2019年4月ウエスタン・シドニー大学オーストラリア国立補完医療研究所(NICM)
「反復クローン病の現状の中国伝統医学によるマネージメント:症例報告」
Traditional Chinese medicine for management of recurrent and refractory Crohn disease:A case report
Lai, Hezheng, et al.
Medicine: April 2019 – Volume 98 – Issue 15 – p e15148
doi: 10.1097/MD.0000000000015148
21年の病歴を持つ54歳のクローン病女性の症例です。2005年には腸切除手術も受けています。最近、オーストラリア国立補完医療研究所は良い研究ばかり出すので要注目です。
以下、引用。
患者の症状は慢性の消化不良、逆流、熱感をともなう腹痛、過剰な下痢は不快感とともに起こり、彼女のQOLを減少させていた。薬は彼女の症状スペクトラムやQOLの改善にはつながらなかった。
患者は2017年12月11日に鍼治療を受けた。彼女は2018年11月5日まで週に1回の21回の頻度で鍼治療を受けた。鍼のツボは消化器・腸疾患に持ちいられるものから選穴された。患者は仰臥位で治療を受けた。曲泉(LR8)、曲池(LI11)、中かん(CV12)、気海(CV6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)だった。すべてのツボは、中かん(CV12)・気海(CV6)、曲泉(LR8)をのぞいては左側を使った。得気はすべてのツボで得られた。鍼は刺激せずに20分間置鍼した。
上記の鍼に加えて、漢方の痛瀉要方を飲みました。痛瀉要方は白朮、白芍、防風、陳皮の組成で補脾瀉肝の作用があります。
以下、引用。
鍼治療の治療効果はポジティブだった。治療期間中、患者は症状の顕著な改善を経験した。
2018年3月まで患者の症状はよく管理されていた。下痢、消化不良、逆流、腹痛の症状の再発は抑制されていた。散発的に起こっても、それは食事に関連したものである。
2018年3月から、患者は1日2錠から1錠に薬を減らし、腹痛と下痢は1日に5-6回から1日平均3回に減少した。彼女は、症状はストレス時にも悪化しなくなったと報告した。
彼女は2018年4月13日から2018年11月5日まで月に1回の鍼治療を受けた。治療の最後には、彼女は慢性食欲不振、逆流、腹痛、下痢の症状は100パーセントなくなったことを報告した。
現状では、反復性クローン病に薬物療法の標準治療との混合の形での鍼治療でポジティブな結果を出し、医学研究分野に提示する最初のユニークなエビデンスである。
症例報告も貴重ですが、他にも貴重な情報が多いです。
以下、引用。
ランダム化比較試験の発見によれば、鍼灸治療はクローン病の症状とQOLを改善することを助けるかもしれない。
2004年のドイツ・バイエルン州のフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュールンベルクのヨースやブリンクハウスの研究です。
2004年「活動期のクローン病の鍼灸治療:ランダム化比較試験」
Acupuncture and moxibustion in the treatment of active Crohn’s disease: a randomized controlled study.
Joos S et al.
Digestion. 2004;69(3):131-9. Epub 2004 Apr 26.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15114043
2014年上海中医薬大学
「ランダム化比較試験:クローン病の鍼灸治療」
Randomized controlled trial: moxibustion and acupuncture for the treatment of Crohn’s disease.
Bao CH,et al.
World J Gastroenterol. 2014 Aug 21;20(31):11000-11. doi: 10.3748/wjg.v20.i31.11000.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25152604
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4138481/
以下、引用。
43のランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタアナリシスは、鍼灸は過敏性腸症候群の治療でサラゾスルファピリジン薬物療法よりも効果があると結論している。鍼灸はクローン病も含む過敏性腸症候群に効果的である可能性があるが、研究は薬物療法と一緒のものしか提示されていない。
2013年
「炎症性腸疾患の鍼灸:ランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタ・アナリシス」
Acupuncture and moxibustion for inflammatory bowel diseases: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
Ji J et al.Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:158352. doi: 10.1155/2013/158352. Epub 2013 Sep 24.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3800563/
クローン病は中医学の腸癰(ちょうよう)、腸辟(ちょうへき)の範疇に入ると思います。弁証論治はこの機会に中国の文献を調べましたが、納得できなかったです。1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院のブリル・バーナード・クローンが発見しました。
【クローン病の動物実験】
2012年 上海漢方医学センター
「灸はクローン病モデルラットの腸上皮におけるアポトーシスと腫瘍壊死因子・アルファ腫瘍壊死因子レセプター1を阻害する」
Moxibustion inhibits apoptosis and tumor necrosis factor-alpha/tumor necrosis factor receptor 1 in the colonic epithelium of Crohn’s disease model rats.
Bao CH
Dig Dis Sci. 2012 Sep;57(9):2286-95.
doi: 10.1007/s10620-012-2161-0. Epub 2012 Apr 25.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22531889
2013年上海中医薬大学
「灸はクローン病ラットのERKシグナリング経路と腸の線維化を阻害する」
Moxibustion Inhibits the ERK Signaling Pathway and Intestinal Fibrosis in Rats with Crohn’s Disease.
Wang
Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:198282. doi: 10.1155/2013/198282. Epub 2013 Jul 22.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23970928
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3736408/
※気海と天枢の灸は細胞外シグナル調整キナーゼ経路を調整し、腸上皮の線維化を阻害する。
2014年上海中医学研究所
「ランダム化比較試験:灸と鍼のクローン病治療」
Randomized controlled trial: moxibustion and acupuncture for the treatment of Crohn’s disease.
Bao CH,
World J Gastroenterol. 2014 Aug 21;20(31):11000-11. doi: 10.3748/wjg.v20.i31.11000.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25152604
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4138481/
※クローン病患者に対して、太衝(LR3)、公孫(SP4)、足三里(ST36)、上巨虚(ST37)、中かん(CV12)、天枢(ST25)、気海(CV6)を使用した。真鍼では有意にCDAI(クローン病病活動インデックス)が改善した。
2015年上海中医学研究所
「灸と鍼は腸粘膜におけるTh17とトレグ細胞のバランスを調整し、クローン病を改善させる」
Moxibustion and Acupuncture Ameliorate Crohn’s Disease by Regulating the Balance between Th17 and Treg Cells in the Intestinal Mucosa.
Zhao C
Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:938054. doi: 10.1155/2015/938054. Epub 2015 Aug 4.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26347488
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4539447/
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