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【MOVIE】『あまくない砂糖の話』

 
2014年 デイモン・ガモー監督
 
 
アマゾン・プライムで映画『あまくない砂糖の話』をみて、直後にネットフリックスで『食品産業に潜む腐敗(甘い汁=砂糖)』をみました。
 
映画『あまくない砂糖の話』について、ニューヨークタイムズでは「ヒュー・ジャックマンも出演し、エンターテイメントとして楽しく、栄養学を学べる」と評されています。
 
 
オーストラリア人は1日にスプーン40杯!の砂糖を食事から摂っています。
健康な生活をしていた映画監督のデイモン・ガモーは、実際に1日スプーン40杯分の食事をとりながら、血液検査などで身体の変化を撮影していくというドキュメンタリー映画です。
 
わたしは『あまくない砂糖の話』を自分が担当している薬膳講座で推奨してきました。この機会に科学的批判を調べてみました。
 
 
2015年『シドニー・モーニング・ヘラルド』
「あまくない砂糖の話のレビュー:パワフルなプロパガンダ映画は少しも証明していない」
That Sugar Film review: Powerful propaganda proves little
 
 
2015年8月10日『スレート』
「あまくない砂糖の話:映画での砂糖について語られたすべてが間違っている」
That Sugar Film:
Everything movie critics think they know about sugar is wrong.
 
 
上記の批判をファクト・チェックしました。
映画『あまくない砂糖の話』は、引用している情報ソースが偏っているのは批判記事の指摘する通りでした。
 
ただ、「プロパガンダ映画」というのも極端です。
ファクト・チェックをして検討したところ、「コントロバーシャル(議論を引き起こす)映画」という言い方が妥当なようです。
 
 
出演者の中のロバート・ラスティングは小児科医で、カルフォルニア大学サンフランシスコ校小児科教授であり、査読付き論文を100本以上発表している科学者であり、著書、『 果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』は、日本語訳もあり、一流の科学者です。

 
また、映画の中の医師・栄養学者であるアンセル・キーズについての指摘は重要です。
映画が上映された2年後に『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』でアンセル・キーズの栄養学説がデータ捏造であることが指摘され、『ワシントンポスト』でも報道されました。これは栄養科学を研究している人の間では、2010年代最大の事件でした。
 
 
2016年4月12日『ワシントンポスト』
『このデータはアメリカ人の食生活をつくりかえたが、そのデータは全て出版されていなかった』
This study 40 years ago could have reshaped the American diet. But it was never fully published.
 
 
戦後の栄養科学の基礎を創ったアンセル・キーズとジョン・ユドキンの砂糖・脂肪論争は、2000年代から2020年代の栄養科学の世界的な大論争の中心といえるものです。
 
2009年にロバート・ラスティングの論争の流れを変えた講演を行い、2013年にユドキンの砂糖をめぐる研究が『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』で取り上げられます。
 
2016年に『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』と『ワシントンポスト』でアンセル・キーズのデータ捏造が発表され、栄養科学はいま、大変な状況です。
 
映画『あまくない砂糖の話』のファクト・チェックをすることで、2000年代から2022年までの栄養科学の論争の概要を理解することができます。
 
 
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