国家機密としての中国伝統医学

 

 

山本巌先生の漢方を継承する香杏舎銀座クリニックの漢方医、日笠穣先生がインターネット上で公開されている「香杏舎ノート」は漢方・鍼灸・民間療法を学ぶ者にとっては大変参考になります。

 

第8回「漢方医としての自覚」

以下、引用。

 

せっかく中国に来たのだから、中医学の腕のいい先生に会いたいと思った。陶先生の紹介で老中医(高名な医者の意味)の先生に会いにいった。15代続く中医学の医家に生まれた先生だ。当時64歳、周恩来や毛沢東が着ていたマオスーツを着て現れた。名前は明かすことができない。過去に国家主席の主治医をしていたことがあり、それが機密だからだ。何年か後、この先生を日本に1ヶ月招いて私の診療所で診察を教えてもらった。この先生は国会議員であり、外交官パスポートで来日した。

 

 

これは中国・湖南省の老中医、劉志明先生のことだそうです。

以下、引用。

 

旅行のもう一つの目的は家伝の処方で効くものがあれば手に入れようと思っていたことだ。いい処方があればお金で買えないかと考えた。北京大学を出た社員の給料が月に4千円だから日本円は使い勝手が大きかった。信用できる人物を探し出してホテルの部屋で面会した。その人物は白血病を確実に治せる中医を知っているという。そこで、家伝の秘方をお金で買うことができないか聞いてみた。すると突然、「先生、散歩に行きましょう」という。ホテルの前の道を歩きながら「先生、めったなことは言わないでほしい。外国人用のホテルはすべて盗聴されている。家伝の処方は国家の財産として守られている。国家の財産を外国に売ることは国家に対する反逆罪になる」という。

さらに続けて「あなたは鍼麻酔を知っているだろう。鍼麻酔をすると、脳手術を受けている患者が医者と話をしながら手術をうけることができる。ニュースとして見たことがあるはずだ。この鍼の技術を公開しないことを国家が決めた。だから鍼麻酔の話題は消えただろう」という。確かに鍼麻酔による手術を見学させていた中国政府は突然その見学を中止し、それ以降、鍼麻酔に関する情報は地上から消えてしまった。なるほどそういうことか。私は中医学の一つの側面を見る思いがした。

 

中国伝統医学を長年学んでいると、どうしても国家機密があまりに多いことに気づいてしまいます。

2015年ノーベル医学賞を受賞した中国中医研究院の屠呦呦先生はプロジェクト523という中国人民解放軍のヴェトナム戦争のための秘密軍事プロジェクトで働いている時に中薬、青蒿からアルテミシニンを分離しました。

この秘密軍事プロジェクトは1967年の文化大革命の真っ最中にヴェトナム政府のホーチミン主席の依頼と毛沢東の命令で始まり、1973年に屠先生と山東省の中国伝統医学者たちが臨床試験を行って発見しました。ヴェトナム戦争が終結したあとの1981年に、この秘密の軍事プロジェクト、プロジェクト523は終了しています。

ノーベル医学賞の屠呦呦先生は「学歴なし・職歴なし・海外留学経験なし」の三無科学者と呼ばれていました。修士号や博士号がないのですが、文化大革命の1960年代から1981年まで中国に大学院は存在しなかったのです。また、屠先生は海外留学経験も無いです。屠先生は職歴もなく、1980年まで中国中医研究院の研究員にさえなれず、なったのは1981年です。これは秘密軍事プロジェクトの研究者だったからです。

 

1902年に中国、雲南省の名医、曲焕章先生が雲南省で百宝丹を作り、これは後に雲南白薬となりました。中国人民解放軍の常備薬キットに入っているので雲南白薬の組成は中国の国家機密となっていますが、アメリカに輸出する際のFDAの文書では完全に組成が公開されています。

 

中医薬メーカー、広誉遠はビッグ・フォーと呼ばれる清代四大薬店の一つで、創業は明代、嘉靖二十年の1541年です。

広誉遠の漢方処方である亀齢集と定坤丹の製造方法は、中国政府によって国家機密に指定されています。

 

中国伝統医学を学んでいる方々と話すと、中国では中薬の炮制が国家機密技術であり、外国人に教えると法律違反ということを知らない方が多いです。

 

2016年「加快规范统一国家饮片炮制标准」

1.4 编制《全国中药饮片炮制规范》是加强中药饮片监管,促进饮片产业结构调整的有效手段。
※由于我国将炮制技术列入保密技术范畴,多项法律法规明令禁止出口毒性中药和大宗中药的炮制工艺与产地加工技术,也禁止外资涉足中药饮片传统炮制工艺领域,因此为防止泄密,

 

 

 

 

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