周術期鍼

2019年4月15日フランス
シャモニー・モンブラン地域病院麻酔科のベノワ・ファナラ先生
「耳鍼によるプロポフォール誘導量の減少効果:迷走神経と副交感神経刺激は薬物による静脈内誘導に替わることができるのか?」
Effect of Auricular Acupuncture on Propofol Induction Dose: Could Vagus Nerve and Parasympathetic Stimulation Replace Intravenous Co-Induction Agents?
Benoît Fanara,et al.
Med Acupunct. 2019 ‪Apr 1‬; 31(2): 103–108.
Published online 2019 ‪Apr 15.‬
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6484352/

以下、引用。

このように耳甲介は迷走神経に支配されており、耳介鍼は神経を刺激することで副交感神経を刺激する方法である。最近、多くの研究者が異なる方法で迷走神経刺激を記述しており、反復性てんかん、うつ、恐怖、不安、疼痛、消化管の炎症性疾患などの様々な状態の治療の新たな方法の可能性を提示している。

【結論】
外科手術前の耳鍼は迷走神経刺激を通じてプロポフォール麻酔量を臨床的に重要な副作用なしに減らすことを助けた。これは文献で報告された最初のものである。

迷走神経および副交感神経システムを耳鍼で刺激することは周術期の介入として確実な方法である。

使用された耳穴はフランス耳介療法の耳穴で

(0) Point Zero(ポイント・ゼロ)
(1) Solar plexus(太陽神経叢)
(2) Sacrum(仙骨)
(3) Shen Men(神門)
(4) Sympathique point(交感)
(5) Thalamus(視床)
(6) Asthma-sedative(喘息鎮静)
(7) Brainsstem(脳幹)
(8) Cervical(頚椎)
(9) Heart(心)

の9穴です。

「周術期の鍼」という言葉は、ウクライナ出身でドイツのグライフスヴァルド医科大学麻酔科の教授であるタラス・ウシシェンコ先生が最初に使い始めました。

2014年7月ウシシェンコ著
「周術期の鍼:なぜ、われわれを使おうとしないのか?」
Perioperative acupuncture: why are we not using it?
Usichenko TI, Streitberger K.
Acupunct Med. 2014 Jun;32(3):212-4. doi: 10.1136/acupmed-2014-010580. Epub 2014 ‪Apr 28.‬
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24777617

2017年にウシシェンコ教授は経皮性耳介迷走神経電気刺激こそが耳鍼の鎮痛効果メカニズムではないかと示唆する論文を発表されています。

2017年ウシシェンコ「経皮性耳介電気迷走神経刺激は、耳鍼の鎮痛効果メカニズムなのかも知れない」
Transcutaneous auricular vagal nerve stimulation (taVNS) might be a mechanism behind the analgesic effects of auricular acupuncture.
Usichenko T,et al.
Brain Stimul. 2017 Nov – Dec;10(6):1042-1044. doi: 10.1016/j.brs.2017.07.013. Epub 2017 Aug 2
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28803834

以下、引用。

【結果】
疼痛治療に使われる20穴の耳穴のうち15穴が迷走神経の耳の枝(ABVN)の支配下であった。

【結論】
臨床データと経皮性耳介迷走神経刺激の実験による神経パスウェイの解剖の発見により、耳鍼の鎮痛効果は迷走神経の耳の枝によって説明できるかもしれない。

2018年にウシシェンコ教授は婦人科外科手術の術前の不安をやわらげるための耳鍼の比較試験を発表しました。

2018年「外来婦人科外科手術の術前の不安への耳鍼:ランダム化していない前向きコントロール試験」
Auricular acupuncture for treatment of preoperative anxiety in patients scheduled for ambulatory gynaecological surgery: a prospective controlled investigation with a non-randomised arm.
Usichenko TI et al.
Acupunct Med. 2018 Aug;36(4):222-227. doi: 10.1136/acupmed-2017-011456. Epub 2018 Jul 9.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29986900

使用した耳穴は、MA-IC1(耳の肺), MA-TF1(耳の神門), MA-SC(耳の腎), MA-AH7(耳の交感)、 MA-T(耳の副腎=腎上腺)です。

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