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エビデンスマップにおける骨盤痛、慢性前立腺炎、慢性骨盤痛症候群

 
 
 
2018年1月26日『コクラン・システマティックレビュー』
「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群 の治療における非薬理的介入」
Franco JV,et al.
Cochrane Database Syst Rev. 2018 Jan 26;1:CD012551.
 
 
以下、引用。
 
1.
鍼は短期間フォローアップで、偽の介入と比較して前立腺炎の症状をかなりの数で減らした。
鍼では結果として有害事象はほとんど無かった。
鍼は標準的なメディカルセラピーと比較しても、かなりの数の患者で慢性前立腺炎の症状を減少させた。
 
 
慢性前立腺炎は前立腺痛、慢性前立腺炎様症候群とも呼ばれます。前立腺炎そっくりの排尿時の痛みや会陰部の不快感はありますが、尿や前立腺液は無菌です。西洋医学では難治です。
 
骨盤痛は西洋医学で注目されている概念です。
 
子宮内膜症などの骨盤帯痛や慢性前立腺炎様症候群の慢性骨盤痛症候群、間質膀胱炎、過敏性腸症候群による下腹部痛なども含みます。さらにスポーツ医学の鼠径部痛症候群なども含まれます。慢性骨盤痛は西洋医学では非常に難治です。
 
骨盤痛は学際領域であり、文献も非常に少ないです。
 
一つの疑問として、初学者に2018年『コクランレビュー』で鍼灸の効果が認められているという知識が共有されているかという問題があります。非常に複雑な概念ですが、教育課程や卒後教育の中で共有されることが望ましいです。
 
2022年06月の『英国医師会雑誌(BМJ)』のエビデンスマップでは「慢性前立腺炎は低い確定度で大きな効果のあるエビデンス」とされています。
 
2022年11月の『米国医師会雑誌(JAMA)』の米国退役軍人省エビデンスマップでは「骨盤痛は中程度の確定度で中程度の効果のあるエビデンス」とされています。
 
 
【慢性前立腺炎/慢性骨盤痛に関する鍼の研究史】
 
1982年「慢性前立腺炎に対する鍼通電療法 」
形井 秀一et al.『 順天堂医学 』Vol. 38 (1992) No. 2 210-219
 
 
1994年
「慢性前立腺炎と前立腺炎様症候群の臨床的研究 7.慢性前立腺炎様症候群難治症例に対する低周波針通電療法」
池内隆夫et al.
『泌尿器科紀要』40(7), 587-591, 1994-07
 
 
慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群は西洋医学でも診断基準と治療法が確立されていません。
 
 
2020年
「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群:病気または症状?診断、治療、および予後に関する現在の展望」
Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome: A Disease or Symptom? Current Perspectives on Diagnosis, Treatment, and Prognosis
Jianzhong Zhang et al.
Am J Mens Health. Jan-Feb 2020;14(1)
 
CP / CPPSに対する洞察の欠如と明確な臨床的定義の欠如は、臨床診療における患者の不十分な管理につながっている。
 
CP / CPPSの診断には以下の4要素が必要である。
(a)会陰および/または下部腹部領域で発生する症状
(b)異常所見の証拠を伴う前立腺の感染および/または炎症性変化
(c)臨床症状(主には疼痛と不快感)は前立腺または下部尿路症状と関連している
(d)症状はさまざまな潜伏期から顕在化している
 
 
 
2016年の論文によれば、慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)に対する薬物療法はすべて単剤で「有益でない」です。
 
 
2016年「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の現代的なマネージメント」
Contemporary Management of Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome
Giuseppe Magistro et al.
Eur Urol. 2016 Feb;69(2):286-97.
 
結論: この非常に変動性の高い症候群をもたらすCP / CPPSの根底にある病態生理学に関する現在の理解は、管理のための単剤療法を支持するものではない。効率的な単剤療法の選択肢はない。
 
 
2021年には使用されているツボの分析論文が発表されています。
 
 
2021年1月
「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の患者のための最適なツボと鍼治療のセッション:メタアナリシス」
Optimal acupoint and session of acupuncture for patients with chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome: a meta-analysis
Wei Zhang et al.
Transl Androl Urol . 2021 Jan;10(1):143-153
 
現在のエビデンスに基づいて、その臨床的有効性に到達するための最小治療回数として4回の鍼治療セッションが推奨される可能性がある。
 
私たちのデータは、ほとんどの試験での経穴の選択戦略は中極(CV3)、関元(CV4)、次りょう(BL32)、三陰交(SP6)、および陰陵泉(SP9)からの任意の3つのツボの組み合わせに基づいていることを示した。
 
表2と表4に示したように、ほとんどの臨床試験はツボとして仙骨エリア、または中極(CV3)、関元(CV4)、次りょう(BL32)を含んでいた。
 
 
2021年8月17日 世界五大医学雑誌『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』
「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の鍼の効果:ランダム化比較試験」
Efficacy of Acupuncture for Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome:A Randomized Trial
Yuanjie Sun, MD et al.
Ann Intern Med . 2021 Aug 17
 
440人の男性患者に8週間20回の鍼治療と治療後24週のフォローアップ。
【結論】偽鍼と比較して、8週間20回の鍼治療は中程度から重度の慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群に治療後24週も含めて著しい改善があった。
 
 
2021年12月8日 北京中医薬大学
「慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の鍼灸のメカニズム:動物実験のナラティブレビュー」
Mechanism of Acupuncture and Moxibustion on Chronic Prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome: A Narrative Review of Animal Studies
Xiaoling Wu
Pain Research and Management Volume 2021 |Article ID 2678242
 
 
以下、引用。
 
現代医学では慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の局所炎症反応はその自己免疫反応と密接に関連している。
 
他の多くの研究は慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群動物モデルに対する鍼治療の治療効果が発症中の炎症反応と免疫反応の調節に密接に関連していることを示している。
 
最近の研究は 慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群のメカニズムが脳と密接に関連していることを完全に示している。
 
 
 
 
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