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土用のほうろく灸と三伏督脈灸と熱証可灸論

 
2023年7月17日
『夏の風物詩、素焼きの皿を頭にのせお灸を据える「ほうろく灸」 愛知・豊橋市』
 
 
日本全国のお寺で、夏の土用の暑い時期に「ほうろく灸」をしています。
「土用灸」は、季語として『季語辞典』にも載っています。
 
ほうろく灸は、督脈の百会が使われます。夏の最も暑い時期に、人体で最も陽気の強い部分にお灸をするわけです。
 
中国では、この時期に三伏灸をします。多くは膀胱経の肺兪などですが、督脈灸をするところも多いです。
 
 
最近、卒後すぐの鍼灸師さんを治療していて、頭部に灸をしようとしたら、「夏に補陽したらノボセませんか」と聞かれました。
「のぼせた経験がありますか」
「いや、のぼせた経験はないですけど、そう習ったので・・・」
 
という会話でした。
 
そのロジックが正しいなら、きっと日本中のほうろく灸をしているお寺や、中国の督脈灸をしている鍼灸院はトラブル続発で、こんな盛んな年中行事にはならないですよ、と言いたいところをこらえて、「では、灸はせずに、鍼に代えます」と対応しました。
 
 
明代の文献や日本の江戸時代の文献にも「虚証も実証も寒証も熱証も灸できる」と書かれていますし、実際、明治時代から昭和まで、日本では結核という陰虚火旺(肺陰虚)にも灸をしてきています。明代の中国も結核に灸をしていました。
 
カゼをひいて、風寒でも風熱でも大椎に多壮灸をしています。
江戸時代には面疔や麦粒腫などの実熱証に「桜井戸の灸」で100壮から200壮の多壮灸をしています。
 
「熱証に灸をしてはいけない」という立場に立つと、歴史的事実や目の前の現実と、いろいろな面で齟齬が出てしまいます。「熱証可灸(熱証にも灸は可能である)」という立場の方が、非常に楽だと個人的には思います。
 
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