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ブラジルとインドとのマルチディシプリナリー戦略 

 
 
 
ブラジルのルラ・ダ・シルバさんが大統領に就任した際、先住民のソニア・グアジャジャラさんを先住民省の大臣に任命しました。これは歴史的な出来事です。
 
ソ連とアメリカの二極支配が1991年の冷戦終結により、アメリカの一極支配となりました。
2008年にリーマンショックが起こり、アメリカの国力が劇的に低下します。2009年にはブラジル・ロシア・インド・中国がBRIC会議を開き、2014年にはBRICs銀行が発足しています。
ここから多極化世界への移行がはじまりました。
 
2016年、アメリカではトランプ政権が発足し、イギリスはEU離脱Brexitを決定します。
2022年、ロシアのウクライナ侵攻がはじまり、米中新冷戦が激化。
2023年にインドは中国を抜いて人口が世界一となり、新車販売も日本を抜いて世界3位となりました。
 
 
2023年1月5日『日本経済新聞』
「インドの新車販売、日本抜き世界3位に 22年」
 
 
現在、ロシアは多極化世界を提唱していますが、その極の一つがインドであり、もう一つはブラジルです。
 
2022年7月4日、BRICsにイランが加入申請しました。
 
2022年7月4日『ジェトロ』
「イランがBRICSへの加盟を申請」
 
 
同年9月16日、イランは上海協力機構にも加入申請しています。
中国・インド・ロシアを中心にパキスタン・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンが加盟しており、イランとベラルーシが加盟します。これは世界人口の半分にあたる32億人の経済・軍事機構となります。
 
 
2022年9月16日『日本経済新聞』
『上海協力機構が共同宣言 イラン23年加盟、10カ国に:首脳会議、「多極的世界秩序」を強化』
 
 
ユニークなのはインド政府で、アメリカ主導の対中国軍事同盟のクアッドに参加しながら、中国主導の上海協力機構にも参加しています。
 
上海協力機構には敵国であるパキスタンも参加していますし、中国とインドは国境紛争で昨年も死者が出るほどの軍事衝突を起こしています。インドの「中国嫌い」は有名です。
インド政府は、中国と片手で握手しながら、別の手で殴り合っており、老獪です。
 
 
インドは、多民族・多言語・多宗教の社会であり、自由民主主義国家です。インド人はバラバラですが、お互いにまったく違う価値観同士で協力しあって(牽制しあって)、うまくいっている社会です。
 
 
2022年4月、インドのグジャラートにWHO伝統医学センターができました。今後、世界の伝統医学のセンターはインドとなります。
 
2014年にモディ政権はインド伝統医学省をつくりました。アーユルヴェーダ、ヨーガ、ユーナニ、シッダ医学、ホメオパシーの頭文字をとってAYUSHであり、複数のパラダイムを同時に認めるマルチディシプリナリー戦略を採用しています。
 
 
BRICsの一つである中国は西洋医学と中医学という2本立てですが、特に中医学を海外に輸出し、ICD―11に導入するという中国文化輸出戦略をとりました。本質的には中西医結合という統合医療戦略です。中国はEBМの世界の中心地になろうとしています。
 
 
また、習近平政権はウイグル人やチベット人、中国・朝鮮族などに北京語(標準中国語)を強要するという少数民族政策をとりました。中国人が世界進出する際もチャイナタウンをつくり、集住するため、逆に現地の反発を招くことが多いです。アメリカもグローバル・スタンダードを世界に強要することで世界的に反発を招いています。アメリカ医学も基本的にはEBМに基づく統合医療戦略であり、どちらも単一の価値観の拡大路線という意味においてそっくりです。
 
 
中国・アメリカと比較すると、インドはホメオパシーを入れていたり、決してEBМではありません。ホメオパシーはもともとドイツ由来でありインドのものでさえありません。ブラジルの補完代替医療戦略、統一ヘルスシステムは、さらにマルチディシプリナリー戦略なのです。
 
 
2006年にブラジル政府は統合補完医療プラクティスのためのナショナル・ポリシーを発表し、統一ヘルスシステムとして、5つの代替医療を認めました。鍼、ホメオパシー、植物ハーブ医学、人智学医学、温熱療法の5つです。
 
 
2017年3月28日、ブラジル政府から新しいポリシーが発表され、 統一ヘルスシステムに14の治療法が追加され、合計19の治療法が認められました。
 
2018年3月12日、ブラジル政府はさらに10種類の代替医療を認めました。合計で29種類の代替医療です。この統一ヘルスシステムにはレイキやてかざし按手療法さえ含まれています。
 
 
EBMへのこだわりはありません。レイキやてかざし按手療法は日本オリジナルであり、ホメオパシーや人智学医学はドイツ由来であり、オリジナリティーや伝統へのこだわりもありません。ただ、多様な価値観、異質な文化をとりいれようという方向性は伝わります。役に立つなら何でも良いのです。
 
 
アメリカ・ロシア・中国という20世紀後半の冷戦時の核保有スーパーパワーは、いずれも文化的に弱体化が予測されます。
 
インド・ブラジルは多文化・多言語の自由民主主義社会です。「真実は複数ある」というマルチディシプリナリーな社会でもあります。伝統医学の戦略からみるかぎり、インドとブラジルの文化戦略は、もっとも21世紀にマッチしている印象があります。政府を信頼せずに、個人のつながりの中に幸せを求めるところも共通しています。

 

 

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