常勤講師をした際に授業中に質問したら、10代の女子大学生の体温は35℃くらいでした。教育分野では、個人的に尊敬する日本体育大学の正木健雄教授による子どもの体温研究があります。正木健雄先生は、子どもの「姿勢異常=せぼねグニャ問題」と体調異常の関係を最初に指摘した体育学者です。

『子どもの”からだのおかしさ”に関する保育・教育現場の実感 : 「子どものからだの調査2010」の結果を基に』
正木健雄 et al.
『日本体育大学紀要』41巻1号 (2011.9)

 

正木健雄先生は1990年代に「子どもの体温調節機能がおかしい」と指摘されました。

特集2 正木健雄さんが語る「どうなっている?子どものからだ 」(1) 恒温動物になりきれていない?!

ただ、信頼性の低いデジタル体温計が普及したのは何年くらいなのでしょうか。「体温の低下」問題は東洋医学関係者には重要だと思います。

 

 

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