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【BOOK】『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか : 人間の心の芯に巣くう虫』

 
シェルドン・ソロモン et al.
インターシフト2017年2月25日
 

 
 
現在、世界中で全体主義、ファシズム、権威主義が歴史上、2度目の流行を見せています。
 
ドイツのユダヤ人、エーリヒ・フロムは『自由からの逃走』で、ナチス・ドイツの支持者たちを分析し、権威主義的パーソナリティを提唱しました。
権威ある者への服従(マゾヒズム)、自己より弱い者に対する攻撃(サディズム)、人間性への冷笑と軽蔑などが特徴的です。
 

 
 
カリフォルニア大学バークレー校の社会学者・哲学者のテオドール・アドルノは1950年『権威主義的パーソナリティ』を発表しました。
 

 
 
これらの概念は心理学実験によってさらに深められ、男女不平等や外国人、マイノリティー排斥ともリンクしていることが確認されています。
 
つまり、日本のネット右翼やアメリカのトランプ支持者、オルタナ右翼は、これらの特徴をすべて兼ね備えています。
 
『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか―人間の心の芯に巣くう虫』は、1974年に文化人類学者アーネスト・ベッカーが提唱した存在脅威管理理論について、心理学実験で検証し続けてきた3人のカンサス大学の心理学者が2015年に書いた共著になります。
 
 
存在脅威管理理論では、人は死の恐怖に直面すると、死から目をそらそうとします。
または、自尊心を強くしようとします。ことさらポジティブ・シンキングを強調するのも同じです。または「死を乗り越えるために、自分を超える大いなるものに一体化しようとする」のも特徴です。
 
人を死の恐怖にさらすと、実験では女性蔑視が強くなり、マイノリティーへの攻撃性が強くなり、異文化に差別的になり、自分の属する文化への帰属が高まります。
 
2011年の東日本大震災と福島第一原発事故以降、日本ではまさに心理学実験の結果が社会の中で再現された印象があります。
 
2022年に『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか』を読んで、多くの現象の答えを得ることができました。
死の恐怖という人間の本質的感情が、この現象の背後にあるようです。
 
 
2023年1月2日に佐藤健主演の映画『護られなかった者たちへ』をみました。
 
原作は宮城県の『河北新報』に連載された推理小説で、2020年に映画も宮城県をロケ地として撮影されました。
映画『護られなかった者たちへ』は、約10年後の被災地と生活保護の問題をテーマにしており、現在の日本映画のレベルの高さをあらわしており、感動しました。
2011年の東日本大震災のときの、すさまじい恐怖と理不尽さ、不条理の感情を思い出しました。
 
同時に、アメリカのトランプ支持者たちを描いた映画『続・ボラット(2020年)』を思い出しました。主演のサシャ・バロン・コーエンは反トランプの政治的立場です。ところが、頭のおかしなコメディアンのサシャ・バロン・コーエンに対して、慈悲と隣人愛にあふれ、泊めてくれてお人好しの人たちはトランプ支持者でした。
 
当然、トランプ支持者やオルタナ右翼は悪魔やナチやファシストなんかではなく、普通の人だったのです。アメリカのラストベルトのトランプ支持者やオルタナ右翼も、この時代に恐怖と不安に苦しめられている『護られなかった者たち』なのです。
 
 
『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか』を読み、権威主義と権威主義的パーソナリティの心理的背景を考えることができました。
自分が権威主義や時代の流れに加担したくないということだけは明らかです。ただ、他人を変えることは出来ない以上、周りの人たちの恐怖と不安をやわらげ、小さな安全地帯をつくることしか出来ないのではないかと思いました。
 
鍼灸師・東洋医学者にできるのは、患者さんのストレスを弱めることだと思いました。
 
 
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