肩こりと胸脇苦満

 

 

「胸脇苦満の発現機序に関する病態生理学的考察—胸脇苦満と横隔膜異常緊張との関連—」
寺澤 捷年
『日本東洋医学雑誌』Vol. 67 (2016) No. 1 p. 13-21

 

これは漢方家による鍼と腹診の研究です。胸脇苦満(きょうきょうくまん)に関する最高の研究の一つだと思います。

寺澤捷年先生は心下痞鞕(しんかひこう)が膈兪・肝兪・胆兪などの脊柱起立筋群の刺鍼で消失することを報告されました。しかし、これらの刺鍼で胸脇苦満は消失しないことを同時に報告されています。

寺澤捷年先生は棘下筋の天宗付近のツボ(寺澤ポイント)への刺鍼で胸脇苦満が消失し、さらにしゃっくりが消失することも経験しました。

西洋医学的な分析から、寺澤先生は棘下筋がC5・C6に起始する肩甲上神経に支配され、横隔膜がC3・C4・C5に起始する横隔神経に支配されることから横隔膜からの内臓体性反射で胸脇苦満が起こるのではないかと考察されています。

以下、引用。

これまで筆者は胸脇苦満を肝臓の圧痛と単純に理解してきたが、肝臓の圧迫と同時にこれを媒体として横隔膜が強く挙上・伸展していることに初めて気付かされた。

1)(置鍼することで)細野史郎の言う季肋下徴候が消失すること。

2)胸脇苦満が認められている皮膚(T6.T7髄節領域)に現れていた知覚異常が施術によって改善すること(細野の言う撮診徴候の改善)。

3)細野の言う胸肋膨張の改善。

4)棘下筋の硬結は吃逆にと有効な治療ポイントであること。

 

細野史郎著『漢方医学十講』には胸脇苦満という徴候が横隔膜に関連したものであることが明確に記されており、胸脇苦満を診断する3項目を挙げている。

1)胸肋膨張(C)

2)肋骨弓を中心とする撮診陽性(B)

3)季肋下現象(A)

であり、ABCあるいはACが確認されて初めて真の胸脇苦満と言えると記している。

 

このように細野史郎が明確に胸脇苦満を横隔膜神経症候群と結論づけた背景には、定義が曖昧であった胸脇苦満ということ徴候が必ずしも柴胡剤によって改善しないこと、あるいは他の方剤で改善すると言う臨床的事実からたどり着いたものである。

 

 

この吃逆への寺澤ポイントは2017年に追試の論文も発表されています。

 

「棘下筋の硬結(寺澤ポイント)への鍼施術が有効であった頑固な吃逆の2症例」
永田 豊, 小山 俊平, 長坂 和彦
『日本東洋医学雑誌』
2017 年 68 巻 3 号 p. 245-249

以下、引用。

近年、寺澤は胸脇苦満と横隔膜異常緊張との関連を報告する中で、胸脇苦満と関連する背部諸筋の硬結を探索し、棘下筋の硬結への鍼施術が吃逆を改善することを報告している。この棘下筋の硬結は天宗の外一寸にある別のポイントで、後に「寺澤ポイント」と命名し、その名称について特許が取得されている。

 

「胸脇苦満に関する二、三の問題」
長浜 善夫
『日本東洋醫學會誌』
Vol. 7 (1956) No. 3 P 11-15

 

これも漢方の名医、長浜善夫先生の素晴らしい分析です。漢方の各家学説を研究し、胸脇苦満、心下満と肩こりの間の関係を論述しています。

 

 

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