【医道の日本】解剖学から見た『解剖生理に基づいた深層筋への鍼治療』に対する感想と意見

 

 

医道の日本2019年7月号(身体の「連動」で考える下肢症状へのアプローチ)
解剖学から見た『解剖生理に基づいた深層筋への鍼治療』に対する感想と意見
尾崎朋文 et al.
『医道の日本』2019年7月号、109-113

 

非常に有意義な意見と論争だと思います。これは、2018年11月から2019年6月にかけて、二天堂鍼灸院、炎の鍼灸師☆養成講座中野保先生が連載されました。中野保先生は行岡鍼灸専門学校卒業後、北京堂の浅野周先生に師事されたそうです。

 

第1回 大腰筋刺鍼
中野保
医道の日本 77(11): 94-99, 2018.

第2回 夾脊刺鍼
中野保
医道の日本 77(12): 123-129, 2018.

第3回 頚部刺鍼
中野保
医道の日本 78(1): 180-186, 2019.

第4回 関節治療
中野保
医道の日本 78(4): 104-110, 2019.

第5回 四肢のツボの運用編
中野保
医道の日本 78(6): 112-117, 2019.

 

それに対して、(公社)全日本鍼灸学会学術研究部安全性委員会委員の新原寿志先生が安全性に対してコメントを寄せました。

 

「解剖生理に基づいた深層筋への鍼治療」に対する意見と感想
新原寿志
(公社)全日本鍼灸学会学術研究部安全性委員会委員
医道の日本 78(4): 111-113, 2019.

 

鍼が胸鎖乳突筋を貫通し、迷走神経内に血液が流れ込んで患者が死亡した症例は重要だと思いました。これは日本の症例です。

 

2015年「鍼により、迷走神経刺激がおこった検視解剖初見」
An autopsy case of vagus nerve stimulation following acupuncture.
Watanabe M et al.
Leg Med (Tokyo). 2015 Mar;17(2):120-2. doi: 10.1016/j.legalmed.2014.11.001. Epub 2014 ‪Nov 11.‬
https://daneshyari.com/article/preview/103498.pdf
(オープンアクセスPDFファイル)

 

新原先生の4月号の指摘に対し、5月号で中野先生が指摘への謝辞を述べられ(立派で尊敬できる内容でした)、さらに尾崎朋文先生が問題点を指摘されたのが今回です。

 

後頭下筋刺鍼に関して中野保先生は2寸を推奨していますが、尾崎朋文先生グループは疑問を呈しています。唖門(哑门)、天柱(BL10)、風池(GB20)、完骨(GB12)の深度については私も同意見でした。

 

「刺鍼の安全性についての局所解剖学的検討 遺体解剖,および生体でのMRI画像より見たあ門穴・天柱穴への刺鍼の安全な方向と深度について」
尾崎朋文et al.
『医道の日本』1995年6月号12-23ページ

 

また、椎骨動脈近傍の刺鍼のリスクもプロフェッショナルなら知っておくべきだと思います。

 

「中頸神経節並びに椎骨動脈神経節近傍への刺鍼に関する解剖学的検討」
尾崎 朋文, 北村 清一郎, 森 俊豪, 竹下 イキ子, 西崎 泰清, 上島 幸枝, 巽 哲男, 合田 光男, 堺 章
全日本鍼灸学会雑誌1989 年 39 巻 2 号 p. 185-194
https://www.jstage.jst.go.jp/…/…/39/2/39_2_185/_pdf/-char/ja

 

胸膜頂付近も最近、実技を指導していて基礎知識が欠けているのに驚いたことがありました。繰り返し、メディカルマーカーでツボと胸膜頂のイメージングを書いていただきました。

 

「頸部における胸膜頂の体表投影部位に関する解剖学的研究」
上島 幸枝, 北村 清一郎, 巽 哲男, 合田 光男, 永瀬 佳孝, 尾崎 朋文, 森 俊豪, 松岡 憲二, 金田 正徳, 竹下 イキ子, 西崎 泰清, 堺 章
全日本鍼灸学会雑誌 1989 年 39 巻 2 号 p. 212-220

 

「頸部における胸膜頂の体表投影部位に関する解剖学的研究 (第II報)
胸鎖乳突筋, 鎖骨, 頸部諸経穴 (気舎, 欠盆, 水突, 天鼎) との関連」
上島 幸枝, 北村 清一郎, 巽 哲男, 合田 光男, 尾崎 朋文, 森 俊豪, 松岡 憲二, 金田 正徳, 竹下 イキ子, 西崎 泰清, 熊本 賢三
全日本鍼灸学会雑誌1994 年 44 巻 4 号 p. 317-328

 

これは真摯な論争であり、読んでいて参考文献を調べなおしました。このような論争ができる現在の『医道の日本』は読む価値が高いと思いました。

 

医道の日本2019年7月号(身体の「連動」で考える下肢症状へのアプローチ)

 

 

 

 

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