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腰痛とマルチディシプリナリー・アプローチ

2022年11月23日『アメリカ医師会雑誌(JAMA)』
『成人の健康コンディションへの鍼の使用:2013年から2022年システマティックレビュー』
Use of Acupuncture for Adult Health Conditions, 2013 to 2021
A Systematic Review
Jennifer Allen,et al.
JAMA Netw Open. 2022;5(11):e2243665.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9685495/

 

2022年11月『アメリカ医師会雑誌』の米国退役軍人省エビデンス・マップで、急性腰痛も慢性腰痛も「低い、または極めて低い確定度」で「効果あり」とされています。

 

米国退役軍事省エビデンスマップは、2017年2月のアメリカ内科医師会の腰痛ガイドラインを根拠としています。

 

2017年2月17日『アナルス・オブ・インターナル・メディスン』
「急性、亜急性、慢性の腰痛の非侵襲的治療:アメリカ内科医師会によるクリニカル臨床ガイドライン」
Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians
Amir Qaseem, et al.
Annals of Internal Medicine 14 FEBRUARY 2017

 

この2017年アメリカ内科医師会ガイドラインの著者は、「マルチディシプリナリー・生物=心理=社会アプローチ」で書いたと述べていました。
2014年の慢性腰痛のコクランレビューもその考え方です。

 

2014年コクラン・システマティックレビュー
「慢性腰痛へのマルチディシプリナリー・生物心理社会的リハビリテーション」
Multidisciplinary biopsychosocial rehabilitation for chronic low back pain.
Kamper SJ,et al. 
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Sep 2;(9):CD000963.

【著者の結論】
慢性腰痛で、学際的、生物=心理=社会的なリハビリを受けている患者は、通常ケアや理学療法を受けている患者よりも痛みや機能障害を少なく経験していた。

 

2022年1月、『ランセット』に腰痛の総説論文がありましたが、「慢性腰痛はマルチ・モーダルで学際的なアプローチを用い、社会的、精神的、生物学的因子が絡んだ生物心理社会モデルで考えるべきである」と論じられていました。

 

2022年1月『ランセット』
「腰痛」
Low back pain
Nebojsa Nick Knezevic et al.
Lancet. 2021 Jul 3;398(10294):78-92.

 

この2022年1月『ランセット』慢性腰痛論文は、2022年11月24日『m.3.m』で尊敬する整形外科医の仲田和正先生が解説されています。

 

2022年11月24日『m.3.m』
〔Lancetセミナー〕腰痛
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正

 

以下、引用。

マッサージ、鍼灸もそれなりに有効なのです。特に慢性腰痛には感覚、情動、認知が大きく関連するというのです。

医師の「あなたの背骨は70歳代並みだ」などの不用意な言動は自己暗示的な恐怖を起こし、痛みの連鎖につながるというのにはぎくりとしました。 腰痛は多数因子により起こりまた画像診断、診断的注射などの特異度も低く、診断方法はいまだに議論が尽きません。

特に慢性腰痛は社会的、精神的、生物学的因子が絡んだ生物心理社会モデルだというのです。
ほとんどの治療、例えば硬膜外注射、脊髄刺激、椎間関節の高周波や注射は単一原因に対するものであり腰痛の万能薬はなく、腰痛には多様な、学際的なアプローチが必要だというのです。

腰痛のガイドラインはたくさんあります。従来、重篤な疾患を見つけ出すRed flagsがありましたが、今回なんと精神的なYellow flagsを提唱するガイドラインが現れました。Yellow flagsとは腰痛の原因としての次のような精神、社会的な要因です。 小生、腰痛の精神的原因なんて考えたこともなかったので実に意外でした。

患者が悲観的だと疼痛のアウトカムは悪化し腰痛に対する恐怖で患者はますます運動せず悪循環となります。へーと思ったのは、一緒にいるとろくなことがない有害な人間関係をtoxic relationshipというのだそうです。

 

2022年1月『ランセット』の腰痛論文は、2017年のアメリカ内科医師会の腰痛ガイドライン時の調査よりアップデートされている印象があります。マルチディシプリナリー・アプローチと生物心理社会モデルがキーワードです。

 

 

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