『中医臨床』の2005年論文
『李東垣「陰火」に関する諸説と初歩的考察』
篠原明徳・中村市立中医学研究所
『中医臨床』 26(1): 59-63, 2005.
これは日本で書かれた李東垣の陰火学説に関する最高の解説だと思います。
論文中にも書かれていますが、中国の広州中医薬大学の靳士英教授(中国医学大百科全书の著者)でさえ「中国でもいまだ定説がない難問です」と答えています。
陰火とは当時の中国では「鬼火」のような意味だったようです。「腎間の動気は脾胃から下に流れる湿気に冷やされており、この脾胃が失調すると腎間の動気が暴走して、上は頭頂部、皮毛などに燥熱が起こる。少陽三焦と厥陰心包はこの相火の通路である」という考え方です。
李東垣『脾胃論』饮食劳倦所伤始为热中论より引用。
喜び、怒り、驚き、恐れは元気を損耗し、既に脾胃の気が衰えば元気が不足し、心火(心包火)が独り盛んとなる。心火(心包火)は陰火である。陰火は下焦に起こり、心(心包)につらなる。心(心包)がうまく働かないと相火という下焦の心包絡の火は元気の賊となる。
脾胃の気が虚せば下は腎に流れ、陰火は土に乗じて、故に脾証が始まる。気が上逆して喘し、身熱となり熱くイライラする。脈は洪脈・大脈で頭痛し、渇きが止まらず、その皮膚は風寒に耐えず悪寒発熱が発生する。これは陰火の上昇で逆気や煩熱や頭痛や渇きや洪脈が生じているのだ。
臨床経験で、気血虚して中焦に湿熱や痰がたまり、頭顔面には「陰火」が上がって口渇し、イライラし、悪寒したり悪熱したりして気逆が起こりやすく、舌尖紅、胖大で歯痕舌、白苔、脈は浮き、滑弦脈だが沈は無力というタイプを診ているうちに理解できてきました。 これは現代のうつやパニック障害の方などです。
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