安保-福田理論

1994年「気圧と虫垂炎」
福田稔
『新潟医学会雑誌』 108 (4), 317-317, 1994-04
https://cir.nii.ac.jp/crid/1050282814226867840

安保徹先生と福田稔先生の「福田・安保理論」の福田先生の最初の論文です。1991年、福田先生がゴルフの予約をして、天気が良いと急性虫垂炎の急患のためにキャンセルしていたことから調査をはじめました。1994年4月に気圧と虫垂炎の関係を示す論文を『新潟医学会雑誌』に発表されますが、まったく注目されませんでした。1994年12月に福田先生は新潟大学教授であった安保徹先生を訪問し、共同研究が始まります。


1996年「気圧と虫垂炎」
福田 稔, 安保 徹
『日本温泉気候物理医学会雑誌』1996 年 59 巻 4 号 p. 236-242

以下、引用。

高気圧は寒冷で行動を刺激する事により交感神経支配で顆粒球を動員する。顆粒球の対象は主に細菌であり、自己の体内より放出する活性酸素により攻撃を行う。この結果、膿瘍形成組織破壊を来たしやすくなる。顆粒球がアドレナリンに対するリセプターを持っていることは既に報告されている。しかし、リンパ球が副交感神経支配であるか否かは、いまだに明らかではない。しかし、顆粒球は日中に多く、リンパ球は夜間に多くなるリズムはすでに報告されており、日中は交感神経支配で、夜間は副交感神経支配であることは周知のことである。

長岡憲由先生の「安保・福田物語」によれば、タクシーのなかで安保徹先生が「顆粒球はアドレナリン・レセプターをもっている」と気づいたことが福田・安保理論が生まれたキッカケだそうです。

1983年「ヒト白血球膜におけるα2アドレナリン受容体」
alpha 2-Adrenergic receptors in human polymorphonuclear leukocyte membranes
J O Panosian, G V Marinetti
Biochem Pharmacol. 1983 Jul 15;32(14):2243-7.

1997年に安保徹先生が『未来免疫学』を出版されます。

1997年
『未来免疫学―あなたは「顆粒球人間」か「リンパ球人間」か』
安保徹
インターメディカル (1997/5/1)

1997年に安保徹先生は日本良導絡自律神経学会で講演されています。

1997年
「未来免疫学 あなたは顆粒球人間かリンパ球人間か」
安保 徹
『日本良導絡自律神経学会雑誌』1997 年 42 巻 11 号 p. 243-245

わたしが福田・安保理論を最初に知ったのは、黒岩恭一先生のトリガーポイントの文献です。

1999年
『臨床家のためのトリガーポイント・アプローチ―鍼療法と徒手的療法の実際 』
黒岩 共一
医道の日本社 (1999/6/1)

2001年に岩波書店から出版された安保徹先生の『医療が病をつくる』は読んだ記憶があります。

2001年
「医療が病いをつくる―免疫からの警鐘」
安保 徹 岩波書店 (2001/11/27)

このころ全日本鍼灸学会で講演もされています。

2002年「からだを守る白血球の自律神経支配ー鍼灸医学の病気を治すメカニズム」
安保 徹
『全日本鍼灸学会雑誌』2002 年 52 巻 5 号 p. 486-500

福田・安保理論の治療は、浅見鉄男先生の井穴刺絡が使われていました。浅見鉄男先生は三焦経と胆経の刺絡が副交感神経の興奮を抑制するという見解を発表されています。

1992年「三焦経及び胆経と自律神経との相関 井穴刺絡学の立場より」
浅見 鉄男
『日本良導絡自律神経学会雑誌』1992 年 37 巻 11 号 p. 278-281

福田・安保理論は、

(1)福田先生による「晴れの日は虫垂炎が増える」という現象の発見(2022年JAMA論文でも同じような結果)
(2)安保徹先生による白血球の自律神経支配の理論の提唱
(3)浅見鉄男先生の自律神経調整のための井穴刺絡学の治療理論の採用

という3つのブレークスルーから成り立っているように外野からは分析していました。

今回、2022年『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』の「虫垂炎と気象」の論文を読んでみて、1996年の福田先生のものと比較しても、むしろ26年前の安保・福田論文のほうが優れていると思いました。

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