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【BOOK】『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』

 
 
エイミー・C・エドモンドソン
英治出版 (2021/2/3)
 

 
 
2012年にグーグルはジュリア・ロゾフスキに依頼し、グーグル社の180チームを分析して「あるチームが他のチームよりも高いパフォーマンスをあげる要素」を徹底調査しました。
 
メンバーの学歴、趣味、友人関係、性格特性を徹底調査しましたが、何も発見できませんでした。
しかし、調査の最中にある概念を書いた論文に出会い、このパズルが解けました。
 
心理的安全性が高いチームこそが、高いパフォーマンスと創造性をもったチームだったことが2015年に判明した。
(グーグル「プロジェクト・アリストテレス」)
 
 
2015年ジュリア・ロゾフスキ
「成功したグーグル・チームの5つの鍵」
JULIA ROZOVSKY, ANALYST,
GOOGLE PEOPLE OPERATIONS NOVEMBER 17, 2015
 
 
心理的安全性は、私たちが見つけた5つのダイナミクスの中で最も重要なものだった。それは他の4つのダイナミクスの基盤となる。
 
 
この文献は、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が書きました。
 
エイミー・C・エドモンドソン教授は、最初の研究で病院内の医療ミスについて調査しました。
 
優秀な医療チームと普通の医療チームの差は、優秀な医療チームのほうが「ささいなミス」の報告が多いことに気づき、困惑したそうです。失敗からの学びを共有できる雰囲気をもっているチームこそが優秀なのです。
 
本当の失敗とは「やってみて、うまくいかないとわかったのに続けること」「失敗を恐れてリスクを取らないこと」です。「賢い失敗は技術」です。多くの事例が「医療ミスをいかに防ぐか」の実証研究から引かれているので勉強になりました。最初は失敗だらけなのが普通であり、失敗をいかに修正して学んでいくかこそが問題でした。そのために必要なのは「謙虚さ」と「無知を認めること」でした。
 
 
エイミー・エドモンドソン教授は、グーグルなどの世界中の新興企業・組織が「いかに心理的安全性という文化をつくる努力をしているか」を文献の中で紹介していますが、皮肉なのは、世界の多くの「優良企業」が「従業員をファミリーとみなして、困ったときに助け合う文化」をつくろうとしていることです。1980年代前半までの日本企業です。
 
実際、エドモンドソン教授はトヨタのカイゼン文化の現場主義を絶賛しています。バブル崩壊後に日本企業は新自由主義、自己責任、リストラ」に舵をきり、ブラック企業になっていったのは歴史の皮肉です。
 
現場主義、日本的経営だった頃の日本企業は、世界トップの素晴らしい企業文化を誇っていました。心理的安全性は失敗をいかに成功につなげるかを示したのがこの本です。
 
最悪の失敗事例として紹介されているのは、日本の福島第一原発事故です(120~126ページ)。
 
以下、引用。
 
根本原因は、日本文化に深く染みついた慣習、すなわち盲目的服従、権威に異をとなえたがらないこと、計画を何が何でも実行しようとする姿勢、集団主義、閉鎖性の中にあるのだ」
 
 
これは日本人が書いた福島第一原発事故の国会事故調査委員会の英語版の報告書の文面ですが、エドモンドソン教授はすぐに「日本文化に限ったものではない。それは心理的安全性のレベルが低い文化に特有の慣習なのだ」と書き、世界中の組織に当てはまると指摘しています。
 
しかし、1980年頃までは日本といえば「真面目」なイメージだったものが、1990年以降の民間企業は偽造スキャンダルばかりであり、データ偽造・改竄・公文書の書き換えと破棄と隠蔽は、この世代の日本人の特徴と言えるほどです。
 
最も感銘を受けたのは、最後の「Q&A・よくある質問」です。
 
「わたしの職場には心理的安全性がない。わたしにできることはあるだろうか」という質問に対して、「あなたは(小さな)安全地帯をつくりだすことができる」と著者は答えていました。
 
自分自身の心の中に心理的安全性を構築することは、けっこう難しいと思います。半径1メートルから2メートルの「小さな安全地帯」を構築できれば、それで十分と思いました。
 
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