日本伝統漢方の腹診「心下痞硬(中カン痞満)」と「地震後めまい症候群」

「東日本大震災後の揺れ感に対する治療経験—半夏厚朴湯を中心に—」
木村 容子 et al.
『日本東洋医学雑誌』Vol. 63 (2012) No. 1 第63巻 第1号 2012年 p. 37-40

2011年の東日本大震災の地震後めまい症候群の患者さんは、腹診で心下痞硬(しんかひこう)を持っていることが多く、15例中の12例で心下痞硬の患者さん半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が著効したという報告です。

半夏厚朴湯はノドの詰まり感である梅核気の特効薬として知られていますが、この12例のなかでノドの詰まり感がある方は1例だけで不安感は強かったようです。半夏厚朴湯は去痰と降気理気の漢方処方です。

そしてこの論文でも引用されているように江戸時代の名医、和田東郭(わだ・とうかく)は半夏厚朴湯を『蕉窓方意解(しょうそうほういかい)』の中で「按ずるに此方(半夏厚朴湯は)、中カン痞満手を以て按ずるに、心下満上み胸中に迫り、気舒暢せず鬱悶多慮の症に用ゆべし」
と述べています。

任脈の中カン穴からさらに上の心下部が詰まって気滞を起こしている、ウツや考え過ぎの状態に半夏厚朴湯に用いるというのです。

実は、江戸時代の和田東郭以降の多くの腹診を行う漢方医たちが中カンあたりのツカエ(中カン痞満)を半夏厚朴湯の腹証だとしています。

「半夏厚朴湯証の腹候についてー特に中カン痞満についての検討ー」
堀野 雅子『日本東洋医学雑誌』Vol. 56 (2005) No. 5 P 801-804

また、地震後めまい症候群の15例中2例は回転性のめまいや胃腸の虚弱感があり、心下部振水音があり、去痰の半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)が著効したと報告されています。

15例中の14例が去痰の漢方で改善し、心下の詰まり感や心下部振水音があったというのは興味深いです!

心下部の痰飲が精神症状やめまいを引き起こすことは、針灸臨床でもしょっちゅう経験します。

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※1:『「地震後めまい症候群」に関する研究』
野村泰之、et al.『日本大学医学部総合医学研究所紀要』 Volume 2 (2014)

クリックして2014_007.pdfにアクセス


※2:『芸予地震後に生じためまい, 不安症状に著効した五苓散使用の2例』
竹尾重紀: 日東洋心身医研 17: 33-37, 2002

クリックしてtoyo_17_k_07.pdfにアクセス


※3:「地震後めまい症候群」
野村 泰之et al.
Equilibrium Research『めまい平衡医学』
Vol. 73 (2014) No. 3 p. 167-173
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/73/3/73_167/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/…/63/1/63_37/_article/-char/ja/

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