2015年11月9日『日経メディカル』
『JAMA誌から:急性腰痛治療の基本はNSAIDsの単剤投与:筋弛緩薬やオピオイド配合剤を併用しても転帰の向上なし、米のランダム化比較試験で判明』
日本の腰痛の臨床で一番出されている「NSAID鎮痛薬プラス筋弛緩薬」の組み合わせ処方の検討です。
以下、引用。
救急部門を受診した急性腰痛患者に非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)のナプロキセン(商品名:ナイキサン)に加えて筋弛緩薬やオピオイドとアセトアミノフェンの配合剤を投与しても、1週間後の機能的回復度はナプロキセン単剤の場合と変わらないことが米国で行われた二重盲検ランダム化比較試験から明らかになった。米Albert Einstein College of MedicineのBenjamin W. Friedman氏らがJAMA誌2015年10月20日号に報告した。
米国では毎年250万人を超える腰痛患者が救急部門を受診している。急性腰痛の治療には通常、NSAIDsやアセトアミノフェン、オピオイド、筋弛緩薬が単剤または併用で処方される。救急部門では特に複数の薬剤が用いられる頻度が高い。しかし、薬剤を併用するメリットについて調べた研究では一貫した結果が得られていなかった。
そこで著者らは10日間のNSAIDs投与とNSAIDsに筋弛緩薬またはオピオイド・アセトアミノフェン配合剤を追加した場合の疼痛と機能の回復への影響を調べるランダム化比較試験を実施。発症から2週間以内の非外傷性で非神経根性の腰痛患者323人を登録し、ランダムに
(1)NSAIDs+プラセボ群(107人、平均年齢39歳、男性50%)、
(2)NSAIDs+筋弛緩薬群(108人、38歳、58%)、
(3)NSAIDs+オピオイド配合剤群(108人、39歳、44%)──
の3群に割り付けて1週間後の転帰を比較した。その結果、1週間後のRMDQスコアは全ての群で改善が認められたが、群間の有意差は認められないことが判明。NSAIDsに筋弛緩薬やオピオイド配合剤を追加投与してもRMDQスコアの改善幅が有意に向上はしないことが明らかになった。
有害事象はオキシコドン・アセトアミノフェン配合剤を併用した群に多く発生し、43%に有害事象が見られた。プラセボ併用群における有害事象発生率は21%、筋弛緩薬併用群は33%で、プラセボ併用群を基準にすると筋弛緩薬やオピオイド配合剤における有害事象発生率は有意に多かった。
日本の腰痛臨床ではロキソニンなどのNSAID(非ステロイド系鎮痛剤)に加えて筋弛緩薬としてデパス(エチゾラム)やミオナール(エペリゾン)を使うことが多いです。しかし、『JAMA(アメリカ医師会雑誌)』の2015年の論文(※2)ではNSAIDに筋弛緩薬やオピオイド配合剤を加えてもNSAID単剤使用と効果は変わらないことが報告されました。
2003年の筋弛緩薬単独の腰痛への効果を調べたコクラン・システマティックレビュー(※1)では、「筋弛緩薬は腰痛に対してプラセボと比較した効果はあるものの副作用が強い」「70パーセントの人に眠気やめまいなどの有害事象があった」「たとえ1週間の短い投薬期間でも依存性のリスクがあった」「筋弛緩薬の種類は違っていても効果は同程度だった」としています。
腰痛に対して日本でNSAID単独使用をあまり見ることはなく、「NSAIDプラス筋弛緩薬プラス胃腸薬」という組み合わせが多いです。
※1:2003年コクラン・システマティックレビュー
「非特異的腰痛への筋弛緩薬:コクラン共同計画のフレームワークによるシステマティックレビュー」
Muscle relaxants for nonspecific low back pain: a systematic review within the framework of the cochrane collaboration.
van Tulder MW et al.
Spine (Phila Pa 1976). 2003 Sep 1;28(17):1978-92.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12973146
【結論】
筋弛緩薬は非特異的腰痛のマネージメントに効果的であるが、有害作用があるために注意して使用しなければならない。
※2:2015年8月『JAMA』の論文
「ナプロキセンと、シクロベンザプリン、オキシコドン+アセトアミノフェンまたはプラセボによる急性腰痛の治療:ランダム化比較試験」
Naproxen With Cyclobenzaprine, Oxycodone/Acetaminophen, or Placebo for Treating Acute Low Back Pain:A Randomized Clinical Trial
Benjamin W. Friedman, et al.
JAMA. 2015;314(15):1572-1580.
http://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2463257
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